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倒れないイネ No.2

田植百 TAUE HUNDRED-風に揺れる稲堆肥特集 第三弾 その2
堆肥のことがよ~くわかっちゃう堆肥特集、久々の第三弾、二回目です。

今日も関東の一部の地域では、かなり風が強かったですね。雨の影響で被害が出ている地域の農業生産者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。

さて、倒れてしまうと困ったことになるイネくん。では、どうしたらいいのかということで、昨日はイネ自体を強くたくましいものにするのがひとつの方法であることをお伝えしました。で、どうやったらイネが強くたくましく、風にも負けないものになるのか。

本日のタイトルが「堆肥特集」であることからも、既にお分かりの通り、堆肥を使うことがその答えのひとつです。堆肥には、植物の根を活性化する働きがあります。なかでも、「田植百」の田んぼでも使っているステビア堆肥は特にその働きが強いのです。
田植えが終わってから、稲株を掘り起こしてみると、ステビアを使っていない稲に比べて倍近いボリュームがある根っこになっていたりします。
大樹の下、土の中には必ず広く大きく張りめぐらされた太い根っこがありますよね。大きな木になるほどにその重量は増し、それを支えるのもたいへんな力が必要になります。太く張り巡らされた根があってこそ、そのような大きな地上部が倒れずに直立していられるんですね。
そしてこれは、樹木だけのことではありません。根っこがしっかりしていることは、丈夫で倒れにくいイネの大事な要件のひとつなんですよ。

倒れないイネ?

田植百 TAUE HUNDRED-イネの根堆肥特集 第三弾
堆肥のことがよ~くわかっちゃう堆肥特集、久々の第三弾です。

前回の堆肥特集では、未熟堆肥の弊害について書きました。そして本来は、第三弾では、そんな未熟堆肥であっても使い方があるんですよ、ということをお伝えする予定でしたが、急遽予定を変更してお伝えします。
というのも、先日の風雨、そして今西日本を中心に起こっている雨による被害もあり、そんな自然災害に強いイネを作るにはどうしたらいいのか、改めて考えてみたいと思ったからです。
農業は、自然環境と不可分です。そして自然環境の中で育てる以上、作物は自然の影響を必ず受けることになります。その中でも深刻なものが自然災害です。自然災害は、いやおうなしにやってきます。しかも予測できない場合も多いし、たとえ予測できたとしてもどうしようもない場合がほとんどなのです。
では、どうしたらいいのか。ひとつは、今注目を集めている野菜工場のように自然環境の影響から全く隔離した施設で栽培すること。でも工場で作れる野菜は、まだまだ葉物など品目が限られています。次に考えられるのが、災害に強い品種。あまり背が高くならず、茎も太く、倒れにくい品種。これは従来からずっと品種改良によって行われてきています。そして三番目が、同じ品種の稲であっても、しっかりと根を張らせて倒れにくい丈夫なものに育てることです。

植物の根というのは以前にお伝えしたように、土中から栄養分を吸収するという、人間で言えば腸のような重要な役目を持っていると同時に、作物の体自体を支えるという、人間でいえば足みたいな役目も持っているのです。
そこで、この根をしっかりと強く丈夫なものに育てていけば、風などの自然の影響を受けずらくなります。

では、イネの根を強く丈夫に育てるにはどうしたらいいのか?ということが重要になってきます。明日は、そのあたりについてお伝えすることにします。

とうふく

田植百 TAUE HUNDRED-大風後雨で被害が出ている地域の皆様、特に農業生産者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。

昨夜は、関東の一部で大変強い風が吹きましたね。で、本日は風が稲に与える影響について。

大風が吹けば、稲は風の力で押し倒されようとする力を受けます。もちろん傾いた程度であれば稲は自力で元に戻ることも可能です。
しかし、完全に倒れてしまい、イネくんが自力で立ち直れなくなってしまうと、これはかなりアカン事態になるわけです。倒れれば、イネの葉や穂が水につかってしまいます。いかに水が大好きなイネくんでも、葉っぱや穂は、水の中で育つようになっていません。加えて地面にべったりと倒れていたのでは光合成をはじめとする植物としての活動が正常にできなくなってしまいます。

そこで、イネは風なんかで倒れずらいほうがよい、ということになります。外からの力で倒れずらくなるがめには、やはり根がしっかり強くなっていることがポイントです。

ただし、イネくんが倒れるのは風のような外からの力によってのみではありません。稲穂が実ってきたとき、その稲穂が重過ぎて、つまり自重で倒れてしまうということもあるのです。
もちろん稲穂が重くなるということは、それだけ稔りが多いということで、それだけみれば嬉しいことでもありますよね。でも、実りすぎてイネ自体がその重さに耐え切れずに倒れてしまうと、せっかく稔ったお米も収穫できなくなってしまうので、元もこもないということに。

このあたりは、収穫が近づいてきたらまた改めてお伝えしますね。

人間は、ウンカと同じ?

