人気漫画「黒子のバスケ」の作者、藤巻忠俊さん(30)の関係先に、藤巻さんを脅迫する文章などが届いた事件で、これまでに都内だけで約50カ所に脅迫状が届いていたことが25日、分かった。犯人によるとみられるインターネット掲示板の書き込みでは、全国で少なくとも91カ所への送付を示唆している。警視庁捜査1課は怨恨(えんこん)による威力業務妨害事件とみて捜査しているが、藤巻さん周辺に該当するトラブルが見つからず、捜査は壁にぶつかっている。


◆気化すれば致死量

脅迫状の存在が最初に発覚したのは、上智大(東京)の体育館。10月12日午後7時15分ごろ、硫黄臭のする容器を女子学生が発見した。容器には脅迫状が貼られ、「上智大OBの今をときめくマンガ家の藤巻忠俊が憎いからだ」と書かれていた。藤巻さんは上智大を中退している。

女子学生がフタを開けずに届け出たため、被害はなかったが、容器内の薬品は、気化すれば致死量を超える硫化水素が発生する可能性があった。

翌13日、漫画のイベント会場「東京ビッグサイト」や「札幌テイセンホール」などにも脅迫状が届いた。

2日後の15日には藤巻さんの母校である都立戸山高校▽29日はアニメの声優がラジオのパーソナリティーを務める文化放送(東京)▽31日にはアニメを放映した毎日放送(大阪)-などと相次ぎ、10月末までに全国で33カ所。11月中旬~下旬にも「福岡国際会議場」などに脅迫文が届き、液体入りの小型容器などが同封されていた。中止で次の犯行?

捜査関係者などによると、10月末までに届いた脅迫状は、直接容器が置かれた上智大を除く32カ所が、同12日に都内、同26日に大阪市内の郵便局2カ所からまとめて送られていた。

11月中旬に都内のイベント会場「東京流通センター」などに届いた脅迫状は東京都大田区、愛知県内のイベント会場などに届いた脅迫状は会場近くから投函(とうかん)されていた。いずれも藤巻さんへの脅迫やイベントの中止を求める内容だった。

実際に、イベントの中止が相次ぐ中、集英社も幕張メッセ(千葉)で12月22、23の両日に予定されていた「黒子のバスケ」関連イベントを中止した。だが、このイベントへの脅迫状は11月中に届いており、12月に入ると、脅迫行為は沈静化している側面もある。

 犯人はイベントが中止になることを確認して、次の犯行を計画している様子もうかがえる。

◆「全てを奪われた」

「俺は藤巻に全てを奪われた」。上智大で容器が発見される約6時間前の10月12日午後1時ごろ、ネット掲示板にこうした書き込みがあり、戸山高校などへも「覚悟しておけ」と記していた。「『秘密の暴露』もあり、犯人の可能性は高い」(捜査関係者)。捜査1課が解析した結果、犯行声明は千葉県内のネットカフェから書き込まれていたことが判明している。


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