5G のバブルともいえる盛り上がり

 最近、「もうすぐ5Gになって世界がガラっと変わるんですよね?」 というような声がついに私の周りの子供たちやそのご両親の間からも聞かれるようになってきました。個人的には5Gに対する世間の期待の高さに、若干の違和感を感じていたほうなのですが、300万回以上再生されているこんな動画を見つけ、その盛り上がりを少し体験することができました。

【経済】5Gで世界は変わる!インターネットが普及した時以上の変革が起きる〜前編〜

 

 

 ただ私自身は正直、5Gの世間の盛り上がりに関しては少なからず疑問を持っています。高速大容量、低遅延、同時多接続で、世界が変わる、というのは確かにそうなのかもしれませんが、それはこれまでも無線通信だけでなく、様々な面で絶えず改善されていることなので、これまで通り、徐々に世界は変わっていくかと思いますが、5Gのサービス開始で一気に世界が変わる、ということにはならないと思うからです。

高速大容量について

 まず、高速大容量の例として、「2時間の映画が3秒でダウンロード」、ということを聞きます。その容量は画質にもよりますが、大体4GB位の計算になるかと思います。ということは、約1.3GBを1秒でダウンロードできる速度ですね。本当なら恐ろしい早さですね~。この根拠は、5Gの理論値の10Gbps (bps = bit per second / 1byte = 8bit なので、1.25 GB/s ) がベースとなっていると思われます。但し、これはあくまでも理論値なので、実際には電波が届くまでの様々な要因や、回線の業者側のネットワークがボトルネックとなり、実行速度はもっと遅くなると思います。ちなみに現行の 4G の理論値も 1Gbps 程あるのですが、実行速度は20Mbps 程度(ドコモ)となっています。
 
 そして仮に5Gの理論通りの速度が出るとしても、例えば iPhone XS Max のストレージの書き込み速度が下記の記事によると大体200MB/s なので、3秒では600MB 位となります。通信部分は全く無視して4GBを書き込むには少なくとも大体20秒、それでも十分早いですが実際には、通信などのオーバーヘッドがかかるので、もっと遅くなると思います。iPhone 6S 位からストレージ速度も劇的には変わっていないようなので、ストレージの速度も現在の少なくとも10倍くらいの速度にならないと、ボトルネックとなってしまいます。
iPhone XS Maxのストレージ速度はXより遅い!?
https://ascii.jp/elem/000/001/749/1749889/
 ですので、そうした別の要因を考慮せずに無線部分だけで「2時間の映画が3秒」という言葉が独り歩きしている気がします。もっとも、Netflix や Hulu 、そして Youtube などの動画サービスはストリーミングに対応していますので、ストリーミングに必要な帯域については、Netflix によると、5MB/s とのこと。これなら4Gでも十分な速度ですので、現在でも全く問題ありません。フルHDレベルであれば今の4Gでも十分なのです。
Netflix: 推奨されるインターネット接続速度
 
 またVR 動画などもある、という話もありますが、今のところVRでも必要帯域は4Gの範囲内だと思います。5Gになれば、現在想像できないようなVR動画やゲームを皆普通に楽しむ時代が来る、という意見もありますが、私はテレビの 3D や 4K のように期待値は高かったものの結局ユーザーからのニーズがいまいち、、ということになるのではと感じます。

パケ代はどうなる?

 ここでむしろ問題なのは高いパケット料金でしょう。本当に2時間の映画が3秒なら、あっというまにパケットを使い切って低速通信に入ってしまうでしょう。5Gの恩恵を享受するには、既存の数GBのプランでは数秒で終わってしまうので意味がありません。そのため無制限か少なくとも数百GBのプランがなければなりませんが、4Gの料金でいきなり無制限になるとは思えません。
 
 現にAU は他社に先駆けて、既存の4G回線での無制限のサービスを始めましたが 5,980円~ と書いてあるのは、実は最初の6か月間、家族3人利用、固定回線もセットの場合であり、本当の基本料金は8,980円と高額で、更に大量のデータ通信を行わないことや、テザリングについては20Gまで、など、いくつもの条件が付きます。
 
 ただしこれは、致し方ないことですし他社も結局同じような形になると思います。基地局からスマホまでの無線部分のみ早くなっても、キャリア側のネットワークの増強を行わないとそこがボトルネックになりますし、それには多大な投資が必要となるからです。今、4Gで最上位のプランをお使いのヘビーユーザーの方であれば、ちょこっと高くなるくらいかもしれませんが。海外でも5G本来の速度を出すには追加料金が設定されていたりするようです。

低遅延について

 そして5Gの次のキーワード「低遅延」。4G の 10ms に比べ、5G では理論上 1ms となるようです。これも私もいまいちわからないのが、ここでよく遠隔医療の話が出ることです。遠隔でロボットで手術を行うと言いますが、手術ロボってなんだろう? ということで調べてみたらこんなロボットのようです。
 きっとこれをネットにつないで、遠隔で手術を行う、ということだと思います。手術を行うのであれば病院内の固定のネット回線を使うと思いますし、そもそも遠隔手術は遅延が何ms以下でないとならない、という定義のようなものは探しても見つかりませんでした。また、遅延については無線だけで発生するものではありません。ロボットのハード的な面や、アプリの設計なども大きく影響します。例えば、昔のパソコンを今のネットにつないでも最新のパソコンに比べて明らかにWebを表示する速度は遅いです。これはネット回線の速さだけでなく、パソコン内部のハードとソフトの処理速度が影響しているからです。そうした様々な要因とその方面での技術の切磋琢磨を考慮せずに、5G で 1ms になるから医療も変わる、というのはミスリードに感じます。
 
 また遠隔医療用救急車でエコー診断や、患者の状態を映しての診断なども言われますが、そもそもそれは 1ms という低遅延でなくてもよいと思えますし、速度に関しても、先ほどのNetflix の通り現行の4G回線でも鮮明なHD動画は十分なのです。
 
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 それでは、一旦本日はここまでとしまして、次は同時多接続についてと、一足先に5Gサービスが展開されているアメリカでの状況について、触れていきたいと思います。
 
 本日もお読みいただき、ありがとうございました!!
 
 
 hiderin