観誦すれば無明を除く。
と続きます。
これはお大師さまの著作のひとつとされる
「般若心経秘鍵」の一節です。
さらっとかいてありますが、
真言をお唱えするだけでなく観想する必要があるわけですね。
ここけっこう大事なところです。
確かこれは光明真言だったはず。（小さくてちょっと見えにくいですが）
祥鈴庵圓珠です。
うちの宗派は「真言」宗というくらいですから、
真言を大事にしています。
真言自体は、現在日本にある仏教宗派はほぼ使いますが、
真宗だけは別かな？
あまりにも功徳があり、音自体に意味があるため、
サンスクリット語のまま音写してお唱えするもので、
短いものを真言、長めのものを陀羅尼と呼ぶことが多いですね。
なので、内容を分析して訳すことも可能です。
般若心経の最後の部分を
「行けるものよ、行けるものよ、
全く行けるものよ、全く彼岸へ行けるものよ
さとりよ、幸あれ」
と書いてもいいわけですが、そうはしないのが基本。
たいていの真言は
「おん + お名前 +そわか」という構造。
おん「まいたれいや」そわか→「マイトレーヤ」＝弥勒菩薩
おん「べいしらまんだや」そわか→「ヴァイシュラヴァナ」＝毘沙門天
といった感じですね。
なので、もしご真言がわからなくても、
「おん不空羂索観音そわか」
などとお唱えすれば一応間違ってないことになります。
で、観誦ですが。
仏さまを表す方法には３つの種類があります。
種字
三摩耶形
尊形
の３つ。
種字はその仏さまの本質を示す梵字。
三摩耶形はその仏さまを表すシンボル。
尊形は仏像や画像で示すような仏さまのお姿です。
観想する場合はこの３つのうちのどれか、あるいは全てを観想します。
例えば先ほど挙げた弥勒菩薩の場合。
種字は「ユ」
三摩耶形は「蓮華上の塔」「水瓶」
尊形は有名な広隆寺の像のような半跏思惟のお姿。
これを観想しながら、
「おん まいたれいや そわか」
という弥勒菩薩のご真言をお唱えします。
密教の僧侶はこの訓練をすごく行うのですが、
即座にイメージがわかない場合は
仏像や画像を見ながら真言をお唱えすればいいと思います。
真言は自分の感覚では
何かのSF小説にでてきた高速言語とか
圧縮されたファイルを送受信しているイメージですね。
「真言は不思議なり 観誦すれば無明を除く
一字に千理を含み 即身に法如を証す」
とある通り、ほんの何語かで構成されているにも関わらず
その中には深遠な内容が畳み込まれています。
仏さまのお姿を自分の心の中に描きながら、
仏さまのご真言をお唱えすることで、
その仏さまの本質が自分の中に染み込んできます。
もちろんこれは一種の瞑想です。
あるものに集中するシャマタという瞑想の対象として
真言と仏さまのお姿を使っている状態です。
対象としては最善のもののうちの一つですね。
ユネスコ憲章の中に
「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、
人の心の中に平和のとりでを築かねばならない」
という一節があります。
真言の観誦は多分、そのように人の心の中に何か良いものを
築きあげることができるでしょう。
仏さまと共に在ることのできる場所を、自分の心の中に作る。
そのために使ってください。
仏さまのお名前を呼び、そのこだまを自分の中に響かせる。
そのように使ってください。
マジカルな呪文というよりはむしろ、
どこかとても素晴らしいところに繋がる扉を開くパスワードのようなもの。
そしてその素晴らしいところは、他でもないご自身の中に
もうすでに在る場所なのです。
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