8/18(日)

 

野沢尚「眠れる森」と並行して坂元裕二「東京ラブストーリー」観続ける。やはり本作の赤名リカ役・鈴木保奈美の輝き方には時代を超えたものを感じる。坂元裕二の前作「同・級・生」で成美さんが演じた、言いたいことと言ってしまうことが延々とすれ違っていく名取ちなみが体現していたものが「逡巡の美」であるなら、赤名リカは「決然の美」である。「ねえ、セックスしよ」とストレートに言える女性像こそ90年代の女性には支持され、その曖昧な微笑に象徴される優柔不断さ故に、彼女とカンチの中を引き裂いてしまう有森也実演じる関口めぐみの方が当時多くの視聴者に嫌われてしまったというのは示唆的である(有森也実は素敵な女優さんだとは思うけど、「同・級・生」の成美さんほどにはスリリングな感情表現が求められず、古風な印象が強調されてしまったところに本作の彼女の不幸があったのかも…)。

この時代が選んだのは鈴木保奈美だったのかもしれないが、「同・級・生」の成美さんが体現していた「逡巡の美」が、92年の「素顔のままで」を経て、いつしか「決然の美」をも複雑に内包した唯一無二の「実存的な美」に至った特異点として94年「この愛に生きて」の成美さんは語り得るのではないか。

「語り得るのではないか」と問われても多くの人が困るだろうけど…。

 

家にクーラーがなく、辛いので佐久の自遊空間に6時間強逃避する。DMMで借りていたDVDで野沢尚脚本・鶴橋康夫演出「砦なき者」観る。2004年4月2日金曜日21:00 にテレビ朝日で本作が放映された二か月後に、野沢尚は自ら人生にピリオドを打ってしまう。終盤、役所広司演じる報道キャスターがカメラの前で視聴者に語り掛ける言葉が、あまりに遺言めいているし(原作にはないらしい)、ラストの黄泉の国から妻夫木君を迎えに来る役所広司の優しい笑顔に涙する。カリスマに操られる若者たちをゾンビのように記号的に描いているの今見ると時代を感じるが、それでも十分傑作だと思う。

本作の執筆時に自死を決めていたと考えると、このDVDの特典映像に入っている完成披露試写会で妻夫木君の横でニコニコしている野沢さんをどう思えばいいか、わからない。

 

8/19(月)

 

k-プラスで借りていたVHSで根岸吉太郎監督・野沢尚脚本『課長 島耕作』観る。う~ん…。ただ、島耕作(田原俊彦)を愛している一緒にこのまま働きたいと切々と告白するトヨエツのニュートラルな描き方はよかった。