フルートの出番です149  シューマン「3つのロマンス」 | 翡翠の千夜千曲

翡翠の千夜千曲

音楽を学びたい若者で困難や悩みを抱えている人、情報を求めている人のための資料集

    

 R. Schumann: 3 Romances for oboe and piano, Op. 94 (arr. for flute and piano)

Recorded live at Hakuju Hall in Tokyo, Japan, 2019 R. Schumann: 3 Romances for oboe and piano, Op. 94 (arr. for flute and piano) I. Nicht schnell II. Einfach, innig III. Nicht schnell Denis Bouriakov, flute; Naoko Ishibashi, piano

 

    

 Robert Schumann - Three romances op 94 (no 1 and 2) - Olivier Stankiewicz, oboe

 

 

 

 「シューマンの交響作品は、どれも似た響きがする」とは、某指揮者が言いオーケストレーションを改ざんした。言わば、確信犯的犯罪の首謀者です。これは、シューマンが常にどのパートも鳴るように書きがちだったことによるものなのですが、室内楽は、少しばかり様子が違っています。いずれにせよ、人の作品に手を入れるとは、モナリザに絵の具を塗り重ねるようなものです。 

 シューマンはギムナジウム(中等教育)で学んでいた頃から友人や知人の家でモーツァルトやウェーバーらの室内楽を楽しんでいて、自身はピアノを担当していました。 その頃、室内楽曲の初期の試作品ハ短調のピアノ四重奏曲やヴァイオリンとピアノのためのソナタを書いています。

 1840年にクララとの結婚した頃には、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を熱心に研究しています。本格的に室内楽に取り組んだのは1842年で、弦楽四重奏曲(3曲)、ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲などを精力的に書いています。その後も、ピアノ三重奏曲(3曲)やヴァイオリンソナタ(3曲)などが書かれました。

 シューマンの室内楽曲魅力は、独特の幻想味があることでしょうか。古典的な手法乍らも自由な構成の中に、巧みな対位法がシューマンの幻想的な響きの広がりを助けているのかもしれません。 3曲の弦楽四重奏曲のほかは楽器編成にピアノを用いているほか、チェロを好んで使用していることが特徴になっています。

 また、古典派などに良く見慣れた多楽章形式を基本としたものや、ピアノ曲の幾つかで見られたような小品集や組曲形式もあり、それらの中では趣を感じられるような楽器の組み合わせを考え出しています。 クラリネットとピアノのための「幻想小曲集」(作品73)、ホルンとピアノのための「アダージョとアレグロ」(作品70)、オーボエとピアノのための「3つのロマンス」(作品94)などがその例です。本来ロココ風である管楽器とロマン的なピアノによる対話であり、これらはシューマンが18世紀とロマン主義との調和を図り、絶妙なバランスを持たせる作品に仕上げた結果と言えます。2曲目などは、シューマン節が時折聞こえてくると、何やら妙にうれしくなるのが不思議です。

 今日は、そのオーボエとピアノのための「3つのロマンス」をフルートの演奏で聴いてみます。ブリアコフの演奏もさながら石橋直子さんのピアノもいい感じで絡んでいます。三上さんの解説はいつ読んでも面白いですね。確かに、ロマン派のフルート作品でこれぞと言うのは限られているのです。

 念のため、本家の響きも挙げましたが、音色の違いは予想外に効果が違い、オーボエと言う楽器の豊かな表現力を痛感します。オリヴィエ・スタンキエヴィッチの丁寧な演奏が一層味わい深いものにしています。その点、フルートの響きは明るく暖かいと改めて感じます。ブリアコフの紹介は省略します。

 

<演奏者>オーボエ

 2015年にロンドン交響楽団の首席に任命されたオリヴィエ・スタンキエヴィッチは、同時にRCM木管楽器学部に加わりました。ジュリアード音楽院、マンハッタン音楽院、シベリウス・アカデミー、ヴォクセノーセン・サマー・アカデミー、香港、日本でマスタークラスを受講。

昨年、オリヴィエはウィグモア・ホール、スネイプ・モルティングス、ルーヴル美術館で、アラスデア・ビートソン、ドリック、キャスタリアン弦楽四重奏団と共演してリサイタルを行った。彼はベンジャミン・アタヒルの協奏曲ヌールをリール管弦楽団と演奏し、エクス・アン・プロヴ 

 ァンスのイースター・フェスティバルにルノー・カプソンと参加しました。

これまでのソロのハイライトには、ボストンのイザベラ・ガードナー美術館、ニューヨークのメルキン・コンサートホールとモーガン図書館、ドイツのフェストシュピーレ・メクレンブルク・フォアポンメルンでのリサイタルが含まれます。

 ライプツィヒとニューヨークで開催されるヤング・コンサート・アーティスト国際オーディション、日本の国際オーボエ・コンクールで第1位を受賞。2016年、ロンドンのヤング・クラシカル・アーティスト・トラストに選ばれる。

 ゲスト・プリンシパルとして、オリヴィエはヨーロッパ室内管弦楽団、マーラー室内管弦楽団、ロンドン・シンフォニエッタ、フィラデフィア交響楽団、バイエルン放送団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団に出演。2011年から2015年までトゥールーズ国立国会議事堂管弦楽団の首席オーボエを務めた。

 ニースに生まれたオリヴィエは、パリ国立高等音楽院でオーボエと理論を学んだ(2009-2014)。2013年、彼はフランスの協会ADAMIによって「古典的な啓示」と名付けられました。

彼はWARNの創設メンバーでした!2011年のNGコレクティブは、サウンドペインティング、即興演奏、革新的なパフォーマンス体験を実験し、頻繁に新作を依頼したグループです。彼らの作品には、リリケ美術館でのコンサートインスタレーション、モナコのプランタン・デ・アーツ、フランス音楽院でのいくつかの放送が含まれています。彼は現在、ベルリン・カウンターポイントのメンバーです

 

 

 

シューマン、ロベルト/3つのロマンス OP.94

Schumann, Robert Alexander 3 ROMANCES,OP.94 (ED.RAMPAL)

 

<解説>ムラマツフルートのライツノートより
 フルートとピアノのための作品を見渡すとロマン派の名作が少ないことにいつも嘆かざるを得ません。「3つのロマンス」 は、オーボエのために書かれたロマン派作品として、最も重要なものと言えますが、フルートで吹くと弱冠、低音域が多いものの、真正なロマン派の息吹きにふれられる貴重な曲と言えましょう。この曲をシューマンの音楽の息使いを会得したピアニストと共演することができたら素晴らしいですね。この作品は、シューマンの最も実り多い年といわれる1849年に作曲されました。小品とはいえ、手の込んだ主題的展開とブレス・コントロールに対する至難な要求と緊迫した表現力によって、当時はほとんど不可能に近い事を求めているため、シューマンは、はじめから、オーボエ以外に、ヴァイオリン、クラリネット、あるいはチェロでも演奏できるように設定しています。第1曲 イ短調は「速くなく」 とあり、もの寂しく幻想的な雰囲気で構成されており、第2曲 イ長調は「素朴に、内的に」 とあり、柔らかく暖かい旋律で始まり、嬰ヘ短調の 「やや生き生きと」 の部分を中間に持つ三部形式。第3曲 イ短調は「速くなく」 とあり、前の2曲とは違った雰囲気で、物語的性格を持った曲です。(解説/三上明子)

 

Works For Oboe & Piano: Holliger(Ob)Brendel(P)

Schumann, Robert (1810-1856)