晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。


テーマ:

 

今回も大阪府立中之島図書館所蔵『浪華奇談』を
取りあげます。
本ブログは、該書についての
拙稿「翻刻『浪華奇談』怪異之部」(『大阪府立図書館紀要』第36号
2007(平成19)年3月31日発行)に基づき、
適宜、加筆、削除しています。
「拙稿」につきましては、以下のアドレスで確認ください。
   ↓ここをクリック
https://www.library.pref.osaka.jp/uploaded/attachment/475.pdf

 

畜生道から生還した九良兵衛ですが
我が不徳の身に羞じいることになります。
テキストを続けます。
◇よつて人々に此のものがたりをなしけるが、
 馬の打ちたる礫(つぶて)の跡を見れば、
 白き毛を生じたるこそあやしけれ。
 夫れより九良兵衛、
 「まつたくかやうの界にいたるも、
 わが不徳ゆへ」と
 夫れより神儒仏の三道を学び、聖人と成りけり。

 

礫の跡は逃げ帰る時に
獣たちから
投げつけられた石によるものです。
この臨死体験を語った唐橋屋九郎兵衛は
東横堀で鉄屋を商う人です。
この後、神道、儒教、仏道を学んで
聖人になったというのです。
「聖人」とは、
もともと儒家のいう理想の人のことです。

 

テキストを続けます。
◇愚老按ずるに
 いにしへより犬の主を援くる例し
 和漢まま多し。
 必ず失ありとてむざと笞をくわふべからず。
 人すら大科を犯す。いわんや畜類おや。

 

「人すら大科を犯す。いわんや畜類おや」の章句は、
曹洞宗の宗典である修証義を思い起こします。
「畜類尚お恩を報ず、人類争(いかで)か
 恩を知らざらん」とあります。
もっとも、修証義は、
明治になって公刊された経典ですが…

 

テキストを続けます。
◇されば本朝のむかし、王代のころ、
 馬牛鶏犬のたぐひは
 人家に益ある生類なれば
 其の肉を喰ふべからす。
 又猱猴は人によく似たる獣なれば、
 六畜の外たりといへども、
 是れを殺害すべからずと
 告諭せられし古法あり。
 西土(もろこし)などとはちがひて、
 君子国の風俗仰ぎ営むべきにあらずや。

 

「猱猴」の「猱」も「猴」も「さる」です。
「六畜」は*『広辞苑』では、次の記述があります。
  *『広辞苑』:新村出編2008年
        『広辞苑第6版』岩波書店
  りく‐ちく【六畜】
  六つの家畜、
  すなわち牛・馬・羊・犬・鶏・豚の総称。ろくちく。

「是れを殺害すべからず」は
仏教の十重禁戒の第一に「不殺生戒」とあり、
生き物を殺すことへの戒めです。

 

本文に述べる
「本朝のむかし、王代のころ」からの
「告諭せられし古法」として
不殺生戒を挙げていますが、
はたして、古来、厳守されていたのでしょうか?
「牡丹」は猪の肉の隠語ですネ。
猪は「宍(しし)」であって六畜ではありませんが、
「桜」は、どうでしょう。
六畜のうちの馬の肉です。

 

不殺生を
「西土(もろこし)などとはちがひて、
 君子国の風俗仰ぎ営むべき」と
称賛しているのは、
『浪華奇談』著者の小倉敬典です。
近世後期の大坂玉造の開業医です。

畜生道を夢うつつに
体験した「唐橋屋九郎兵衛」の話でした。

 

究会代表
『大阪春秋』編集委員 田野 登

 

 

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