NHKの土曜ドラマ「夫婦善哉」寸感 | 晴耕雨読 -田野 登-

晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。

待望のNHKの土曜ドラマ「夫婦善哉」が始まりました。

原作にない味が出ております。

道頓堀界隈の賑わい。
その中にジャズ・トランペットの音色。
それに大道の三味線弾き。
何でもありの近代都市・大阪が表現されています。
華やいだ街角に翳りが感じられるのです。
原作に乏しいモダン都市大阪の相貌がちらつきます。


最初の場面は、道頓堀の華やぎから一転して
原作と同じく、蝶子の実家の
天麩羅屋から始まります。
貧しくても、めげることなく、
したたかに生きる家族が表現されています。
原作、テレビドラマとは別に
本ブログでは、ここまでを序言とします。


目を柳吉・蝶子に向けてみます。
柳吉役のそっけなさ、すげない表情に、クールでニヒルな感じが漂います。
その割に、原作・柳吉に感じた屈折やくぐもった凄さが感じられません。
原作の柳吉に感じた灰汁が抜かれているのは、いささか拍子抜けです。

蝶子への愛情表現も、こんなもんなのでしょうか。


大阪のボンボンがチャラチャラするのも可笑しいですもんね。
原作にあった緊張した時の吃音を差し控えた分、
どこかで原作柳吉に感じた「彫りの深さ」を示してほしいものです。
てて親からから勘当を言い渡された場面など、あんなものでしょうか?


いったい、この男の「過去」には何があったというのでしょう。
原作からは、柳吉の生いたちを知ることはむつかしい。
ドラマは、この先も、「過去」を語らないことでしょう。
きっと「過去」など、どうでもよいことなのでしょう。


写真図1 「夫婦善哉」創元社本表紙
     大阪府立中之島図書館所蔵


晴耕雨読 -田野 登-


いっぽうの蝶子の情の濃さは、どうでしょう。
これの方は、抑え気味に演じられていてよろしい。
これから先、度重なる柳吉の裏切りが控えているだけに
蝶子の心の乱れが見物です。

それでも、例の玉子入りカレーを、一人、口にしたあとの
金を使い込んだ柳吉をたたきのめす痴話げんかは、
これから先の二人を予見させます。
そこで第1話は終わりました。


舞台は大阪の近代です。
「近代」とは、どのような時代だったのでしょうか?
現代に生きる者は、「近代」を、どのように表現するのか、
興味津々です。


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2013-05-29 15:01:49