~前編に引き続き、後編です~


⚫︎第3点目  ~対象者は女性だけではない~


そして、これにも驚愕した。

その「無実の人たち」は、すべて女性だと思っていたのだが、なんと!男性もいたのだというではないか。

男性は、主にお年寄りが多く、中にはまだ幼い少年もいたらしい。


しかし、仮にこれが事実だとすると「魔女」という言葉のままでは誤謬がある。

恐らく、その昔にこのような説はなかっただろうから、誤訳したというわけでもないだろうが。


ともかく、この魔女狩り(今は暫定的に「魔女」で統一しますね)に男性もいたとは驚きを禁じ得ない。

しかも、悲劇的にも魔女狩りのターゲットになってしまった人たちの殆どが、主に未亡人、お年寄り、少年少女や身体の不自由な人、貧困に喘ぎお金や食べ物を無心するような人たちであったという。

言わば、社会的弱者たちである。

なぜ、そういった社会的弱者の人たちばかりに矛先が向いてしまったのか。

これも諸説あるようだが、一説によると…


「仕返しされにくいだろう」


という腹があったらしい。

社会的に立場の弱い人たちは、権力はもとより、身寄りも無かったりするからなのだ。


まったく二の句が継げないとは、正にこのことである。

聞いているだけでも息が詰まる。

もし、これが真実だったならば、到底、理解できない。


それと、魔女狩り関連資料の中で、よく、有罪と宣告された人たち、つまり魔女たちから財産を没収し、その金銭をその魔女本人の裁判費用や処刑費用に充てたとか、金銭欲しさに魔女狩りをしていた者たちがいたというようなものを散見するが、これには些かの疑問が残る。

というより、これらの件に関しては、まだ議論の余地が残されているように思う。

なぜなら、被告にされてしまった人の多くは貧困層であるため、それほどの潤沢な財産があったとはとても考えにくいからである。

お金を無心したり、物乞いをしていたような人たちから、どうやって金品を奪えよう。

しかし、異端審問の時代には、王や教会の命令により、富裕層から金品をせしめるために「異端者狩り」 として、「魔女」をでっち上げ、拷問による財産没収が行われていたという話も確かにあるようなので、一概に財産没収が「なかった」とは言えないが。


いずれにしろ、これだけの時を経た今、もはやその事実など確かめようもないことだけは確かな事実とも言える。


⚫︎第4点目 ~呪術や妖術とは無関係~


そして、肝心の「魔女の定義」自体も極めて曖昧である。

またそれらの罪の根拠も「希薄」というより「無根拠」そのものと言っていい。

完全な「冤罪」なのだ。

その「根拠なき根拠」の内容もかなり酷い。

魔女の呪術や妖術がどうのというものは皆無に等しい。

人によっては、自分の夫を寝取られた腹いせだとか、「あいつ、気に入らない」といったような、ただの恨みや妬みなどとしか思えないものを根拠として、なんだかんだと「ナンクセ」を付けては「魔女」をでっち上げて訴えるというものばかりだった。

酷いものでは、「お前は、猫を飼っているから魔女に違いない‼︎」だとか、台所の窓から夕飯の煙が外に漏れただけで、「魔女が毒薬を作っている‼︎」など、もう、ただただ趣味の悪い冗談としか思えないような噴飯ものの訴えまであったという。

しかし、訴えられた方はとてもじゃないが冗談ではすまされない。


狙われたが最後。


一旦、司法の手に委ねられた被告は、人間が考え得るすべて、いや、それ以上に残虐で、残忍な、そして、文字通り「死ぬより怖い」執拗な拷問を強いられ、何が何でも自白を強要され「処刑」というゴール一点に向かって突っ走らされるのだ。


誰もこれを「自白」とは呼ばない。


一体、どっちが「魔物」なのか。


このように当時の魔女裁判は、どこからどう見ても刑の妥当性は皆無だった。


~~~~


⚫︎最後に


これらすべてが仮に真実だったとして、果たして、これが400年ほど前に遠い国で起こった「悲劇のお話」ということだけで終わらせてもいいのだろうか。


調べ始めた当初は、あまり感じていなかったが、少しづつ様々なことを知るにつれて、現代の日本の社会病理と符合する点が極めて多いことに気付いた。

極端な二分法の論理がもたらした悲劇という意味においては、現代の「いじめ」や「ホームレス狩り」、あるいは、「執拗なバッシング」と構図があまりに酷似してはいないだろうか。 


「魔女狩り」が司法の名の下に平然と跋扈していた頃のヨーロッパでは、印刷技術が発達し始め、新しいメディアが情報と共にその危険極まりない思想に拍車をかけた。

現代で言えばインターネットがそれに相当するだろう。


そして、昨今は云う。


「疑わしきは完膚なきまでに叩け‼︎」 


「グレーで構わない、吊るし上げろ‼︎」


「弱い者は引きずり下ろせ‼︎」


「息の根を止めろ‼︎」


司法がやっと機能しだした現代。

今度は、司法に代わり民意が声を上げて断罪する。 

たとえ、それが法に何ら抵触していなくとも、社会的制裁として正義の鉄槌を‼︎と言わんばかりに寄ってたかって糾弾し、処断を下す。

一旦、「黒」と見なされたら最後。

すべてを失うまで、叩く!叩く!叩く‼︎

いや、たとえ「黒」でなくとも同様に叩く‼︎

このままいけば、いずれ、それによって最悪の事態も起こり得ることは想像に難くない。


魔女狩り時代のヨーロッパと現代の日本。

司法と民衆の構図が、ただ逆転しただけではないのか。

昨今の「袋叩き」には目を覆いたくなる。

その構図が、極めて「魔女狩り」と酷似していることは論を俟たない。

今回書いた「説」の真偽のほどは別として、少なくとも、これらは現代社会の問題と我々が向き合うための一助になっていることだけは確かだ。 


皆さんは、どうお考えだろうか。



立川俊之


【参考文献】


⚫︎魔女狩り(ヨーロッパ史入門)

https://www.amazon.co.jp/dp/4000270915/ref=pe_2107282_266464282_TE_3p_dp_1


⚫︎魔女狩り(Wikipedia )

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%94%E5%A5%B3%E7%8B%A9%E3%82%8A


⚫︎魔女の秘密展(Webサイト)

http://ynotreport.blogspot.jp/2016/02/blog-post_22.html?m=1




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