晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。


テーマ:

 

今回も大阪府立中之島図書館所蔵『浪華奇談』を
取りあげます。
本ブログは、該書についての
拙稿「翻刻『浪華奇談』怪異之部」(『大阪府立図書館紀要』第36号
2007(平成19)年3月31日発行)に基づき、
適宜、加筆、削除します。
「拙稿」につきましては、以下のアドレスで確認ください。
   ↓ここをクリック
https://www.library.pref.osaka.jp/uploaded/attachment/475.pdf

 

今回は「蝦蟇(ひき)」を取りあげます。
◇玉造伊勢町武家の縁側に
 盆中に乾菓子(ひがし)を盛り置きけるが、
 風もなきに自然と前栽の方へ飛びけり。

 

舞台はお城の南東の
武家屋敷の縁側です。
縁側はウチとソトの境目です。
時間は昼間でしょう。
ハクセンコウのような干菓子が
風も無いのに
前栽の方に引き寄せられるのです。

 

◇家内の人是れを見てあやしみ
 ひそかに菓子の行末を見るに
 庭上に大ひなる蝦蟇(ひきがえる)ありて、
 居ながら口をひらき
 是れを喰ふにてぞありける。
 
この不思議は蝦蟇の仕業です。
蝦蟇(ひきがえる)を
*大阪ことばでは「おんびき」と言います。
  *大阪ことば:牧村史陽1974年
       『大阪ことば事典』講談社学術文庫
*『広辞苑』の「ひきがえる」には
次の記述があります。
 *『広辞苑』:新村出編2008年
       『広辞苑第6版』岩波書店
◆カエルの一種。体は肥大し、四肢は短い。(中略)
  動作は鈍く、夜出て、舌で昆虫を捕食。
  ヒキ。ガマ。ガマガエル。イボガエル。(以下略)

 

「夜出て、舌で昆虫を捕食」とありますが、
テキストでは干菓子を喰らったのです。
おそらくは、昼日中のことでしょう。
それが怪異なのです。
「ガマ。ガマガエル」とあります。
『広辞苑』の「がま‐ぐち【蝦蟇口】」には
次の記述があります。
◆(開いた形がガマの口に似るからいう)
  口金のついた金入れ。

 

蝦蟇(ひきがえる)の開いた口の
大きなさまを引いています。

テキストの続きです。
◇これは煉気(れんき)の術にて
 蟇(ひき)ばかりにもあらず、
 蟒蛇(うわばみ)など
 居ながら獣を挽き寄せのむも同じ。

 

精錬の「錬」は「煉」からでしょう。
粗金属を火でねりあげるのです。
「煉気の術」とは、
気合いを入れて集中する精神療法です。
蟒蛇(うわばみ)は大蛇です。
この大蛇も
「居ながら口をひらき
 是れを喰ふ」のは、
精神の集中の効果と見ています。

 

テキストの続きです。
◇あるひは鴨居の上を行く鼠を
 下より猫の白眼(にらみ)で
 落し取るも似たる事なり。

 

睨みを利かすだけで、
ネズミを捕らえる
「猫の白眼(にらみ)」についても
この「煉気の術」によるものと
解釈しています。

テキストである『浪華奇談』「怪異の部」の記述からは、
東洋医学にも通底する「気」の思想が
窺えます。

 

究会代表
『大阪春秋』編集委員 田野 登

 

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今度の浦江塾では室戸台風の話をします。
写真図1の浦江塾表紙

 

今日、住職からハガキが届きました。
写真図2 浦江塾の案内ハガキ

以下、文面。
一部、書き換えています。
 郷土誌を見直す『浦江塾』のご案内
 今年は台風が次々とやってきます。室戸台風は
田畑等には壊滅的な被害を与え、地域は様相を一変して、
工場地帯、都市へと変換していきました。大阪近郊の
都市化への成り立ちの一例です。そして、その地域に
伝承されてきた民俗習俗はどうなっていくのでしょう。
 日時 11月4日(土曜日)午後7時より9時迄
 場所 妙壽寺(福島区鷺洲2-15-10)駐車可
 テーマ 「台風被災による町の変化」
       ―農村の都市化の一事例―
        大阪民俗学研究会代表 
         文学博士 田野 登先生

