Yside















『どういうことだ!!』

"それが、私も何も伺っていなくて……スマホも電源を切っているようで繋がりません"

『…………何故……急にこんなことに……』

"もう一度行きそうな場所をあたってみます"

『………頼むよウニョク…』





バンッ!!!










チャンミンが居なくなった。






何も言わずに…
いや、置き手紙はあった。









「私の我儘で申し訳ございません。
探さないでください。皆様の幸せを願っております チャンミン」




『くそっ!!!
なんでたよチャンミン…なんで……俺の傍から離れるんだよ…』





ポタッ





チャンミン……





ポタッ








チャンミン…

無理だ。もうチャンミンの匂いを欲してる。チャンミンの肌も、チャンミンの笑顔も……俺はチャンミンがいないと生きていけない。




『絶対に探しだしてみせる。
覚悟しろよチャンミン!』





















"なかなか見つかりませんね…"

『正直、こんなに時間がかかるとは思わなかったよ』

"はい。王室命令で地方自治体や企業にも情報提供依頼をしましたが、何も手がかりがございません"

『……………チャンミン…どこにいるんだよ……』




心が折れる。
もしかしてチャンミンは俺を嫌いになったから出ていったのではないか。
俺に嫌気が差して…


フルフルッ




違う。そんなはず…
好きだと言ってくれていたし。






"ユノ、何か心当たりないのか?"

『ねぇよ…スマン王の王女との結婚話だってちゃんと否定したし』

"そうだよな…否定し……あ、もしかして"

『ん?なんか心当たりあるのか?!』

"否定文を出すように指示してたけど、あのときの記事のタイトル覚えてるか?"



タイトル?



『スマン王の王女との結婚を視野に?じゃなかったか?』

"正解。でもその前にも文があっただろ?覚えてないか?"

『その前……?…………確か…あ、』

"思いだしたか?"

『恋人の存在を明かすも…だった……』

"つまりチャンミンは否定文は恋人の存在ってところだと思ったのかもしれない"

『……………そんなわけないのに』

"チャンミンのことだ、ネガティブに考えてしまったのかも"

『………バカだよチャンミン』

"だからフラれる前にいなくなったってところか?"

『……………絶対にみつけてウニョク!』

"分かってるよ"




もし今の考えが合っていたとすると、
なんで聞いてくれなかったんだよチャンミン。


なんでもっと俺を信じてくれなかったんだよ。





















Cside





「こんにちは〜」

"こんにちはチャンミンさん。今日も元気ね"

「ふふ、天気も良くて散歩日和ですよ。どうですか?お散歩」

"そうだね…腰の調子もいいから行こうかね"

「お供しますよ」

"ありがとね"




王室から出て僕は隣町で家事代行の仕事をしながら生計を立てて早1ヶ月。
執事の経験から家事代行は天職だ。


隣町は高齢化が進んでいて、
ほとんどがどこか身体を痛めたお爺さんお婆さん。


だから僕を孫のように可愛がってくれる。










"空気もおいしいね"

「はい。洗濯物がよく乾いてうれしいです。お布団もお日様のおかげで今夜はフワフワです」

"寝るのが楽しみだこと"

「僕もお布団を干しているので今夜が楽しみです」

"あ、そうそう孫のドンウがね帰って来ることになってね"

「え?」

"ドンウの部屋を掃除してもらえるかね?"

「はい」




お孫さんが帰ってくるってことは、
僕はもう用無しかな…







「お孫さんのお部屋の清掃終わりました」

"あるあら早いのね。さすがチャンミンさん"

「あ、シーツやお布団は明日洗濯しますので」

"これでドンウも喜ぶわ。たった1週間の帰省だけど、ゆっくりしてもらいたいからね"

「1週間の帰省?」

"そうよ?"

「完全に帰って来るわけでは……?」

"違うわよ〜。仕事で長期休み取れたって喜んでてね"

「……そう…だったんですね……よかった」

"えぇ?"

「てっきりお孫さんが完全に戻ってこられるのかと思ってしまいました。そしたら僕はもう用無しかなって…ヘヘ」

"…………そうな風に考えないで。例えドンウが完全に戻って来ても、チャンミンさんを用無しだなんて思うはずが無いじゃない"

「…………ありがとうございます」

"ほんと、早とちりなんだから!"

「すみません…」





そうして翌日にお孫さんのお布団とシーツを干して、準備万端でお孫さんを迎えた。





"へぇ、今どきは男性も家事代行なんだ"

「私の趣味を運良く仕事にできたまでです」

"家事が趣味ってすげーな!"

