【憲法】 二重の基準(1)―二重の基準論の根拠 | 法学事始ブログ

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二重の基準・序説

芦部・高橋率いる絶対的通説であったアメリカ二重の基準論が現在大きくゆらぎつつあります。
この二重の基準とは何か、まずはその本質から、見ていきましょう。

二重の基準とは
主として、精神的自由と経済的自由を念頭に置いて、
「公共の福祉のもとで内在的制約をうける人権は人権の性質によって異なる扱いを受けるべきである」
という考え方です。

大前提として
①自由権内部での異なる扱いについて考える法理であること
②司法審査の姿勢について述べたものであり、どの審査基準を用いるかはこの法理からは導かれないこと
については押さえておかねばなりません。

そのうえで、基本となる考え方から直結して、
「精神的自由は厳格な違憲審査基準を用い、経済的自由には緩やかな審査基準を用いる」
という論理は導かれません。


そもそも厳格審査基準、緩やかな基準とは何なのかということを考えることが、
「人権の性質によって異なる扱いを受ける」の意味を理解することにつながります。

審査基準とは立法が定めた法律、また行政が行う行政行為が憲法に反していないかを検討する基準ですが、
反対に解釈すると、憲法に反していない法律、行政行為のラインを画定する基準といえます。
言い換えると、立法裁量、行政裁量における人権侵害の限界を定める基準だといえます。
これはさらに、人権侵害についての判断を裁判所が中心となってするべきか、立法や行政が中心となってするべきか、ともいえます。

とすると、二重の基準が言う「人権の性質によって異なる扱いを受ける」というのは、
「立法裁量、行政裁量を尊重する程度が人権の性質によって異なる」ということを意味しているだけであって、
精神的自由が経済的自由に比べてより高位の人権であるということは意味しないことになります。

※二重の基準の理由づけとして人権の重要度の違いをあげる説もあるが、これについてははなはだ疑問。
判例も表現の自由など精神的自由の重要性について述べてはいるが、
その重要性が経済的自由に比して高い、とか、それが二重の基準の論拠としてあげられているわけではない。


では、なぜ人権の性質によって立法、行政を尊重する程度が異なるのか、
二重の基準を用いる理由が問題になります。
それは政府による介入の必要性がどれだけ高いかという問題です。
介入的自由主義の現代日本では、経済に対して国家が介入する必要性が高く、
それゆえ、権利の性質によっては立法裁量が広く認められるものがでてくる
すなわち、権利の性質によっては立法にその判断をゆだね、裁判所は深く立ち入らないものがでてくる
ことになります。

つまり、二重の基準とは
「立法や行政が判断すべき権利の制約については、
裁判所がその合憲性を深く判断するよりも、
より専門的な国会や行政に判断をゆだね、その判断を信頼する」

という役割分担的発想といえます。

※これを導く理由づけについては2つ疑問がある。
1つは裁判所の判断能力を理由とするもので、裁判所の合理性を判断する能力が劣っているとするが、
専門性を理由にするにしても、理由づけとしては説得的ではない。
もう1つが、精神的自由の制約が民主的プロセスを障害し、自浄的な回復が困難であることをあげる説であるが、
それに従うと、民主的プロセスの理解に依存することとなり、射程が曖昧になる。


結果、立法や行政が判断すべき権利(主として経済的自由)について
緩やかに審査されることが多くなるわけです。
ただし、二重の基準において立法や行政が判断すべき権利について、
判例で厳格に解す必要はない(=緩やかに解する)ことを認めているものの、
判断すべき権利とはいえない権利(主として精神的自由)について、
判例では、積極的に厳格に審査することを明示していない点に留意すべきでしょう。
実際、二重の基準からは厳格審査によるはずの表現の自由の具体的保障の場面において、
緩やかな審査を行い、合憲の判断をしているなど、その前提としての効力は疑問視されます。

以下、芦部の説く二重の基準を具体的に検討したのち、
二重の基準の下で用いられるさまざまな審査基準について、検討していくことにします。


【参考文献】
・芦部信喜「憲法判例を読む」岩波書店 pp.97-100
・芦部信喜「憲法学Ⅱ 人権総論」 有斐閣 pp.213-245
・高橋和之「立憲主義と日本国憲法」有斐閣 pp.127-128
・戸松秀典「憲法訴訟」有斐閣 pp.196-206
・長谷部恭男「Interactive憲法」有斐閣 pp.19-30

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