今日も関東は、暑いですね。でもがんばっていきましょう。

さて、本日は少しシリアスなお話。

昨日、イネをウンカが食べて(正確にはイネの汁を吸う)、そのウンカをアメンボとかが食べて、そのアメンボをカエルなどの肉食性小動物が食べて、さらにカエルを鳥が食べるという田んぼのイネからスタートする食物連鎖をご説明しました。図にすると下のようになります。

鳥類(サギなど):第四次消費者

小動物(カエルなど):第三次消費者

益虫(アメンボ、クモなど):第二次消費者

害虫(ウンカなど):第一次消費者

イネ(作物):消費されるもの

さて、この中でイネは人間が作っているんだから、人間が無関係でいられるはずがない、人間はこの図でいうとどこに入るのかということを考えたとき、いったいどの位置に人間はくるのでしょうか。

あくまでイネくんをスタートラインとすると、人間もウンカと同じ「第一次消費者」に位置づけられます。もちろん、考え方はいくつもあるでしょうが、こういう考え方もできるということです。
とすれば、イネくんにとっては人間もウンカも同じ?ってことになりはしないでしょうか。

いや、そんなことはない。人間はイネを大事に守って育てているんだから、害虫とは同じレベルでなんか考えるのはおかしい・・・そういう意見もあるでしょう。ただ、ここでお伝えしたいのは、生態系のこと。人間はたしかに労力をかけ、お金をかけてイネを育てています。人間が田植をしなければそもそもイネは稔りません。ただ、それはあくまでお米を食べるという人間の都合で行っていることです。もちろん食物の生産活動は必要ですが、その中でいろんなことを見落としたり、切り捨てたりしていないでしょうか、ということです。農薬をまけば、確かに効率よく虫や雑草を防げます。でも農薬は、いろんなものをまとめて殺してしまったりして、本来の生態系を壊してしまいます。そして人間の都合のみに合わせたやり方で作物が作られていきます。そんなやり方で栽培された作物が本当に良い作物と言えるのかな、という疑問はいずれにしても残るように思います。人間が食べる野菜やお米だって、自然の恵のひとつ。だったら、いろいろな「生命の輪」というようなものを大事にしていかねば、少なくともそれに対する気遣いを忘れてはいけない・・・そんな気がします。

人間は?

田植百 TAUE HUNDRED-トビ色ウンカ今日も関東は、暑いですね。でもがんばっていきましょう。

さて、もう少し虫たちのお話しを。
以前、ウンカは種類が多いと書きましたが、その代表が背白ウンカ。ちょうど今頃から飛来しますので夏ウンカともいいいます。それに対して「秋ウンカ」というのもいるんです。体の色がトビ色をしているので「トビ色ウンカ」ともいいますが、♪は~るばる来たぜニッポン♪ということで、やはり中国大陸からわたってきます。背白ウンカと同じ時期にやってくるのですが、増殖のピークが秋なので「秋ウンカ」なんです。

秋ウンカは、夏ウンカ(背白ウンカ)よりも被害が大きいといいます。イネくんの汁を吸って枯らしてしまうこともあります。

背白ウンカと近縁種なので、天敵も同じようにアメンボ、カエル、寄生虫などたくさんいます。
そういえば、ウンカを食べたり寄生したりする生き物って「ああ、今年も早くウンカが来てくれないかなぁ」なんて、毎年心待ちにしてるんでしょうね。「低気圧の活動が弱いからあんまりウンカが期待できないな」とか、「今年のウンカは、絶品だなあ」なんて・・・虫の世界は夏が近づくとウンカの話題でもちきりだったりして。

さてここでちょっとまとめ。ほんの小さな田んぼひとつにも、食べるものとたべらられるもの、またそれを食べるものという驚くほど広大な生態系の世界が広がっていて、そのほんの一旦を紹介しました。そして、そんな食物連鎖が起きる最初のスタートは、イネです。ウンカのようにイネを直接に食べる生き物を「植食者」とか「第一次消費者」なんていいます。
そして「第一次消費者」をつかまえて食べるクモやアメンボみたいのが「第二次消費者」。さらに「第二次消費者」を食べるカエルみたいなのが「第三次消費者」で、そのカエルなんかを食べるサギのような鳥類が「第四次消費者」ということになります。