「それほどでも……」

"この料理も美味!"

「………ありがとうございます…」




お婆さんのお孫さんであるドンウさんは想像とは違って思ったことを声に発してしまうタイプの男性のようだ。
お婆さんの優しいふんわりしたイメージと掛け離れているな……




"こら、チャンミンさんを困らせないの"

「大丈夫ですよ、お料理がお口にあって良かったです」

"ごめんねぇチャンミンさん"

「大丈夫ですから、ね?」

"ドンウはお調子者だから、ちゃんと仕事ができてるのか心配でね"

"それが出来ちゃってんだなー"

「………………あはは…」



自分で言うんだ……



















「では僕はこのへんで……」

"あ、"

「はい?」

"あー違う違うテレビ見てて、つい声が出ただけだから"

「………そうですか」




やっぱりすぐに声に出す人だな





"この人、東方の國の王様じゃん?"

「………え……………?」

"あら本当ね。やっぱりイケメンさんだこと"

"若いのに大変だね〜"

「…………………」




ユノ様……


ギュッ
思わず手に力が入ってしまった。









"ところで、どうして王様がテレビに?"

"ん?わからん。
なんかの公務なんじゃん?"

"私たちには無縁のお話ね"

"そーそー。ばーちゃんデザート食べる?"

"あたしはお腹いっぱいだから遠慮しとくね"

"ふーん"

「………………………ユノ様…」

"ん?チャンミンさん?"






『チャンミン!どこにいる?!
いい加減出てこい!』

「…………ッ!!!!!!!!」

"っびっくりした〜?!"

"王様がテレビで叫んでいらっしゃるわね"

"チャンミンって………?"




チラッ




"まさかな。たまたま名前が同じなだけ"







ドンウさんが僕に視線を移すも、
王様が叫ばれたお名前が僕を意味していないと思われ、すぐに視線はテレビへ戻された。




『いいかチャンミン!どんなに逃げても絶対に見つける!何がなんでもだ!!』

「……………………」

"叫ぶね〜王様も"









"王様、チャンミンさんとはどういったご関係でしょうか?どなたなんですか?"


マスコミからの質問。
当然の質問だ。


『チャンミンは、私の執事です』

"執事……ですか………"

『そして、私の恋人です』

"………恋人?チャンミンさんは女性のお名前でしたか。てっきり男性かと"

『男性です』

"え!?"

『チャンミン出てこないとお前が俺の愛する恋人だと世界中に叫ぶぞ?それでもいいのか?!』

「……………………ッ」






"すんげー愛の告白だな。てか既に世界中に叫んでいるのと同じだと思うんだけど"

"素敵じゃないの。うふふ"

"でもさーチャンミンって執事は男なんだろ?それなのに……ってチャンミンさん?!"

「…………………」

"すんげー顔が赤いけど……?"

「!!!すみません!!!!!!」

"何何?!もしかして同じ名前だからって自分が告白されとかおもっちゃった?"

「いえ………/////」

"………………………………チャンミンさん"

「はい……///」

"帰ったほうがいいんじゃない?"

「!!!すみません長居してしまって!」

"あ、違うのよ。そういう意味でじゃなくて………王様のところへって意味よ"

「え……」

"ばーちゃん王様の言っている執事のチャンミンさんと、ここにいるチャンミンさんは別人だって!"

「………………」

"待ってくれる人がいるって素敵よ?"

「………………」

"ばーちゃん…痴呆には早いって…ハァ"

「……………えっと…」






お婆さんは何を思ったのか、
ユノ様がテレビで叫んだチャンミンを僕だと思っているようだ。

正解なんだけど。





で、ドンウさんはお婆さんが痴呆とかボケちゃっと思ってやれやれって感じ。




僕は…ユノ様がテレビで仰ったお言葉に戸惑いつつも、心が震えるほど嬉しかった。







「………か、帰りますね。また明日来ますから」

"またね〜"

"よく考えるのよ?"

"ばーちゃんいい加減にしてよハァ"

「…………………」










手を振り僕は家へと向かった。







ユノ様…
マスコミを前に恋人が男だと話すなんて…
スマン王の王女は?
結婚するんじゃないのですか……?


本当にあなたの側に戻っても良いのでしょうか…。
あなたを悩ますことになりませんか?




僕は






邪魔ではないのでしょうか。





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