翌日、私はミナミの道頓堀にある、場外馬券場の中にいた。
競馬は朝の9時50分からスタートする。
白い新聞には、ボールペンで真っ黒に印が付けられていた。
昨日、徹夜で調べ上げた結果だった。
仕事でもこんなに真剣になったことがあるだろうか・・と思う。
競馬が好きとか嫌いとかのレベルは超えていた。
こんどは、自分の予想結果を信じて賭ける。
今日こそ当てて増やす・・・・・。
それだけだった。
競艇や競輪は一切しない。
競馬だけで十分だ。
地方競馬もしない。
朝の1レースからはじめた。
特に本命だけでも、大穴狙いでもなかった。
函館1レース ダート1700m 11頭。
ダートとは、砂のことだ。
競馬場のダートは約8センチの砂が敷かれている。
函館競馬場は9センチと、少し砂圧が深い。
それだけでも走るのに力が要る。
私は先行馬の2頭と差馬の3等を
三連複5点、と馬連に掛けた。
レースがスタートし、私の賭けた馬が軽快に
飛ばしていった。
他に賭けた馬も中段にいて除々に押し上げて来ていた。
4コーナーを回って先頭の馬が後続をさらに突き放した。
(よし・・・1着は行けそうだ。)
直線に入ってさらに後続を離してゆく。
もうセーフティーリードだ。
2着に粘っていた馬の足色が悪くなり、
後続の集団に飲まれていった。
私が賭けた他の馬もその集団の中にいた。
ゴール。
1着は問題ない。
2着には4番、3着には6番、4着には1番が来た。
私は4番は買っていなかった。
4番は大穴である。
(・・・・・・どうしてこんな馬が来れるんだろう・・・)
新聞を見ていると、調教も走破時計も悪い。
疑問に思いながら、次の福島を買った。
福島1レース、芝1800m
レースがスタートした。
予想外の馬が、1頭抜け出て逃げていった。
後続をどんどん突き放す。
その馬は買っていなかった。
私の買った馬は本命馬だが、離れた2番手を追走していた。
(この逃げ馬はこんなに飛ばしたら、最期にヘタるな・・・・。)
3コーナーを回って、7馬身ほどの差がついていた。
私が買った馬は、先行、中段をじっと我慢して走っている。
4コーナーを回った。
逃げ馬は7馬身のまま逃げてゆく。
後続が逃げ馬との差がありすぎる事に焦りだした。
みんな、早めに鞭を入れだした。
少しづつ差が詰まってきた。
私が買っている本命馬が必死で追い込んでゆく。
ゴール前でとうとう逃げ馬を捕らえた。
しかし、逃げ馬はまんまと2着でゴールインした。
(なんであんな馬が逃げ残るんだよ・・・・)
またもや、私が買った馬は1,3,4着だった。
次々とレースは行われてゆく。
感傷に浸っている余裕はない。
なかなかあたらない。
なぜか見事に少しづつ予想とずれている。
午前中のレースは本命のレースが520円
当たっただけだった。
(どうしてこんなに当たらないの?)
すでに3万円が無くなっていた。
私は、知らず知らずのうちに、熱くなっていた。