 

以下、田野による書き込み。
実は、この講演は日本民俗学会の今年の年会で
「台風により流失した神社の祭祀
 -室戸台風の前と後の大阪湾沿岸地域の一事例-」なんです。
学会発表を済ませましたので、
どないなとたっぷりと話せます。

 

西大阪の聞き書き調査をしておりますと、
台風の話題がでます。
今回の事の発端は、
先々月、浦江塾で話していただいた
大和田郷土史会・会長の金田啓吾氏が書かれた
ハンセン病療養施設「外島保養院」
(『大和田郷土史会報』28号)の記事が
あることを妙壽寺住職から知らされたことです。
昨夏、訪ね歩きました。

 

今年7月、西淀川図書館で「島洲の街・大阪」を
講演する際、館長さんに「外島保養院」を
問い合わせ、外島保養院跡地周辺を再訪しました。

そこで、ハッと気づいたのが
外島保養院跡地の位置よりずっと島の上、
中島一丁目に祭祀される「三社大明神」の
存在でした。
外島保養院が被災した室戸台風の時、
布屋の町ごと、オヤシロも流失した三社大明神が、
水が引いた後、石の鳥居、常夜燈などが、
現在地に移し祀られているのでした。

 

まず真新しい三社大明神の狛犬に刻まれた
お名前の方を訪ねました。
その方は室戸台風の時、唯一、
奇跡的に流失を免れた家の
家主のお孫さん(以下「当主」)でした。
昭和25年生まれの当主にとって
昭和9年の室戸台風は未生の過去の出来事です。
その当主は、貴重な、被災時の写真、毎日新聞の記事を
保存しておられました。

写真図1の浦江塾表紙は
奇跡的に流失を免れた家の写真を背景にあしらいました。

 

当主に
三社大明神の現在の神主を尋ねましたところ、
中島の鎮守・五社神社の宮司さんを紹介されました。
以下は当日、お話ししますが、
そんな中、室戸台風以前の絵図が
近くの小学校の校長室に飾られているとの連絡がもたらされ
早速、出かけた次第です。

現在、大半が工業団地になっている
西淀川区中島が牛と舟を有する
富裕な農村であったことを知りました。
PowerPoint版を内覧された
住職の案内ハガキにある
「室戸台風は
 田畑等には壊滅的な被害を与え、
 地域は様相を一変して、
 工場地帯、都市へと変換していきました」とは
この事実を表現されたのでしょう。

 

福島区住民にとって脳裏に焼き付く台風は、
何でしょう。
昭和9年の室戸台風はいかがでしょうか?
ボクは亡き母(大正12年生)から
鷺洲小学校の木造校舎が
風で倒され犠牲者が出たことだけは
聞かされております。

 

いつものとおり、
手続き不要、
参加費無料。
ご参加はお早めに。
今回は、特に台風や災害に関心のおありの方と
二次会で情報交換したいものです。

 

究会代表
『大阪春秋』編集委員 田野 登

 

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2017年10月29日(日)
大阪あそ歩で
海老江・鷺洲コースでガイドします。
新情報を交えながらコースのご案内します。
写真図1 海老江・鷺洲コースマップ


まずは集合場所。
阪神本線野田駅。
写真図2 阪神本線野田駅

改札口は2階です。
JR東西線「海老江駅」、地下鉄「野田阪神駅」と
直結しています。

 

写真図3 石畳路地

2017年10月29日(日)
大阪あそ歩で
海老江・鷺洲コースでガイドします。
新情報を交えながらコースのご案内します。
写真図1 海老江・鷺洲コースマップ


まずは集合場所。
阪神本線野田駅。
写真図2 阪神本線野田駅

改札口は2階です。
JR東西線「海老江駅」、地下鉄「野田阪神駅」と
直結しています。

写真図3 石畳路地

この道を
そーろっと抜けてから、
「石畳路地の歴史」を語ります。

 

