ワクワクする反進行—Hello Goodbyeの分析(2)— | 音楽研究者 藤野純也のブログ:てるむじか

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前回、Hello Goodbyeの期待を持たせる始まりの秘密は、サブドミナントにはじまり、完全終止を最後まで避ける構造にあることを明かしました。すでにお話したように、当該楽曲はたった2つの部分からなる極めてシンプルな構成であるにもかかわらず、気がついたら曲の世界に引き込まれているという不思議な魅力を持っています。今回はなぜ「気がつくと曲の世界に引き込まれる」のかということを解説しましょう。

完全終始の直後、曲は次の譜例のように展開します。実はこのセクションにはいるやいなや、聴き手は曲の世界にとりこまれてしまっています。その秘密はベースラインとHello Goodbye…と繰り返すコーラスの関係にあります。

完全終止の後、ベースラインはリズミックにビートを刻みながら4度順次下降します。これに対しコーラスは「4度上行」のライン、つまり反行形を音価を縮小して4回繰り返します。つまり

(1)リズムを刻みながら順次下降するベースの躍動感
(2)ベースとコーラスのポリフォニー的関係

がワクワクを生み出しているのです。そこに、ポールの歌がシンコペーションのリズムを伴う上行の分散和音のラインでからむことで、4度下行のベースラインと4度上行のコーラスがおりなす構造が強調されるのです。