負(マイナス)の世代間連鎖(遺伝)を考える | 家族カウンセリングはひとりで受けられる世代間連鎖を断ち切るカウンセリングです

負(マイナス)の世代間連鎖(遺伝)を考える

 世代間連鎖という言葉を聞いたことがあるだろうか?

 心理学の視点から説明すると、家族療法の基本的な考え方で、まず、親子、夫婦、兄弟など3世代以上の人間関係について考えることである。



家族とは長い期間、年月を積み上げて出来上がったものであり、その共通点は、ものの見方、考え方が非常に似ていて、価値観や倫理観は長きにわたり変化していない。このことから長年にわたって、築きあげた家系の大きな流れを変えることは、とても難しいとされている。



それは倫理的、道徳的に間違えた習慣であっても、その間違いに気づかないことから、同じ間違えを無意識に何世代にもわたり繰り返してしまうことになる。(悪循環)




 わかりやすく説明すると、人間は『DNA(遺伝)からくる血の流れ』と、子どもは両親をモデルとして学習することになるので『家庭環境』のふたつから作られていると考えられる。


プラスの遺伝的要素(連鎖)は、優秀な頭脳や、芸術的才能、スポーツ能力、道徳心の高さやボランティア精神、優しさ、思いやりなど多々あり全く問題はなく、これらのプラスの連鎖は継承してゆけば素晴らしいことなのだが、マイナス(負)の連鎖の場合、負の連鎖であることに気づいて、その連鎖を断つことを考えないと、その家系は何世代にもわたり、問題を抱えてゆくことになり、幸せを感じることが難しくなる。



マイナスの世代間連鎖の代表格は、虐待である。



 親から幼少期に身体的暴力、性暴力、言葉の暴力を受けて育った人は、データ上、3割から5割の確率で大人になり、結婚後自分の子どもに対して虐待に及ぶといわれている。あれほど、辛くて苦しい思いをした虐待を、自分が親になった時点で、自分の子どもに対して、無意識に繰り返してしまうのだ。やはり、これらの人たちは、親から、褒められる、認められる、愛情をかけられるなど、温かさにふれたこともなく、自分の記憶としては、しつけと称しての暴力だけしかないのである。



これらの幼少期に虐待を受けた方と向き合った時に、初めに私が伝えることは
「今の状況は、あなたは被害者です。あなたが結婚後、自分の子どもに愛情を注いで、大切に育ててゆけば負(マイナス)の連鎖は断つことが出来て、愛情を注がれて育った子どもも、大人になり家庭を築いた時には、子どもを大切にすると確信出来ます。(負の世代間連鎖を断つ)
反対に、もし、あなたが無意識に子どもにしつけと称して暴力をふるえば、その子どもも自分の子どもに虐待をすることとなり、あなたは被害者から加害者になります。そして、あなたの親子は何世代にもわたり、虐待という負(マイナス)の世代間連鎖をつづけてゆくこととなっていくでしょう」
ということである。




他にも負(マイナス)の連鎖として顕著な例は、アルコール依存症がある。

 アルコール依存症の父を持つ女性が結婚した場合、相手もアルコール依存症になる率が高く、また無意識にそういう男性を選んでしまうことも多い。自分はこんな家庭を作るまいと無意識のうちに夫の飲酒に過敏になり、少しのアルコールをも許せなくなる。このことがかえって夫のアルコールへの思いを強くして依存症になるケースも多い。



また、このような男性を選び、なおかつ、自分がこの人を支えねばとの思いが強い女性も多く、共依存と呼ばれていて、このことも問題視されている。



 最近、増加しているものとしては、夫婦間暴力であり、何世代にもわたり、夫から妻への暴力が繰り返されているケースがある。
これらを見て育った男性は妻に暴力的になり、女性の場合は、このような状況を見て育ったことから暴力的な男性を受け入れてしまう傾向がある。夫からたびたび暴力が繰り返されることから一度は家を出て逃げるのだが、本来は、優しい人だから、自分が支えてあげなくてはと考え直して、夫の元に戻ってしまい、再度、暴力行為が繰り返されることとなる。このことも共依存と呼ばれ、負の世代間連鎖の中でも断つことがとても難しい連鎖といわれている。



 依存症として、他の例をあげると、ギャンブル依存からくる「多額の借金を重ねる」遺伝的要素の強い負(マイナス)の世代間連鎖がある。問題はギャンブルよりも多額の借金であり、必ず数百万円の借金をつくり、それを親兄弟が尻ぬぐいをするという繰り返しだ。何度、親兄弟が借金を返済しても、さらにギャンブルによる借金を重ねることから、やがて親兄弟も離れてゆく。
 



ギャンブル依存による借金は、基本的には、周りが助けることではなく、本人が気づいて立ち直るまで、手を差し伸べてはいけないのだ。そうしないと負の連鎖を断ちきることはできない。

 祖父母や親の世代に何か問題点があって、子どもは、親や祖父母のようになりたくないと思いながらも、親がしたこと、親にされたことを無意識に繰り返すことを負の世代間連鎖と呼んでいる。




しかし、この間違いに気づき、前向きに、肯定的に人生に向き合うことで、負の世代間連鎖を断つことは十分可能であると言える。それが、家族カウンセリング、家族療法だ。