日曜日に 髪を切って来た。
髪は1ヶ月に1センチ伸びる
ってことは
2年分くらい髪と  
さよならしたことになる。
女の髪には 
念がこもるそうで
私は 過去2年間分の想いを
髪と一緒に捨てた。
運気的には 髪を切るのは
良いことなんだそうで
これは たぶん
古いものを捨てたから
新しい運気が入ってくるって
意味なんだろう。
お馴染みの美容師さんに
カットしてもらいながら
その人は すごく話上手な人だから
指先も 休みなく動くし
おしゃべりの方も
だんだんと ヒートアップしてきた。
一体 何の流れだったか
いつしか話題は
この美容室に出入りしている
若い男性の業者さんのことになっていた。

「アタシのことを怖がるのよ、その人」

40代後半のその美容師さん
たしかに
サッパリした性格で
女性にしては ハッキリ物を言うから
ちょっと
怖い印象を与えるかもしれないが
根っから明るくていい人。

「受付にね、若い女の子がいる時は
ニコニコしてうれしそうに
話しているけど
その子は どの商品を買うか
決定権ないから
アタシを呼ぶのよ。
んで、アタシが行くと
その業者さんは コロッと態度を変えるの。
急にうつむいて 
オドオドとして 声も小さくなって。
新商品を売りに来てるから
従来のものと
どこが違うのか説明してよ
って言っても
しどろもどろなの」

「本当に怖いんですね」

「アタシ 怒ったことなんか
一度もないのよ〜
いつも優しく対応してるのに」

「ですよね」

本当に その美容師は
人に怒鳴ったり 
偉そうな態度を取ったりする人ではない。

「一度ね、前に一度だけ
ちょっと それはおかしいんじゃない?
ってことがあって
その時 初めてクレームをつけたの。
あ、それは別の業者さんによ。
その時のウワサが広まったのかな」

「何があったんですか?」

そう聞いたから
その時のことを
詳しく教えてくれた。
話は
美容師さんが使う「ハサミ」のこと。
私は 美容師さんは
もちろん キチンとした
高いハサミを使っていると思っているが
値段は 高くても
せいぜい
2〜3万円くらいだろうと思っていた。

「アタシね
ある業者さんが売りに来た
15万円のハサミを買ったの」

じゅ、15万円、、!!  (゚ω゚)

「それでね
その買ったハサミでカットしてみたら
切れ味が悪くて
全然 切れないの。
指で こうして
切りたい髪を押さえるでしょ。
それで 切ろうとしたら
髪の毛が ハサミから
ヨレッて感じで 逃げるのよ。
もう 全然うまく切れないの」

「こんなハサミ
とてもじゃないけど使えないと思って
売りに来た業者さんに 
クレーム言ったら
納得のいく説明ができなくて
そしたら とうとう
そのハサミの製造元の社長さんが
直々に
ここまで 説明に来たのよ」

「それで
事情を話すと その社長さん
なんて言ったと思う?

『それは 
あなたのカットの腕が悪いせいだ』

って言ったの。
こっちの腕のせいにするのよ?
信じられる?
だから アタシ言ったのよ。

『いつも通りに
力を抜いてカットしてますけど?
それでも このハサミは
切れないんです』って。

それで いつも通りに
カットしてみせても
全然 こっちの言うことを信じないの。

どんなに説明しても
『腕が悪い』って言って
一歩も引かないの」

「それは ちょっと酷い話ですね。
同じように切ってるんだから
腕のせいじゃないですよね。
だいいち
その社長さんにとっては
美容師さんは 
お客さんなんだから
その態度は どうなんですかね。
もう少し 言い方がありますよね」

「でしょ?
もう 何言っても
こっちのせいにするから
腹が立って

『じゃあ もういいです。
返品しなくても結構です。
ちゃんと代金は払います。
その代わり
このハサミは 捨てますから』

って言ってね
その社長さんの目の前で
本当に ハサミをゴミ箱に捨てたの」

15万円を ゴミ箱に、、(O_O)

どうやら その一件から
その美容師さんは 怖い人だと
業者さんの間で 
ウワサが 広まったようだ。

「今はね
一生 使えるって定評のある
メーカーさんのを使ってる。
これ、このハサミ。
18万円したけど
一生モノだから
すごく使いやすいの。
だから 若い子にも勧めてて
皆んな 分割払いで買ってるよ」

「本当に ハサミって高いんですね」

「もっと高いのもあって
この前なんか
50万っていうハサミを見たよ。
ハサミに ダイヤの飾りが入ってるの (笑) 」

「すごいですね。ダイヤ、、」

上には上があるんだな。
それにしても
美容師さんの腕のせいにした
その社長さんと
その人の元で作られた
切れないハサミ。
私は その2つには
共通点があると思った。