「天国旅行」少し怖いですが――。 | 本の話がメインのつもり

本の話がメインのつもり

気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

天国旅行/三浦 しをん


怖い:ホラーホラーホラー /5
切ない:かなしいねかなしいねかなしいね /5

三浦しをんさんの
「天国旅行」を詠みました。


『森の奥』
 樹海の中で首をつって死ぬつもりだったのだが、失敗してしまった。
 コンパスだけで樹海を突っ切ろうとしていた青木という男に
 死ぬためにぴったりの場所へ連れて行ってもらうことにした。

『遺言』
 駆落ちをするほど愛し合っていた「きみ」と「わたし」。しかしきみは
 「やっぱりあのとき死んでおけばよかったんですよ」とばかり口にする。
 そんなきみへわたしは遺言を綴る。

『初盆の客』
 学生が変った話を求めてやってきたので、私は体験談を語ることにした。
 祖母の初盆の日にやってきた変わった客の話である。その男は私のいとこだと
 名乗った。死んだ祖母の前の夫との間に子どもがいて、その息子だというのだ。

『君は夜』
 子どもの頃から不思議な夢を見る。それは自分を「お吉」と呼ぶ小坪という
 男と長屋で暮らす夢だった。しかし母親に夢の話をすると「変な子」と嫌な顔を
 されたので、秘密にしておいた。

『炎』
 バス通学で気になってずっと見つめていた木立先輩が焼身自殺をした。
 木立先輩とつきあっていた初音がクラスでもかなり地味な部類になる
 私に親しげに話しかけてきて……。 

『星くずドライブ』
 香那が死んでしまったことに僕はしばらく気付かなかった。バイトを終えた
 彼女がやってきたのは日付が変わろうとする時刻で、少し様子がおかしかった。
 食事もせず、シャワーも浴びず、気付いたら眠っていた。 

『SINK』
 悦也は特別な境遇を憐れむように世話を焼いてくる悠助に
 うんざりしていた。金属造形の仕事を発注してくれるのはいいが、
 押し付けがましく女性を紹介してきたりもする。

 


すべて「心中」をテーマにした
短編集でした。

どの短編も暗くて怖いのですが、
その中に何となくキラリと希望も
見えるような、そんな作品でした。

三浦氏の作品の雰囲気の幅には
毎度驚かされますが、
今回もあまりみない薄暗い雰囲気が
印象的でした。

本当に引き出しが多いですね。

いろいろな角度から
「心中」に迫っています。
一見、心中には関係なさそうな話も
「心中」がテーマであると思い出すと
違ったものが見えてきたりして……。

決して明るい気分で読めませんが、
面白い作品でした。