晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。


テーマ:

《『クチとオク―住まいの民俗学的研究の一視座―』を読む》の
続きです。
  *『クチとオク―住まいの民俗学的研究の一視座―』:
  森隆男、2017年3月30日初版発行
 『クチとオク―住まいの民俗学的研究の一視座―』清文堂

写真図 『クチとオク―住まいの民俗学的研究の一視座―』表紙

まず《第一章 列島の住まいにみるクチ―オクの秩序》から
紹介します。
この章は、この著作の導入であり、
概観することができます。
◇部屋の機能や祭祀から見たとき、
 クチには「公」「男性」、
 オクには「私」「女性」の属性が認められる。
 さらに本節で検討した通過儀礼という非日常的な日に、
 クチには「公開」、
 オクには「秘匿」「隔離」の属性も認めることができる。
 中間に位置する部屋の属性は曖昧で、
 クチ―オクの線上で両者のもつ傾向がある。

 

たいへん明解で端的な指摘であります。
この記事は南西諸島の住まいを取りあげたものです。
次の記述は、婚礼と葬儀の際の動線を挙げています。
◇…婚礼と葬儀は、
 母屋のオモテ側とウラ側を結ぶ線上で展開する。
 とくに葬儀では、茶碗酒の振る舞いや
 出棺の際に箒で掃き出す所作から、
 ウラ側からオモテ側への方向性が
 明確に意識されていることがわかる。

 換言すれば婚礼はクチからオクへ

 葬儀はオクからクチへ向かう秩序のもとに展開するといえよう。
 そしてオクに女性、クチには男性の属性が認められる。

 

「オクに女性、クチには男性の属性」という考え方は、
国語の意味としても受け入れられるもののようです。
*『日本国語大辞典』の、「おく【奥】」に
次の記事があります。
  *『日本国語大辞典』: 『日本国語大辞典』第二版 第二巻、
  2001年、小学館
◇おく【奥】(中略)入り口や表などから

   遠くはいった所をさしていう。   (中略)
 二  2  特に建物の内部で、外面から遠い部分をいう。(中略)
 (ロ)奥の間。家屋の内部で、外面から遠い部屋。
 口、表、店などに対して、

  家人、妻子などがいつもいるところ。

 

たしかに「奥様」は女性であり、
「大奥」と言えば、将軍家のプライベートな部屋です。

それではクチはとなりますと?
当該書の
《第二章 クチの諸相にあらわれた住まいの開閉》では、
前述のクチの秩序についての
記述はありません。
あるいは、今日、

クチが見えなくなっているのかもしれません。

この章の最終節《クチに関わる住居感覚の変容》に
次の記述があります。
◇さらに住まいで行われる年中行事や
 通過儀礼の際に顕在化する

  神や人の動線が曖昧になり、
 やがて記憶が消えると、
 設備をともなった可視的なクチだけが

  意識されるようになる。
 門神の祠を取り付け、
 魔よけの神札を貼った門長屋はその一例である。
 目に見えない来訪者

  とくに病気や悪霊に対する魔よけの装置も、
 門や玄関に集中することになる。

 

当該書の挙げる本来のクチは
門や玄関ではありません。
設備をともなった可視的なクチだけが
意識されていると指摘しています。
当該書においてクチが
薄明のなかに
輪郭を現すのは

 次章《第三章 オクと女性の領分》のようです。
以下、次回にまわします。

 

究会代表 
『大阪春秋』編集委員 田野 登

 

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

田夫野人(田野 登)さんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。