さて、ではこのイネをめるぐ食物連鎖の中に人間を位置づけるとどのあたりにくるんでしょうか?答えは、明日・・・

ウンカのふんだりけったり

田植百 TAUE HUNDRED-トビ色鎌蜂今日も暑かったですね。雨で被害が出ている地域の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

さて、昨日に続いて背白ウンカくんのお話。背白ウンカくんは、アメンボをはじめとする生き物たちのエサになってくれるということでしね。これを食べる側から言うと「捕食」ということになります。

で、更なる背白ウンカくんの役目というか、末路というかは「寄生」なんです。もちろん背白ウンカくんが寄生されるほうなんですけどね。
背白ウンカは、糸片虫っていう小さくてニョロニョロした線虫(うわぁ・・・キモ)に体内に寄生されたりします。あと「トビ色鎌蜂」なんて虫は、ウンカに卵を産み付けて体内に寄生もするし、ウンカ自体を食べてしまったりもするという、背白ウンカくんにとってはふんだりけったりのたまらない虫だったりします。
左上が「トビ色鎌蜂」。え?これってハチじゃなくてアリじゃないのかって?そうですね、なんかアリっぽいですね。でもハチなんです。メスですけどね。

このハチに卵を産み付けられた背白ウンカは、いわばハチの卵を守り育てる揺りカゴみたいな役目を果たします。つまりウンカは、エサになって他の生き物のエサとなって栄養を与え、また、他の生き物が次の世代を生み出す揺りかごにもなってしまうわけです。

ウンカ

田植百 TAUE HUNDRED-背白ウンカ今日は、暑かったですね~ でも田んぼの虫たちは絶好調!ということで、昨日に続き田んぼの虫研究所を集中的にアップします。

昨日登場した姫アメンボくん、実は益虫なんです。益虫とは、作物に害を与える虫を駆除したりと、人間にとって役に立ってくれている虫くんなので益虫と呼ぶわけです。

で、姫アメンボくんは、何の役に立ってくれているかというと、それが「ウンカ」を食べてくれるんです。ところで「ウンカ」ってなんでしょか?聞きなれない名前・・・ですか?・・・ですね。

ウンカは、夏にかけて中国大陸のほうから飛来してくる虫なんです。ええ?小さな虫が遠く海を渡ってやってくるの?渡り鳥でもあるまいし――普通そう思いますよね。でも飛んでくるんです。低気圧に乗って。

ウンカは、稲作と切っても切れない虫。いろんな種類がいて、本日ご紹介するのは「背白ウンカ」あるいは「夏ウンカ」なんていわれるウンカくん。上の画像のように姿は、なんていうかセミの小さいやつって感じ。これ、めちゃくちゃ害を与える虫くんではありません。イネに卵を産み付けて、産み付けられたところが茶色に変色したりする程度。でもまとまって来ちゃったりすると稲株全体が黄色く枯れたようになったりします。

姫アメンボは、このウンカの成虫や幼虫をつかまえて食べてくれるんですね。ウンカは全然凶暴じゃないです。飛んできて卵を産んで、脱皮して・・・と、そんな感じ。作物を食べたり、病気を運んだり人を刺したりということはありません。でもそんなふうだから、逆に姫アメンボ以外にも背白ウンカをエサにしちゃう生き物は、クモやカエルやトンボなどけっこうたくんいます。ということは!背白ウンカがいなくなれば、それらの生き物のエサがなくなるってこと?・・・ですね。

それにウンカは、別の意味でも田んぼの生態系の中で、ある役割を果たしているんです。それは・・・また明日。

虫虫虫!

田植百 TAUE HUNDRED-姫アメンボまだ関東は梅雨明け前・・・というのにこの暑さ。こんなに暑いと人間はぐったりしちゃって仕事の能率も大幅ダウーーーーン!!なのですが、暑くなってくると生き生きと大活躍し始めちゃうものたちがいるんです。そう、それは虫。ムシなんですよ~
もちろん四季を問わず、ムシたちは活動していますが、やっぱりなんといっても夏場はその種類、量ともに圧倒的。さあ、いよいよ本格的な虫虫シーズン到来!というわけで、今日はその虫について大研究しちゃいま~す、の第一回。

ところで虫って聞いて何を思い浮かべますか?というか、もし今自分に虫がたかってるのを発見したらどうします?ピシッとたたきつぶす?それともキャっと叫んでふり払いますか?虫の苦手な人って多いですもんね。
でも、虫っていうだけでそんなにいみ嫌わないで下さい。ええ?!だって、カブトムシとかならいざしらず、田畑の虫は農作物をダメにしちゃう悪者なんじゃないの?
そうですね。病気対策とならんで害虫対策は、いつの時代も農業者の頭を悩ませる問題。特に「田植百」のように農薬なんて使いまっせ~ん!というような田畑にとっては、虫の害をいかに防ぐかがた~いへん重要な問題のひとつです。

