“The End”の終結部における魂の浄化と救済 | 音楽研究者 藤野純也のブログ:てるむじか

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アビーロードのBの締めくくりとなるThe Endのギターバトルの後、”and in the end…”の言葉と共に現れる最後のセクション。特に”you make”から最終コードに至るまでの流れを聴く度に、魂が浄化され救済される気持ちになります。ビートルズの全楽曲の中で最も美しい場面の一つと言って良いでしょう。なぜこの箇所はここまで美しいのか。コード進行の分析に基づいて考えます。

・強引だけど鮮やかな転調

中間部のギターバトルから”And in the end”と歌い出すところまでの調性はAです。それが短い歌詞の最後”you make”では調性はCに転調しています。

相当強引で無茶な転調ですが、G/Aのコードが上手く接着剤の役割を果たしてくれています。ポイントは次の四点

  1. 上三声が並行移動
  2. A音のペダルポイント
  3. G/Aは経過和音として解釈
  4. G/Aに後続するコード群は経過和音句として解釈

まず最初の3つのコードA  G/A  F/A を分析します。”And in the end..”と歌い出す箇所の調はまだギターバトルを引き継いだAです。

G/Aは A7sus4(9)と同等の和音ですが、ここは単純に次のF/Aに向かう経過和音(パッシング・コード)的に捉えるべきでしょう。F/Aは後続調のKey of Cのダイアトニックコードです。

さて、実はF/A以降に登場するコードはすべてKey of Cのダイアトニックコードなので、F/Aが登場した時点で転調は完了しているのですが、あまりそんな感じはしません。まだふわふわと地に足が付いていない感じがします。その理由は2つあります。

第一の理由として、経過和音G/Aの向かう先がもともとのKey of Aではなく他調 Key of Cであるということ。通常経過和音の向う先は元々の調のダイアトニックコードです。

第二の理由はG/Aの向かう先が F/Aという第一展開形の和音であるということ。展開形は基本形よりも地に足の付かないサウンドがします。

したがって平行移動が続くAm/Eまでのコードはすべてまとめて「経過和音句」と僕は解釈しました。

はじめて基本形の和音が登場するのが Dmであり、Dm G Cという調性を確定させるカデンツが現れます。上三声が順次下行するとともに、最初の3つの和音でバスを保持することでF/Aのコードを導き、そこからKey of Cのダイアトニックコードの展開系の並行移動を経過和音句として、Key of Cのカデンツに導くという構造になっています。良く出来ていますね。

・ペダルポイント。解決しないドッペル、準固有和音

調が確定する”you make”以降がアビーロードを通してもっとも美しく、ビートルズ全作品を通してもっとも美しい箇所です。

Cで一端解決するのですが、このあとCが再び鳴り響き曲が閉じられるまでに登場するコードはすべてノンダイアトニックコードです。このことが人知を越えた何かにより魂が救済される感じを醸し出しているんですね。また、主音Cがバスでペダルポイントとして保持されるので、浮遊感はなく堂々としていることも重要な点です。

さて、コードを一つづつみていきましょう。Cの次に登場する Dは ドッペルドミナントです。普通はGに向かうべきコードですが、Ebに進みます。これは準固有和音へと向かう偽終止と解釈することができます。(つまりKey Of Gmからの借用ですね)

EbはKey of Gの準固有和音bVIであると同時にKey of Cの準固有和音bIIIでもあります。つまりKey of G+と+Key of Cの共通和音=ピボットコードになっているんですね。

ピボットコードを介し和声はKey of CのIVに進行し、曲は変格終始の神聖な響きで閉じられます。