水頭症の手術が無事に終わり頭痛から解放されたケー君でしたが、頭の中に腫瘍が取り除かれたわけではありません。
しかもケー君の松果体にできた胚細胞腫瘍は、ジャーミノーマを含む ”卵黄嚢腫を主成分” とする混合性胚細胞腫瘍 と呼ばれる治療の難しい 小児がんで、さらに”播種”と”浸潤”が見られるため治療の緊急性が求められました。
それなのに ”標準治療” が無いと言われたのです・・・
標準治療とは?
がん治療の選択について
高難度治療が求められる ”がん” に罹ると、誰でも特別な治療を受けたいと思いますが、基本的には ”標準治療” が進められます。
標準治療と聞くと、なんか一般的で特別感がありませんが・・・
標準治療とは、世界中で行われている試験や治療の結果に基づき常にアップデートされている、専門家が最も有効で安全と判断した治療方法です。
つまり 一番病気が治る可能性の高い治療方法なのですが、残念ながらケー君の”混合性胚細胞腫瘍”には、確立されていないのです。
ケー君の治療が難しい理由
なぜケー君の ”混合性胚細胞腫瘍” の治療が難しいかというと・・・
- 松果体にできる腫瘍はアジア圏に多い
- 腫瘍成分に”卵黄嚢腫”を含む
- 播種と浸潤が見られる
などの理由を教えて頂きました。
そんな治療前に告げられたケー君の状況は、”グレード3” と呼ばれる予後不良群に分類されました。(脳腫瘍の場合、他のがんと違って、ステージなどで分類されるのではなくグレード1から4までで分類され数字が大きいほど悪性度が高い)
ただ標準治療が確立されてはいませんが、治療方法が無いというわけではありません。
ケー君の治療方法について
COG ACNS0122
水頭症の手術後、ケー君の状態が安定する1週間の間に治療方法が検討された結果、ケー君の様に ”グレード3” と呼ばれる予後不良群 でも、比較的良い治療結果が出ている”北米のCOG ACNS0122”という海外での治療計画を参考に立てられました。
どれほどの治療内容なのか、素人の我々には全く理解ができませんでしたが、とにかく”強度の強い治療” を行うということを繰り返し伝えられました。
CARE(ケア)化学療法 6クール
最初に抗がん剤治療が行われました。
AグループとBグループの抗がん剤を交互に繰り返して、合計6コース(5ヶ月間)行われる予定です。
Aグループ
- カルボプラチン
- エトポシド
Bグループ
- イホマイド
- エトポシド
抗がん剤をAとBグループに分けて交互に使うのは、腫瘍が薬の耐性を獲得しにくくするためらしいのですが、その時は”腫瘍が耐性を身に付ける?”といった感じで意味が判りませんでした。
開頭手術による腫瘍摘出
抗がん剤治療を終了した後、残存腫瘍が残っていれば(ケー君の場合「確実残っている」と言われました)、開頭手術で腫瘍を取り除きます。
腫瘍がある松果体は、脳の真ん中に位置するので、手術は非常に難しく手術が出来る医師も限られていると言われました。
ちなみにケー君は、脳神経外科 教授にして頂いたのですが、教授も「4年に1症例くらいです」と言われていました。
放射線治療
腫瘍を摘出した後、海外の治療計画では”大量投薬”でしたが、先に放射線治療の方がケー君の負担も軽いということで放射線治療が1ヶ月間ほど行われます。
まずは腫瘍が発生した松果体部分に54Gyの放射線をあて、その後に全脳全脊髄に30-36Gyの照射を行います。
Gy(グレイ)とは、単位質量当たりに放射線から受けるエネルギー量を示す単位のことです。
ちなみに放射線治療ですが、人が一生で浴びれる線量が決まっていて、ケー君の54Gyと言うのは、生涯で浴びれる放射線の最大値だそうです。
つまり、この治療後は放射線治療が出来ないというワケです。
抗がん剤 大量投薬
最後に行う治療は ”抗がん剤 大量投薬” で、通常の抗がん剤の場合は1回1~2時間の投薬を3日間行うというものですが、大量投薬の場合 ”チオテパ” という強度の強い抗がん剤を48時間打ち続け、これを2週にわたって行いました。
最後の大量投薬は、見ていられないほど壮絶でした・・・
治療を諦めないこと
ケー君の混合性胚細胞腫瘍は、標準治療が確立されていない治療の難しい小児がんです。
でも”標準治療が無いから予後が悪いから”と言って、諦める必要はありません。
水頭症の手術をしてもらった後、麻酔で眠るケー君の横で、手術を担当してくれた脳神経外科の先生が行ってくれた言葉が今も忘れられません。
担当医
諦めないでくださいね。お父さんとお母さんが諦めたら絶対にダメですよ。