中海老江交差点を渡り
いよいよ海老江の中心にさしかかります。
写真図4 鷺洲山南桂寺山門

山門前に「大坂道」の道標があります。
「大和田街道・梅田街道」の元の道とのことです。

水郷・海老江には旧家が見られます。
そんな中、
俳人・松瀬青々寄寓地に立ち寄ります。

 

海老江の昔ながらの町並みを抜ければ
建設中の海老江です。
写真図5 阪神・野田駅前新都市開発プロジェクト

煉瓦造りの大日本製薬工場の跡の
過去→現在→未来を話します。

写真図6 シオノギ研究所跡の現在

ここも高層マンション「木漏れ日の丘」が建設中です。
このあたりで、
元の地形「フケ」を話すことになるでしょう。

 

「聖天通」のゲートが見えてきました。
聖天さんのシンボルの一つの
巾着があしらわれています。

写真図7 聖天通のゲート

聖天さんは、男女和合の神様です。

写真図8  聖天さんの山門

山門に吊された提灯の図柄に注目!
右が巾着、左は?
二股大根です。
浦江切っての名所です。
松尾芭蕉の杜若塚など
たくさんの見所や
神霊スポットがあります。
今回は杜若塚建立者の
松井三津人の句集にある
歌枕・田蓑の島を話そうかな?

 

聖天さんから解散場所のJR大阪環状線福島駅までは
売れても占い商店街「福島聖天通商店街」を行きます。

写真図9 福島聖天通商店街ゲート

かつての水郷・海老江から
今やグルメの商店街まで
バラエティに富んだコースです。

詳細、お申し込みは
大阪あそ歩事務局まで
   ↓ここをクリック
https://www.osaka-asobo.jp/course227.html

 

究会代表
『大阪春秋』編集委員 田野 登

 

 

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今回も大阪府立中之島図書館所蔵『浪華奇談』を
取りあげます。
本ブログは、該書についての
拙稿「翻刻『浪華奇談』怪異之部」(『大阪府立図書館紀要』第36号
2007(平成19)年3月31日発行)に基づき、
適宜、加筆、削除します。
「拙稿」につきましては、以下のアドレスで確認ください。
   ↓ここをクリック
https://www.library.pref.osaka.jp/uploaded/attachment/475.pdf

今回は「龍巻」を取りあげます。

 

◇去りし文化十一年八月
 予難波を西の方へ出船す。
 ふと北の方を見るに
 黒雲一群、
 予が乗れる船方へ降り来るを見る。

 

「難波を西の方へ出船す」の際の
「北の方」とは、
どの方面のことでしょうか?
浪華の北東となりますと、
中津川、神崎川河口付近でしょう。
『摂陽見聞筆拍子』には、
中津川河口に近い海老江村(福島区)に
「鯉の昇天の事」の記事があります。

 

◇明和元年六月二日、
 海老江村の古池より、
 鯉魚昇天し、
 其隣村の民家を崩し、田畑を損ず

 

登竜門は鯉が急流を登って龍になる
故事に基づくものですが、
この海老江の古池で
鯉が昇天する様と見たのは、
「龍巻」と同じ現象の
陸上での被害を記述したものでしょう。

 

◇船頭あわただしく下知して、
 「すは龍巻なり。
 用意の物を火中せよ」と罵る。

 

火中に投げ込む「用意の物」とは、一体、何でしょう。 

◇程してあれ、
 水主其の一物を取出し、 
 火中に投じけるが、
 其の悪臭はなはだしく然るに、
 かの雲気今や船に迫ると見へしに、
 忽ち翩飜として東方へ奔走して
 初めて安穏になりにき。
 
「其の一物」は燻べたところ、
その異臭が堪らなく、
黒雲が退散したというのです。
邪鬼を祓うには、異臭、騒音などが
功を奏します。
龍を撃退してしまったのです。

 

