みなさま

 

試験まで、残すところ、あと1週間ほどとなってまいりました。

 

さて、最後、刑法・刑事訴訟法についてやるべきことをお話してまいりましょう。

 

【刑法】

刑法についても、ここ最近は、「易化」傾向にあると思います。「処理ゲー」化していますよね。

平成27年は、よくよく考えると質量ともになかなかの食べ応えのある問題でしたが、28年は一気に易化、29年はその揺り戻しも考えられたところですが、個人的には27年よりも簡単で、28年よりもほんのちょっとだけ難しい、そんな感じですね。なので、やっぱり今年も「処理ゲー」的な問題が出るのではないかなと思います。

そして、処理ゲーというのが正しいとするならば、やはりここで一番大事なのは、「最後まで書ききる」こと。形式的途中答案も、実質的途中答案も許されない科目です。基本的なことを、最後まで、よどみなく処理しきる。ここ2年の再現答案を分析していると、一つ典型論点を落としてしまうと、一気に評価が下がってしまっていることは明らかです。

個別指導やラウンジ指導において、刑法で途中答案を作成してしまった方にその理由を聞いてみると、「知っている論証を書いていたら、後の方の犯罪を処理する時間が無くなってしまった」とか、「論証で点数を稼ごうと思った」などという回答が返ってくることがあります。なるほど人は、自分の覚えた論証を完璧に書きたくなります。ただ、そのために、事実を捨象したり、検討する犯罪を落としたりして、途中答案を作ることは許されません。メイン論点について完璧な論証で、完璧な三段論法を展開しているけども、途中答案である答案と、メイン論点についての論証はちょっと不十分だけども、少なくとも判断枠組みをしっかりと定立し、事実を分析、検討し、最後まで書ききっている答案であれば、やはり後者の方が点数が伸びるでしょう。少なくとも刑法については、そういう採点表におそらくなっているのではないかと思います。

実際、研修所における検察起案では、犯罪の成否を検討させる問題が出題されますが、法解釈をガンガン書いているヒマもスペースもありません。淡々と、判例の基準や、定義を正確に示し、証拠から認定できる事実をそれにあてはめるという能力が求められます。

ただ、書ききるといっても、刑法では上記のように、メイン論点と、そうでない論点があります。メイン論点かそうでないかは、問題文の記載分量と比例する関係にありますので、これも意識しましょう(刑法の問題文では、段落ごとにナンバリングが付されますので、それも活用しましょう)。メイン論点では、事実を問題の所在として示し、(できれば理由付けを示して)判断枠組みを定立し、その判断枠組みに問題となる事実をあてはめて、結論を出す。答案の中で、このようなことが2か所くらいできれば、法解釈能力は備わっていることは採点官に伝わるので、もう十分だと思います。

あとは、とにかく最後まで書ききるためのマネジメントを確立することです。そのためにこれから確認することは、論証の理由付け部分ではなく、判断基準の部分について正確におさえること、それから、これまでやってきた過去問や模試を用いて、15~20分くらいで答案構成をし、何を、どこに、どの程度書くのかまで決定できるようにしておくことです。

刑法の書き方等については、色々なところで言い尽くされているものと思いますので、あえて短くまとめますが、意識していただきたいことは、①検討する犯罪を間違えない(問題文から読み取れる法益侵害に対して、想定できる最も重い犯罪を検索し、行為を分析していく。なお、常に正犯→共犯という流れで検討を行うべきこともここに含みます)ことと、②検討する犯罪が決まったら、その「すべての」要件充足性を検討する。条文で枠組みを作るということですね。これだけ意識しているだけで、まったく点数が変わってくると思います。

そして上記のように、これが、司法研修所の検察起案で求められる能力です。

 

まとめると、刑法についてこれから確認しておくべきことは

①論証部分の【判断基準】部分(規範・定義部分)をまずは確実におさえる。

②とにかく最後まで書ききることを最優先のテーマとして、今までやってきた過去問や模試の答案構成を行う。

こんなことが必要であり、かつ、それで足ります。

 

