水都大阪の異界を覗きます(3) | 晴耕雨読 -田野 登-

晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。


テーマ:

今回も前回に引き続き
20年ほど前に書いた*拙稿を
 テキストとして話を進めます。
  *拙稿:「水都の異界を覗く」『まほら』20号、
      1999年7月、旅の文化研究所

 

長く置いておけば、値打ちが出るモノもあれば、
腐ってしまうモノもあるでしょう。
「水都の異界を覗く」の原稿は、永らく
ボクの記憶から遠のいていた
「異界」 という世界を思い起こさせ、
今、新たな解釈を試みさせます。

 

テキストは天王寺さんの亀の池に
たどり着いた場面です。

写真図1 四天王寺亀の池

 

今では、亀の池からでも
日本一の高いビルである、あべのハルカスが、
南に遙かに見わたせます。
手前には北鐘堂が見え、
年中、引導鐘が撞かれています。

 

テキストを引用します。
◇亀の池にはぎょうさん亀がいる。
  「お父さん、こんなちっこい亀に乗って
 竜宮城に行けるのン?
 浦島太郎もちっこかったン?」
 「(一寸法師やあれへんで)・・・・」

 

この息子との会話がホンマかどうかは
思い出せません。
おとぎ話の竜宮城からの駅「たてば」に
亀の池を見立てた上方落語「龍宮界龍の都」に
材を得ての会話です。

 

「たてば」という言葉を*『広辞苑』で確認しました。
*『広辞苑』:新村出編2008年『広辞苑第6版』岩波書店

◆たて‐ば【立場・建場】
 ①江戸時代、街道などで
  人夫が駕籠などをとめて休息する所。
  馬などの交代もした。
  明治以後は

  人力車や馬車などの発着所、または休憩所。

 

「たてば」は、人力車の発着所でもありました。
浪速区の町名に「立葉」(たてば)があります。
*『水都大阪盛衰記』の「ポンポン船襲撃事件」に
赤手拭稲荷に人力車夫が決起集会を開いたとあります。
 *『水都大阪盛衰記』:大阪府立文化情報センター
            新なにわ塾叢書企画委員会編著
            2009年、新なにわ塾叢書③

この赤手拭稲荷は浪速区立葉のすぐ東に位置します。
やっぱり「たてば」は
駕籠舁の人たちが客待ちをする場所なんでしょう。

 

テキストに戻ります。
◇そこに亀井堂があった。
 経木流しをしていた。
 「ここでお金払うて、
  井戸に漬けてもろたら極楽に行けるねン」
 隣にいたオジさん曰く
 「ほんまに賽の河原やなァ」と。

 

写真図2 四天王寺亀井堂

亀井堂は亀の池の南東にあるお堂です。
「経木お流し処」とあります。
堂内での法要の撮影は禁止されています。

 

経木には亡者の戒名が書かれています。
寺院奉仕者が井戸に漬けられた経木に
石造の亀の口から吐き出される
「霊水」を濯ぎます。
施主は経木の漬かった井戸を
神妙に覗き込みます。

「経木流し」と称するところからしますと、
亡者の霊を鎮送する儀礼であります。

 

井戸は異界の口であって
その底は諸霊が蟠る異界なのです。

 

究会代表
『大阪春秋』編集委員
大阪あそ歩公認ガイド 田野 登

 

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