約束の一打席 第2話 『梅雨の候』 | 黄昏の黄色い帽子に一番星……☆

約束の一打席 第2話 『梅雨の候』





・・・・第1話【もうすぐ夏、】の続き......




第2話 【梅雨の候】


季節は
もうすぐ夏を連れてきてくれる梅雨どき....


いつもどおりの20:24着の電車は
突然降りだした
通り雨に、濡れていた。


前の車両から傘を持たない佐伯君。
カバンの中から、折りたたみの傘を取り出しながら、追いかける。


『オレが傘、持つよ』

身長差25cm、、、、
私が傘持てるわけがない。

いつもより、かなり近い、二人の間、、、


『今日、ベンチ入りメンバーの発表があって、背番号もらった、13番だった・・・』
『一ケタじゃ、なかったんだ』
『そうだな、レギュラーっていうわけにはいかないな』
『でも、ベンチには入れたんだから、試合にも出れるかもね』
『そりゃぁ、そうだけど、現実はなかなか・・・・』
『・・・・・・・』
『でもさぁ、3年間野球やってて、ベンチに入れなかったヤツも居てさぁ、、、そいつらが泣いてるのを見ちゃったんだよなぁ。。。』
『・・・・・・・』
『オレはベンチ入りして、まだ試合に出る可能性があるんだから、その最後の一瞬まで、頑張ろうって思ったよ』
『そうだね、頑張らなきゃ、だね、』
『最後の夏の大会ってのはさ、負ければ終わりだから、負けた試合=引退試合なんだ、、、その引退試合まで、頑張って万全の調子にもっていかないと、、、、、ベストを尽くさないと、、、、、』
『大学には行かないの?』
『うちは母一人、子一人の母子家庭だし、野球も高校で終わりだよ、、、だから選手生活最後の夏なんだ』

・・・二人の頭上に1本の傘、
通り雨の雨音が耳に残る・・・・・

◇ ◇ ◇ ◇

雨の日の自主トレは、港の倉庫の軒下、、薄暗い蛍光灯が照らす。
私がシートの上でストレッチしている横で、黙々とバットを振り続けている
中学の頃からの、見慣れた光景であり、日常の光景なんだけど、、、
バットスイングの空気を切り裂く音が、いつもより鋭い
夜の海の遠くを見つめながら、素振りの音に耳を傾ける。

『調子いいね、』
『・・・・わかる?』

一言交わしただけで、
また、黙々とバットを振り続けている。


背中で聞く、素振りの音が、雨の港に響いている。
調子の上がってきている佐伯君に、チャンスがめぐってきて欲しいなぁ・・・・


第3話【抽選会】に続く.....

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