【刑事訴訟法】

刑事訴訟法については、司法試験開始から見て、もっとも出題傾向が変わっていない科目なのではないかと思います。

出題される分野も大体決まっており、出題のされ方も大体固まっているのではないでしょうか。

刑法と比べると、処理ゲー感はあんまりないと思います。むしろ、設問から、問われていることに絞りがかけられ、これに向けて、超基本的な法律論の理解を前提に、事実をしっかりと用いて説得力のあるあてはめをすることができるかが問われていますね。刑法とは異なり、超基本部分の法律論については、ある程度丁寧に書いた方が望ましいと思われます。また刑法のメイン論点のあてはめと、刑訴のそれでは、後者の方が2倍近く長くなることもあるでしょう。ちょっと、刑法とは求められるものが異なるといってもよいかもしれません。

まず捜査については、ここ5年を見ていても、若干の応用部分はあるものの、もう、ストレートに、「百選掲載レベルの判例を知っていること前提で行くよー!」という問題が出ています。このメインストリームに乗っかることができないと、著しく点数が下がってきてしまいます(余裕のある方は、ここ3年でよいので、問題と出題の趣旨をざっと読んでみてください)。そのためにはやはり、判例百選レベルの重要判例の【事案】と【判旨】をしっかりとおさえることが必要です。さらにこれを前提に、「捜査の必要性」についてのあてはめを考え抜く練習をしてみてください。

ここで差が出ています。何気なく、「必要性」なるものを考えていませんか?個別指導やラウンジ生に対してこの部分を詰めていくと、「全然意識せずに漫然と必要性を考えていた」という人が非常に多いですし、再現答案を見れば一発で分かってしまいます。

捜査の必要性の論述は、すごく簡単に言うと、「ある被疑事実についての被疑者を、公訴提起して99.9%有罪に持ち込むためには、どんな証拠が必要であり、問題となっている行為は、そのためにいかなる意味を持っているのか」ということを具体的に考え抜かないと、説得力を持ちません。なお当然ですが、行政警察活動の場合の行為の必要性は、捜査の必要性とは少し違った観点から考えることが求められます。

例えば平成28年の設問1。問題文中「2」と「3」の留め置きが問題となっていますが、何のために「留め置き」を行っているのか。2の留め置き(職務質問が先行している)と、3の留め置き(令状が先行している)で、微妙にその必要性は異なりますし、実はそのことは問題文に書かれているのです。平成26年、27年も併せて確認をしてみてください。

次に訴因、伝聞については、受験生の多くが苦手分野としている部分です。ただ、伝聞については、再現答案を見ている限り、多くの人がマスターしてきているのではないかなとも思っています。逆に言うと、例えば伝聞と非伝聞を正当な理由付けもなく間違えてしまうと、著しく点数を落としてしまいます(28年参照)。

伝聞についても、分析手法はもう語りつくされているでしょうから、ポイントのみ。

①伝聞とは、320条以下の条文の要件充足性に過ぎない(=全ての要件検討を絶対に忘れない)ということを意識する。

②伝聞か非伝聞かの理解が問われているので、公訴事実・当該審理において形成された争点・立証趣旨・要証事実・証拠構造等を正確に分析し、これを答案に示しつつ、内容の真実性が問題となっているのか、供述の存在自体のみで足りるのかについて説得力ある理由付けを示す。

これだけです。伝聞法則・伝聞例外の趣旨を書いて満足という答案がかなり多いです(なぜでしょうか?笑)。もちろん、司法試験ですから、法の趣旨を示すことに点数がないとは言いませんが、これで満足して、上記①②の部分を書かないと、点数が伸びませんので、注意。

なお、伝聞については、過去問が最高の演習書だと思います。

 

最後に、公判前整理手続。これは、司法研修所でもかなりの力を入れておりますし、予備試験では刑事実務基礎科目で4年前から毎年出題されています。司法試験でもチラッと登場しだしているので、一応手続の流れは押さえておきましょう。

 

ということで、まとめると

①判例百選レベルの事案と判旨(理由付けと判断基準部分)を正確におさえる

②捜査については、過去問や判例百選を使って、もう一度捜査の必要性部分のあてはめをチェックする

③伝聞について、過去問を用いて、伝聞か非伝聞かの結論と、その判断過程を説明できるかチェック。

④公判前整理手続の条文についてチラ見

 

こんなところでしょうか。

 

これから試験までは、体調管理だけはしっかりと行いましょうね!体調管理も、試験対策の中に含まれます!

 

それでは今回はこの辺で!