FTC LIBRARY
『各国の審査基準とその解説』
第1項:スピード
スピードは速いばかりが能ではない。
嗅覚にマッチしたスピードでなければならない。
過去において、スピードが一辺倒の如き時代があった事は事実である。この原因は、終戦直後に現存していた犬は、これまでのトライアルで要求されていたように、全く実猟本位であり、且つゲームの生息数も豊富であったが為に、必ずしもスピードは要求されていなかった。しかも長期に亘る輸入犬による改良も行われず、イン・ブリードによる劣性の結果、益々スピードを失い、決断力に欠ける犬が大勢を占めざるを得なかった。
このような背景の中で、我が国の長猟犬の改良の為には、先ずスピードを持たせるべきであり、果断なバードワークを期待しなければならない状況にあったのである。従って、アメリカのトライアル・ドッグの輸入、交配により、スピードを求めようとした。同時に、トライアルとは如何にあるべきかについても、単に実猟の延長ではなく、魅力のある犬のグラウンド・ワークが要求されるようになった。
不幸にして、我が国の鳥猟犬がスピードを持ち始めるのと時を同じくして、経済的発展の影響の為、良きフィールドは他の目的の為に開発され、ゲームの著しい減少を来たした。その為、多くのトライアルはゲームのいないままトライアルを行うことが多くなり、バード・ワークを観る機会は益々失われ、単にスピードを争う事がトライアルであるが如き誤解を生じたのである。
従って、トライアルに勝つ為には、スピードさえあれば良いように思われ、ただ速く、良いスタイルで走る犬がトライアル・ドッグであるという時代があったのである。これは日本だけの経験ではない。アメリカにおいても、スピードが重視された時代、スタイルのみがクラスの表現であると考えられた時代があったのである。
スピード偏重の時代は過ぎ去りつつあるが、これは何もスピードが無くても良いという事ではない。パピー(幼犬)、ダービー(若犬)、ガンドッグ(成犬)においては、生来のスピードは発揮される事が必要であり、単にシューティングドッグ・ステークにおいても、グラウンド・ワークの基礎的要素としてのスピードは必要である。しかし、このスピードは、訓練と経験により知的にコントロールされたのものである事が必要である。適切なスピードは嗅覚力とマッチし、バードワークを可能ならしめるし、知的にコントロールされたスピードは、ペースの変化を生み、魅力あるスタイルを示すであろう。この結果、スピーディーな捜索を完成させる事が出来る。
スピードの基礎となるものは体構であり、良き体構がスムーズな、伸びやかな歩態を生み出す。適度に直立した前肢及び後肢は、良き歩態を作る事は出来ない。また、貧弱な筋肉も同様であり、これらは、スピードと関連あるばかりではなく、スタミナに大きな影響がある。
トライアルでは体構の如何は優劣の直接の原因ではないし、静的な体構から来る印象をジャッジングに持ち込む事は有得ないが、適切なスピード、クラスを感じさせるスピード、魅力的なスタイルの根幹に体構があることは心得ておく必要があるだろう。
パピー(幼犬)、ダービー(若犬)、ガンドッグ(成犬)の各ステークに於ける物理的なスピードには、当然差があり、同一フィールドを想定すれば、ダービー時代が最も速いであろう。訓練と経験によって完成されたガンドッグのスピードは、制限を受けてコントロールされ、犬自身の知性が汲み取れるものであるべきである。
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『各国の審査基準とその解説』
第3章 猟技の解説より抜粋