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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

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それから約二ヶ月がたった。

私はいつの間にかシステムの本業をすることなく、事務所に通う毎日が続いていた。

富田通は、途中から作業の手を止めて、のらりくらりと誤魔化しはじめた。

私は同業なので、直ぐに気が付いてたが、作業について追求をしなかった。

社長はドルコングループや武井さんなどから出資を受けることが出来ずにいた。

裏の大物は、社長程度では歯が立たないと言うことだった。

詐欺師の命は、金を出してくれるものと、身の周りの関係者を信じさせるという一点に尽きる。

最初に企画して、若干の金銭を手に持ってイギリスに行き、ブックメーカーからライセンスを取り、それだけで三億もの金を手に入れた手腕は、だれにでも出来るものではない。

日本では、ブックメーカーといえば、一つの組織の様に思えるが、イギリスでは数多くの組織がある。

しかも日本のことなど、どうでもいいから、ライセンスなど、少し努力すれば手に入る。

日本からみたブックメーカーという組織の印象、錯覚を見事に利用した。

しかも、ゆくゆく日本に一大カジノを築き上げようと言う夢を語りつづけて、お金と夢を語りながら東奔西走している姿を見て、身の回りの人間を信じさせる話術にもたけていた。

大きな企業の場合は、事業で儲けるのも勿論だか、公的にその事業を業(なりわい)として続けていかなくてはならない義務と宿命も背負っている。

しかし、中小の企業は、本音は経営者の利益、富(とみ)の蓄積が本音だ。

途中で利益を手に取り、トンズラする人もいる。

にわか詐欺師の誕生だ。

普通の詐欺師は、周りを信用させるためのカリスマが必要だ。

社長は見事にそれをやってのけた。

お金を回すか回さないかまたは、逃げるか・・、それだけの違いにすぎない。

いよいよ社長は東京へ引っ越していった。大阪の事務所は閉鎖された。

私は自分の会社を理由に、東京には付いていかなかった。

事務員は解雇され、専務は、大阪に残ろうとしていた。

これで終わったかに見えた。