これはあっちこっちで言ってることなんですが、私は本当にのびのびと育てられた子供でした。

 

 おっと、その前に自己紹介ですね。

 はじめまして、てごほ~むに参加させていただいている、島根大学の医学科4年・葛西薫美(かさいくるみ)と申します。

 これまで様々な方が素敵なブログを執筆なさっていて、その中で唐突に自分が全体の質を低下させることが非常に申し訳なくてならないのですが、自分に任された義務は果たします。

 というわけで、今回はタイトルどおりの内容です。あ、きわどいお話ではないのでご安心を。ちゃんと全年齢対象ですよ。

 

 

1.私が何かに挑戦するときは

 私の両親は、私が何かに挑戦するときには応援してくれる人たちでした。幼少期の頃からです。

 とはいえ、別に私が「やりたい!」って言ったときにすぐさまやらせてくれる、というわけではありません。それは決して嫌がらせとかではなく、ちっちゃい子供が言う「やりたい」は大体がその場の勢いによるもので、一晩経つとほとんど忘れてるもんだってことを理解しているからです。

 その代わり、数日経っても私が「やりたい!」と主張した場合には、その主張の内容がどのようなものであれ真剣に話を聞き、そしてやらせてくれる両親でした。のびのびと育てられたというのはそういう意味です。

 自分の記憶をたどる限り、躾以外のことで両親から何かを強制されたことは特になかったように思います。そういう訳ですから、私は自分の選択は自分自身で行うこと(まあ、当たり前っちゃ当たり前なんですが)、そしてその選択には責任が伴うものなのだということを、自然と覚えていったのでした。

 そんな私が、常日頃何かを選択しようとした際、どうにも決断しかねる時に引っ張り出す一つの基準があります。

 すなわち、

 

  「これを行動に移したことで自分が死ぬ可能性があるかどうか」

 

 です。

 いや極端すぎるだろ、と思われることでしょうが、難しく考えるのが面倒だった私は、『そんなに悩むくらいなら、生物にとって最低限重要なポイントだけおさえて後は「えいやっ」と行動してしまえ』と腹をくくったのでした。

 そんなだから、医学部目指して五浪、なんて真似ができたのかもしれませんね。まあ死にゃあしないさ、と。

 そうして浪人を決めて、予備校に通っていた頃……。今回のタイトルに記した買い物をしたのです。

 

2.予備校に向かう途中にて

 電車で予備校に通っていた頃、途中で別路線への乗り換えがありました。ほぼ繋がっている隣の駅、とはいえ別の駅に移らなくてはならないので、少し歩きます。

 その道の、途中で……。

 

 赤い帽子をかぶった一人の男性が、なんか掲げているわけです。

 芸能人の顔写真の上にアルファベットのタイトルが入った、あれは、雑誌……?

 

 これまで何度も通っている道のはずなのに、一向に気づきませんでした。その日が初めての販売だったのかもしれないし、単にそれまでの私がぼへっとしてただけかもしれません。

 雑誌……と言っても、一般的に本屋に並んでいるものより分厚くはありません。割と紙質も薄いようで、なおさら雑誌の薄さを際立たせていました。

 手に掲げているものだけでなく、他にも何冊かのバックナンバーが用意されていました。値段は三百円。安いです。

 その男性は決して若くはなく、まさに『おじさん』といったような方でしたが、全く声は上げず、どこか心もとなさそうな表情で、ただ静かに雑誌を掲げていました。

 とっても人の良さそうな顔をしていて、特に危険はなさそう―なんですが、持っている雑誌が自分にとって得体のしれないものであることに変わりはありません。

 ちょっと気になるけど、予備校に行く途中だしな……。そんな言い訳を自分にしながら、結局そのまま通り過ぎてしまいました。

 予備校から帰宅する頃には、その男性の姿はありませんでした。まあ時間も遅いしな、と思いながらその道を過ぎ、ぼんやりと考え事をしながら電車に乗った時、私はふと以前見たテレビ番組を思い出したのです。

 

 ホームレスとなった人々を支援するために発行され、ホームレスの人々によって販売されることで、その方々の収入源となる雑誌があるのだ―と。

 

3.そして私は雑誌を買った

 すぐに決心がついた訳ではありませんでした。翌日も、私は内心おおいに悩みながら、やっぱりその場を通過してしまったので。

 けれど、どうしてもあの雑誌が気になる。テレビで紹介していたあの雑誌かな。タイトル思い出せないんだよな。違ったらどうしよう。ちょっとやだな。

 私にしては珍しく、割と長時間―それこそ二晩をまたいで悩んだ末(もう一度書きますが、これは私にとって本当に珍しいことです)、三日目の朝に男性の姿を見た瞬間、私は決めたのでした。

 

 よし、買おう!おこづかいが三百円減ったところで、どうせ私は死なない!

