The Beatlesの作品、Blackbird は公民権運動に霊感を受けて作曲したとポール自身が発言しています。しかし、歌詞を読み込んでみると、どうもそこにイエスの受難のイメージが影を落としているように僕は思うのです。

 

というのは、美術史学者の 益田朋幸の研究によれば、英国ではクロツグミ(blackbird)は受難の象徴になっていて、ピーターラビットの物語にもイエスの受難を暗喩するものとして登場するらしいんですね。

Blackbirdの歌詞の内容も「ゲツセマネの祈り」の情景を思わせますし、自由(救済)を求めた公民権運動には犠牲(受難)も伴ったわけですから、Blackbird の歌詞は地をイエスの受難の物語に、図を公民権運動にとった二重構造になっていると解釈することもできるのではないでしょうか。

 

もちろん、この仮説は現段階では僕の憶測にすぎないものですが、ポールがシェイクスピアなど英国文学に多く触れてきていることは有名ですし、あえて”Blackbird “を登場させていることは単なる偶然とも言い切れないように思うのです。

いつまでも「ポールが言ってるから」の段階で足踏みをせず、文化や社会のコンテクストとの結びつきをもって語られる、ビートルズ論が登場することを願ってやみません。