ヴェルディのアイーダは新国のゼッフィレッリ演出で観たことがある。2023年の再演は見逃したので、アイーダ自体が久しぶり。新国の演出は正直、凱旋の場面のエジプト再現ぶりには驚いたのは事実だが、作品としての印象は薄い。祝祭的な要素が強くなりしぎだったのかもしれない。

 

春祭のムーティによるヴェルディは自分の中でトッププライオリティ公演。マクベスの素晴らしさは今でも思い出す。今回のアイーダも本当に素晴らしかった!自分がやっとアイーダという作品に開眼できた名演。イタリア系でヴェルディ指揮者と呼べる人が減り、今後こんな素晴らしいアイーダはもう聴けないのではないだろうか、と思ってしまった。録音発売を求めたい

 

特筆はやはりムーティのコントロール。1幕から室内楽的な響きで、緊張感あるヴェルディ像。やはりこの人の表現の幅に感嘆させられた。セレモニー的な1幕終わり、2幕も音楽の構造を把握した形。無神経な凱旋とは別なもの、音楽が美しいが、迫力があるシーンとなった。金管のミスがやや惜しい。舞台にアイーダトランペットが並ぶ姿は壮観だった。

 

白眉は3幕、4幕。続けての上演だが、人間劇を堪能。新国でみたときはつまらない印象しかなかったのだが、アイーダの真骨頂はこちらだったのかと初めて理解。アイーダが3幕で嘆くときには、オーボエがトリスタン3幕のような使い方で、死へのあこがれを表現しているよう。実はトリスタンの影響を受けているのかもしれないと思い始める。

 

4幕は涙もの。アムネリスの悲哀、ラダメスとアイーダの死。そこにヴェルディは天界につれてかれるような美しいバイオリンを。ムーティが見事にオケを鳴らしていた。本当にピアニッシモ。美しすぎて感動。

 

歌手はラダメス、アムネリスが特に素晴らしい。ラダメスはこれぞイタリアンテノール。これから要チェック。アムネリスも最後のアリアが素晴らしかった。この2人は歌うだけで注目されるレベル。他の歌手もクオリティが高く、さすがムーティ。

 

ヴェルディの伝道師であるムーティにより、アイーダのよさに目覚められた。秋にやるアッティラも必ず行こうと決意

 

 

指揮:リッカルド・ムーティ
アイーダ(ソプラノ):マリア・ホセ・シーリ
ラダメス(テノール):ルチアーノ・ガンチ
アモナズロ(バリトン):セルバン・ヴァシレ
アムネリス(メゾ・ソプラノ):ユリア・マトーチュキナ
ランフィス(バス):ヴィットリオ・デ・カンポ
エジプト国王(バス):片山将司
伝令(テノール):石井基幾
巫女(ソプラノ):中畑有美子
管弦楽:東京春祭オーケストラ
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:仲田淳也