青年漫画家の巨匠山本直樹先生の佳作『ビリーバーズ』が城定秀夫監督の手によって映画化されたというので新宿まで観に行ってきた。
正直、原作の『ビリーバーズ』はもう20年くらいも前に読んだ漫画で、「無人島の話」+「なんかすごいエロい」ということくらいしか覚えていなかったが、城定秀夫監督の作品はつい最近公開していた『愛なのに』が面白かったので、期待に胸を膨らませていた。
STORY
簡単に内容を紹介すると
カルト宗教団体の信者である3人は、議長、副議長、オペレーターとしての役割を担い無人島に出向し共同生活を送ることになる。
3人とは、中年男性の議長と20代女性の副議長、そして青年のオペレーターだ。
その無人島では教団の教えを忠実に実行し、奇妙な会話や儀式を行いながら、魂の浄化を図る生活をしていた。
ある時そこに漂着したクルーザーの乗組員に、副議長が犯されそうになり、議長がその者たちを殺してしまう。
その事件のあと、3人は性への欲望に抗えなくなり、徐々に共同生活のバランスが壊れていくという話だ。
カルト集団は、1995年の松本サリン事件を起こしたオウム真理教や1978年ジム・ジョーンズの集団自殺事件を連想させる。映画公開のタイミングで、世界平和統一家庭連合 (旧統一教会)の話題が上がっているのも、奇妙なめぐり合わせだと言う人も多い。
このような突飛なシチュエーションなので、なかなか感情移入して観れない系のストーリなのだが、そこは3名の役者の突出した演技が特別に光った映画だった。
磯村勇斗(いそむら はやと)さん
今回この映画が初主演となった磯村勇斗(いそむら はやと)さんは『仮面ライダーゴースト』のレギュラー出演でデビューした、若手イケメン俳優の一人。
私が最初に映画で見かけたの東京リベンジャーズに出演していたときで、ヤンキーのイメージが強かったということもありそれとはまるで別人だった。
(これだけヤンキー仕様のカスタムにしちゃったら、カスタムに強いバイクワンでしか査定してくれないかも…)
今回の役では、佇まいから表情まで、変に悪目立ちしないで、現場にスーッと馴染む空気感は、まさに演技派といった感じだった。
北村優衣(きたむら ゆい)さん
大胆なヌードやラブシーンに変態的な行為を要求されるという、最も勇気のいる役だったのがこの北村優衣さんだ。
北村さんのことは映画やドラマでは存じ上げなかったが、『世界ふしぎ発見!』などのレポーターやバライティーTV番組などに出演していたという清純派イメージのあるタレントさん。
今回の映画では、オーディションで自ら役を掴んだという。
これまでの演技として、短編映画『雨のまにまに』 でみることができる。
こちらは初々しさが感じられる作品であるが、『ビリーバーズ』では妖艶で熟女感さえ感じられる女性に変わっているところも比べると面白い。
一皮も二皮もむけ、一気に実力派女優の仲間入りした感がある。
宇野祥平(うの しょうへい)さん
膨大な映画に出演し、名脇役として名高い宇野祥平さんは、3人の中のリーダー的存在であり、最もクレイジーな役どころを怪演していた。未来の竹中直人と言われるほど個性的で、独特な雰囲気をまとい、映画をこよなく愛している生粋の役者さんだ。
惜しむらくは、宇野さんのパーソナリティーであって、これもリアリティーなのかもしれないのだが、
滑舌があまり良くなく、一生懸命台詞を言っている感じのシーンがあったのは、
観ていて少し気になってしまった点でした。
映画『ビリーバーズ』の感想
私たちは洗脳されたりマインドコントロールされているということに気づかないだけで、身近な会社の文化や企業文化においても、ビリーバーズがいるよな。
信じるものたち(ビリーバーズ)にとっては、笑ってられない映画なのかもしれないと思った。
なんだか、カルトだしエロエロだし、むちゃくちゃな話なんだけど、映像や役者や音楽が見事に融合しているので不思議と爽やかな印象が残るのはやはり城定秀夫監督の才能なのだろう。
また、3人の役者はこの作品作りの特殊体験を通して、精神的なつながりがあったのではないだろうか。
それがリアルに刻まれているようで、傍から見ていて羨ましくも感じてしまった。
こうした強い絆が生まれた作品だからこそ、魅力的なんだろうな。
最後に度々出てくる「カメ」の考察。
カメのメタファーとしては2つ挙げられる。
- 1つ目は男性のアレ
- 2つ目は浦島太郎のカメ
1つ目は魂の浄化を図る修行中にもかかわらず、性欲が徘徊している点。
2つ目は夢や幻想と現実を行き来している主人公と、時空移動することができるカメの特殊能力を表現していたのではないだろうか🐢