でもでも、ほんとうは悪い虫なんていないんですよ・・・って言ったらどうしますか。常識的には作物に害を与えるのは害虫。あっ、でも益虫ってのもいますよね。益虫ってなに?かといえば、害虫を食べたりしてくれる虫のこと。ほほ~じゃあ虫の世界は、善と悪の二大勢力で成り立っているのかぁ・・・って、ちょっと待って下さい。実をいうと、例えば田んぼに住んでる虫たちの大多数は、そのどちらでもない「普通の虫」だったりするんです。

訳わからん・・・ですよね。大丈夫、少しずつ解説していきますから。とりあえず本日は、身近な益虫「アメンボ」くんのご紹介(写真上)。これはアメンボくんの中でも、姫アメンボといって、おそらく春先の田んぼにいったときに一番よくみかける虫の代表選手。まだイネくんが小さいので、広々開けている田んぼの水面をすいすい泳ぎまくっています。

では、この姫アメンボくんがなんで益虫なの?その理由は次回にお話ししますね。

土の中の生命活動

田植百 TAUE HUNDRED-田んぼ断面 本日は、前回に続いて田んぼの土の中のおはなしです。

「中ぼし」の意味として、土の中にたまったガスを抜くということもあるというのが前回までのお話しでしたね。そこで、土の中にガスがたまるっていうけど、なんで?ということになりました。

田んぼの土は、左の写真のような断面になっています。この中にイネの根が生えているわけですね。そして前回書いたように、根は呼吸しています。つまり二酸化炭素を放出しています。よって、まず土の中には、作物の根が呼吸によって放出する炭酸ガスがたまることになります。

加えて、かなり以前に書いたように土の中で生きているのは、イネくんの根っこだけではありません。イネくんの成長を側面からサポートする様々な生き物がいます。
それってミミズとかタニシのこと?ってそれもありますが、目には見えないほど小さな微生物がたくさんいるわけです。菌類をはじめとするそれらの微生物は、膨大な数が存在し、常に生命活動を繰り返しているわけです。その結果、いろんなガスがそれらの微生物から放出されることになります。

菌の類は大別して、酸素のある環境下で活動する好気性の菌と酸素を使わない嫌気性の菌の二種類があります。好気性菌が活動すれば、酸素を使って二酸化炭素を放出します。また嫌気性の菌が活動すればまた別のガスを放出します。

すると・・・イネくんの根の他にも土の中には、ガスを放出する生き物がたくさんいるということになりますね。このような小さな生き物が生命活動を営んだ結果として日々様々なガスが土の中で放出されているわけです。
そしてそれらのガスは、イネの成長にとって不都合な場合もあります。よって、土の中のガスを抜いてあげることでイネくんの根は、またリフレッシュして元気に成長していけるということになるんですね。

中ぼしの秘密

田植百 TAUE HUNDRED-中ぼし01
田植百 TAUE HUNDRED-地中のガス
本日も昨日に続いて「中ぼし」のおはなしで~す。

稲刈り時期でもないのに、田んぼから水を抜いちゃうのが「中ぼし」で、その第一の目的は土の中への酸素供給、ということでしたね。

さて、そこで本日は「中ぼし」の更なる意味をお伝えしましょう。

通常田んぼの表面は水で覆われているので、水にじゃまされて気体である酸素は土の中に直接入りずらい。しかしこれは同様に土の中にある気体も水によって閉じ込められて外に出ずらいということでもあるのです。

はぁぁあ?土の中に気体があるんですか?土は土でしょう?
いえいえ、土の中にも気体があるんですよ~ 左下の写真を見てください。水が入っている時の田んぼの水面を撮ったものですが、小さな泡がいっぱい出てますよね。この泡、いったいどこから出てきたと思いますか。
えっ?カエルのゲップ?じゃなくて、これは土の中から出てきてるんです。土の中には、けっこう気体がたまっていきます。そこで「中ぼし」には、それらの気体が抜けやすい状態を作ってあげるという意味合いもあるんです。

えっ?? さっき田んぼの土は水に覆われているから気体が入っていきずらいって言ってたじゃない?なのにどうして田んぼの土の中に気体がたまるの?――はいはい、ごもっともですね。でも大丈夫、ちゃんと説明しますからね。でも、それは・・・また明日。