浦江塾で淀川の漁業を聴きました | 晴耕雨読 -田野 登-

晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。


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10月6日の浦江塾で
大阪歴史博物館副館長の伊藤廣之氏による
「淀川河口域の河川漁撈」を聴きました。
伊藤廣之氏は『河川漁撈の環境民俗学―淀川のフィールドから―』
(和泉書院、2018年5月12日発行)を著されました。
写真図 『河川漁撈の環境民俗学―淀川のフィールドから―』表紙

当日は皆さん熱心に聴講し、
今まで知っているようで知らなかった
「淀川」というパンドラの箱が開かれ、
終了間際まで活発な質問が相次ぎました。

 

以下、ボクの興味で報告します。
何よりも明治39(1906)年開削の「*新淀川」が
人工河川であることを
再認識させられました。
   *新淀川:1965(昭和40)年、
      河川名称変更により「淀川」
自明の理を問いただす機会を得ました。

 

配付資料のPowerPoint版抜粋3コマ目に
「ヨシ原の形成」があります。
◆人工河川の中に自然が回復
 人工空間のなかにヨシ原・干潟が誕生
 ヨシ原の利用=

漁場、船の係留、放牧、ヨシの採取など

 

ボクは阪急宝塚線で週3日、十三の鉄橋を渡ります。
川と云っても葭原を伝うようなものです。
その場所は、確かに「人工空間」です。
二つの質の異なる環境の移行帯(推移帯)を
エコトーンといい、
その芦間を縫う小さな流れを「イリ」と漁師は
言うらしいのです。
繰り返し画面に映し出される「イリ」の写真、地図を
固唾を飲んで見つめました。

 

ここで伊藤民俗学は、
地図上でも無視されがちな
陸地と水面との「曖昧な場所」を発見しました。

その場所こそ、漁師にとっては
美味しい場所で、
他の漁師に盗まれてはならない
秘密の場所「ウチノゲブツ(米櫃)」です。

 

漁師と農民の気質「かたぎ」、
世界観の大きな違いは、そこにあります。
農民は「結い」で以て共同作業を組織します。
漁撈と云っても海洋漁業ならまだしも、
投機的ではあっても船団を組んで
組織的、企業採算で長期間、漁に出かけます。

しかし河川漁撈は小舟を出して
こっそり作業します。
高著の一節に次の記述があります。
◆仕掛けておいたカニカゴを引き揚げるのは、
 日が暮れてからである。
 それは他の漁師に
 漁場をみられないようにするためである

 

伊藤氏のお話の端々に
「今なら話せますが・・・・」を聞き取りました。
河川漁撈は、
動物相手の仕事です。
動物との知恵比べです。
飼い馴らされていない動物を「とる」のです。
と同時に人間相手の仕事です。
高著には、
親子の会話でも
「ジャコのことはジャコに訊け」なんです。
動物との対話を実体験することの
大事を教える言葉であると同時に
同業者同士が競い合い、
情報を秘匿する関係をも示す言葉とも
ボクは解釈しました。

 

なんだか、世知辛い現代社会と
重ね合わせての感想になりました。
伊藤廣之民俗学が廣まることを期待します。

 

究会代表
『大阪春秋』編集委員
大阪あそ歩公認ガイド 田野 登

 

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