以前テレビで、ありきたりのもんを変わった食べ方で食べることをやっとった。
吉野家の、牛丼セットか何かじゃったと思う。
まず、牛丼に卵の黄身だけをかけて食べるんよ。
ご飯を半分残して、そこに漬物と卵の白身を入れてかき混ぜてまた食べる。
こうすることによって、違う食感を楽しめるいうもん。
卵は黄身だけにすることで牛丼のタレと肉にからんで濃厚な味になり、白身と漬物でさっぱりしたシャキシャキ感がある。
卵の黄身は、自然界が作り出した最高のソースとか言うとったね。
うん、確かにそうじゃのう。
卵の味は、ほぼ黄身の味じゃけえのう。
白身と分離することで、さらに旨味が増すじゃろう。
同じ環境におっても、何をどう選択するかで能力も変わってきよる。
私の職場では、管理職育成優先の雰囲気が強い。
しかし、昇進して収入は増えるかもしれんのじゃけど、能力は頭打ちになる。
管理職になるとやるべきことは増えるんじゃけど、それが一過性のことが多く、他で応用できないことばかりなんよ。
そうすると、10年経ってもその職務の忙しさで終わってもうて、何ら技能が育っとらんいうことがある。
知り合いでもおったんじゃけど、ゼネコンの部長じゃった人がおった。
部長じゃった頃は、大手ゼネコンの部長いうことでそれなりに人が集まった。
しかし退職して肩書きがなくなると、途端に誰も寄らんようになった。
そんで様子見とると、打ち合わせばかりしとるんよ。
んんん?
こないだも打ち合わせ、今日も打ち合わせ、何をやるんじゃ?
打ち合わせ以外しとらんぞ、おかしいのう。
なるほど、部長時代の仕事をそのまましとるんよね。
打ち合わせして部下に仕事を割り振り、解散してそれが終わるのを待ついうこと。
しかし会社でもなければ、人と打ち合わせしてお願いしたこともああまだですとか言われて先延ばしになり、改めて打ち合わせしても堂々巡り。
打ち合わせで仕事をしてきた人じゃけえ、それしかできんのよ。
私の場合は昇進に何の魅力も感じず、それよりどこへ行っても役に立つ能力を選んではそこに注力した。
外国語なんかは、私が全部引き受けるみたいなことをやると、周りがそう認知して全部私に振った。
最初は下手っぴじゃったとして、場数が重なるとそれらしくなる。
他にはセールストークの話法の組み立てとかも、交渉ごとに役に立つ。
能力的にはかなり特化したんじゃけど、だいぶ横に広がりデカくなったんよね。
社内の仕事を好き嫌いで食い散らかした感じいうか、会社業務を食い物にした感じよね。
そうするといろんな業務のある中で目標の業務だけより集められ、その密度が相当高まる。
外国語なんかは誰もがチンプンカンプンな会話してわけわからんより、それを引き受けてくれる人に振った方が他に集中もできる。
逆に数値管理とか価格設定とか問屋交渉とかは、上司に任せる感じなんよね。
カレーライスで肉だけ食うて、あとは捨てたみたいな感じ。
そういう食い方なら、肉料理を食べたような結果になる。
社内業務で、外人対応の時間のパーセンテージは高くはないんじゃけど、それだけ集めてやると海外に行っとるに近い学習環境になる。
今の会社の方針はただ一つ、拡大のための拡大なんよ。
それで拡大した組織を運営する管理職が必要じゃけえ、管理職から遠ざかる人を冷遇するんよね。
ともあれ管理職にならんもんにとって、会社にある利用可能なものは窃盗以外でかっさらうべきなんよ。
ゴミの中から使える紙があれば使い、他で役立つスキルがあれば磨き、社内研修で学べるもんは学んどく。
窃盗にならん限り、誰も傷つかない。
今の会社が、10年後の能力に関して責任を持ってくれることはない。
その時に、今の組織がそのままでもない。
別なとこで悠々自適になっとるかもしれんし、路頭に迷うとるかもしれんのよ。
何かの能力で上手くいく者、能力が枯渇して転落する者、いろいろなケースがあるじゃろう。
それで困らんければそれでええんよ。
個人の未来は、その本人の責任に任されとるんよ。