 もし万が一なんか変な事件に巻き込まれそうになったら、警察の人か親に相談すればいいんだ!!

 

 私が「一冊ください」と言った時の、おじさんの嬉しそうな顔が今でも思い出されます。もうちょい早く決心すりゃよかったかな、と内心ちょっぴり思いました。

 渡された雑誌を受け取って、乗り換えの電車に乗って……。なんとか座席につくことに成功した私は、そっと雑誌の表紙をめくってみました。

 

 そうして、すぐさま深く後悔したわけです。

 なんでもっと早く買わなかったのか、と。

 

 雑誌は私が予想した通り、ホームレスの方々を支援するために発行されている「THE BIG ISSUE(ビッグイシュー)」でした。

 その内容は、芸能人やデザイナーなどといった様々な方面で活躍されている方々へのインタビュー記事や、世界で起きている問題や行われている取り組みなどを取材したルポ記事、普段なかなか知られていない分野を紹介する特集記事などと非常に盛りだくさんで、こんなに濃密で勉強になる雑誌を三百円で読んでいいのかしら、と逆に不安になってしまうほどの一冊でした。

 あまりの面白さにすっかり魅了されてしまった私は、その翌日にはバックナンバーも購入し、さらには最新号が発行されるたびに購入するリピーターとなりました。おかげでそのおじさんとはすっかり顔見知りです。

 予備校に通っている間に販売者の方は変わってしまったこともありましたが、それはつまり以前の方が雑誌を販売する必要がなくなったという意味であり、なんだか嬉しい気持ちになったものでした。

 残念なことに―いや、むしろ幸運なことなのかもしれませんが、島根に来てからは販売者の方をお見かけしておりません。

 けれど今度、出版元を応援するためにも、通信販売でビッグイシューを購入してみようかなと考えたりしております。なんかいつのまにか値上がりしてるし、通販は正直不慣れなのですが、これも新たな挑戦―と言っては過言でしょうか。

 

4.あなたが何かに挑戦するときは

 本当にささいなことではありますが、あの日「ビッグイシューを買う」という挑戦をして本当によかったと思っています。あの日ビッグイシューを手に取らなければ、その面白さを知ることもなく、記事を通して新たな世界を知ることもなかったかもしれません。

 大げさを承知で言ってしまえば、やはり勇気を出して挑戦するということは大切なのだな、と考えたりしました。

 

 だからこそ、私はてごに来る子どもたちには―いや、子供だけでなく大人の方にも、様々なことに挑戦してほしいと思っています。

 どんなささいなことでもいいんです。うまくいかなくたっていいんです。なんなら三日坊主になったって構わないんです。その難しさや持続することの大変さを知ることだって、その人の感性を豊かにすることに繋がると思うから。

『自分もやってみたことあるけど、難しくって全然できなかったなぁ』

 その経験があるだけで、身の回りにあるものの価値が実感できるようになると思うから。

 知ることができる世界の広さを知らずに終わってしまうだなんて、あまりにももったいないじゃないですか。

 

 それでも、やっぱり失敗することが怖いという子もいるでしょう。興味はあるけど、そもそもどうやって挑戦したらいいかわからないという子もいるかもしれません。

 そんな時には、ぜひ周りの大人に相談してください。ご両親でもいいし、学校の先生でもいいし、頼れると思う大人の人なら誰でもいい。

 もちろん、私達「てごほ~む」のメンバーにも!全力で味方になりましょうとも!

 だって、私達はそのためにいるんだから。

 

 長々とした文章になってしまいましたが、ここでいい加減筆を置こうかと思います。

 この稚拙な文が、何かに挑戦しようとするあなたの、ほんの少しの勇気となれますように。