2024.9.7 大曾根家の朝(1946年) | -

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●大曾根家の朝(1946年) 監督:木下恵介

主な出演:杉村春子 長尾敏之助 徳大寺伸 三浦光子 大坂志郎 小沢栄太郎 賀原夏子 増田順二 東野英治郎

 

 

母・房子(杉村)と子供たちの大曾根家は、亡き夫の影響から家族全員がリベラルな気風を持つ。昭和18年のクリスマス、長女・悠子(三浦)の婚約者・實成(増田)の出征を祝っていた最中、長男・一郎(長尾)は自身の書いた論文がもとで思想犯として逮捕される。兄の逮捕により、陸軍大佐である叔父の大曾根一誠(小澤)は、悠子と實成との婚約を一方的に破棄するばかりか、自分の地位のため悠子を軍需工場の社長の息子との縁談を強いる。

 

 

そんな中、画家を志す次男・泰二(徳大寺)が召集を受け出征。さらに三男・隆(大坂)は、海軍予備学生を志願する。

空襲で自宅が焼けた一誠は妻の幸子(加原)と大曾根家に身を寄せるが、居候でありながら我が物顔で振る舞う。さらにはいち早く敗戦を知り、大量の食料品や物資を大曾根家に運び込む恥知らずな一誠に対し、ブチ切れた房子は、「この家から出ていけ」と怒鳴る。

次男と三男は返らぬ人となったが、戦争が終わり、實成の復員と一郎の釈放が、大曾根家にとって明日への希望の光となる。


 

戦意高揚映画として製作された『陸軍』(1944年)が軍部から批判されたことで、映画界を干されていた木下恵介監督が戦後初にメガホンをとった作品。

その無念と戦争や軍部に対する怒り、さらには日本のあるべき姿を、以下の八巻画伯(東野)の台詞に込められている。

「日本なんて国はつまらん野心なんぞ起こさんで、穏やかな内福な国として立っていけば良いんだよ。風景が奇麗なのだから、観光事業でも盛んにしてね。 (中略) 軍需生産に使っている電力を農村に振り向ければ、収獲物はかならず倍化できる。それによって国土の狭さを補うのが眼目だ」

現代の日本人に痛感してもらいたいメッセージである。

 

ところで、實成役を演じる増田順二さん。前に紹介した木下作品『わが恋せよ乙女』にも出演した。あまり目立たない俳優さんだが、中村登監督や小津作品でも良い役を演じている。

個人的にはテレビドラマでよく見かける印象があり、いま衛星放送でやっている松原智恵子さん主演ドラマ『別れて生きる時も』で大学生の父親役で登場する。