◇乗合の旅人船頭に様子を尋ねけるに、
 船頭いふやう
 「只今の黒雲は龍巻となづけて
 龍の海上を往来せるにて、
 もし此れの船のあたりへ
 近づくときは
 いかなる大船にても
 空中に釣り揚ぐる事ままあり。

 

「只今の黒雲は龍巻となづけて」とあります
「龍巻」を*『広辞苑』で確認します。
    *『広辞苑』:新村出編2008年『広辞苑第6版』岩波書店

たつ‐まき【竜巻】
 (その形が、竜が天空に
 昇るさまを想像させるのでいう)
 空気の細長い強い渦巻の一種。(中略)
 風速は毎秒100メートルを超えることもあり、
 海水・漁船・砂塵・家屋・人畜などを
 空中に巻き上げ、被害を与える。
 海上竜巻と陸上竜巻とがある。

なるほど著者の記述にある
「いかなる大船にても
 空中に釣り揚ぐる事ままあり」も然り。

 

◇それゆへ
 人の毛髪を薫ぶれば
 龍は神物にて
 この臭気を忌みて
 避け去るものなり」と語りし。

 

「其の一物」とは「人の毛髪」でした。
邪神も煙たがる悪臭は
人毛を燻べた時の臭いでした。
この話からは
呪術の世界がかいま見えます。

 

究会代表
『大阪春秋』編集委員 田野 登

 

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今回も大阪府立中之島図書館所蔵『浪華奇談』を
取りあげます。
本ブログは、該書についての
拙稿「翻刻『浪華奇談』怪異之部」(『大阪府立図書館紀要』第36号
2007(平成19)年3月31日発行)に基づき、
適宜、加筆、削除します。
「拙稿」につきましては、以下のアドレスで確認ください。
   ↓ここをクリック
https://www.library.pref.osaka.jp/uploaded/attachment/475.pdf

 

今回は「小坊主」を取りあげます。

◇予が第三の男子
 膝行松(いざりまつ)の辺りにおいて
 夜中、小児一人たたずむを見る。 

 

以下の話は著者の三男坊の実見によるものでしょう。
膝行松が植わっている所となれば
お屋敷でしょう。
時は夜中。
この小児とは何者でしょう。

 

◇傍(そば)近くすすみて見れば、 
 知れる者の子なり。
 此方より詞をかくれども
 かの童べ返答もなさで
 ただ笑ふてばかり居る。 

 

知り合いの子どもだと思って 

声をかけても
笑っているだけとは
ちょっと変です。

 

◇然るに其の衣服の嶋筋
 鮮明(あざやか)に
 あたかも白昼(ひる)のごとく見ゆるにぞ。

夜中なのに
着物の柄まではっきり見えるとは

これまた不思議ですね。
幻視なのかも?

 

◇「是れ父が平生告る所の狸の怪なるべし」と
 匕首を抜うちに斬つけけるに、
 少しは手ごたへもせしかども
 忽ち狸の本相を顕して
 堵墻(としょう)に掻きのぼり
 逃亡しけるとなり。 
 
「父」とは著者のこと。
著者は、常日頃、狸の怪異を語っていたのでしょう。
三男坊は、それと見て
果敢に短刀で斬りかかります。
相手は多少の抵抗をしたものの、
狸の正体を現して
築地塀を駆け上がって
逃げていったという。
ここまでが三男坊の見聞です。
この見聞への著者のコメントが記されます。

 

◇予謂へらく
 「白虹、
 鞘を抜事、今少しおそくば
 大白眼を見るべし」と。

 

この出来事の時は夜中。
著者は「白虹」と断じました。
「白虹」とは、霧の中などで見える
妖しげなるモノ。
まさに小坊主です。
著者からしますと、
三男坊が
危ういところで
斬りつけて狸からの難を逃れたとホッとしています。
それにしましても狸に化かされて
知り合いの子どもに
冷淡な目を向けるところでした。

 

狸の出没した場所は、
今回は上町の武家屋敷の物陰で、
時間は真夜中でした。
近世都市において
怪異が語られる時空間から
ボクはしばらく、目が離せません。

 

究会代表
『大阪春秋』編集委員 田野 登

 

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