浪花ふくしま奇観(3) | 晴耕雨読 -田野 登-

晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。

海老江の南桂寺さんの銀杏が倒れたとの
情報が入ったのは、
9月5日、福島区歴史研究会の末廣訂氏からでした。
たしかに、その前日の台風は、
久しぶりに本気の台風でした。

 

南桂寺界隈は、
昔の海老江の下町風情を残す場所です。
お寺のとなりは、風呂屋「龍美温泉」で、
突き当たりは、八坂神社です。
写真図1 南桂寺の角
     撮影:2018年2月18日

この海老江の南桂寺は、
春先、地名「鷺洲」の表記を求めていた時、
山号「鷺州山」を
再発見した寺でもあります。
写真図2 南桂寺の山号に「鷺州山」


     撮影:2018年2月18日

 

福島区の歴史を、あまり知らなかった頃は、
海老江に鷺洲とは何とも不思議なことと
思っていました。
何のこともありません。
海老江も浦江も、
明治の頃は鷺洲村(さぎしまむら)でした。
現在の「鷺洲(さぎす)」は昭和19(1944)年以降、
例えば「鷺洲上」とか「鷺洲中」といった具合に
町名に冠せられた名称を継承するものです。

 

早速、鷺洲の実家に帰ったついでに
末廣さんの案内で
南桂寺さんの銀杏を見舞に行きました。
台風の力は酷いものでした。
老樹を薙ぎ倒していました。
写真図3 南桂寺の境内
     撮影:2018年9月6日

 

ご住職は、気さくに本堂前の
庭先、郭公塚の背後の銀杏を
指し示されました。
風が境内を吹きぬけたとのこと。

 

東大阪のマンションでインターネットをしていた
さすが脳天気のボクでも
4日午後2時頃、神戸付近に上陸したとされる時間帯は、
風に煽られ看板が吹き飛ぶ音に
今回は本気やなぁと
多少の恐怖をおぼえたりもしました。

 

鷺洲、海老江に着いてみて、
妙壽寺の庭先の桜が倒れているのやら
どこの公園も木が倒れて道路に
はみ出しているのを目にして
改めてあの時の風の本気度を知らされました。

銀杏の倒木は、
新聞やテレビでも報じられてましたが、
目の辺りに目にして
自然災害をあなどってはあかんと思い知らされました。

 

この後、中之島図書館に調べ物に行きました。
帰りしなJR東西線・北新地駅まで
いつものコースを歩きました。
何と御堂筋の名物の銀杏が
無惨にも枝をへし折られているのを目にしました。
写真図4 御堂筋の名物の銀杏
     撮影:2018年9月6日

大阪市役所方面を振り返ってのショットです。
今年の秋は、毎年のみごとな銀杏の色づきを
眺めることができそうにないのでは・・・・
歳末のイルミネーションは大丈夫かな?

 

台風に遭ってみて、
あらためて都市・大阪における、
銀杏の木の存在に気づかせられました。
これもボクにとっての

大阪再発見です。

 

究会代表
『大阪春秋』編集委員
大阪あそ歩公認ガイド 田野 登