『柳影澤蛍火 (やなぎかげさわのほたるび)』 大詰
推理小説にハマっていた時期がありまして、
コロンボのようにじわじわと犯人を追いつめていく人間くさいミステリも好きなんですが、
それまでの数百ページの話が、だった一行の叙述だけで、
いっきにひっくり返るような論理、ロジックの作品も好きでした。
『十角館の殺人』 綾辻行人 最後の章、ページをめくった瞬間に。。。
『セカンド・ラブ』乾くるみ 最後から2行目で、まさかの。。。
など。
そんなミステリー小説のようにガラリとこれまでの前提が覆される、
宇野信夫さんの『柳影澤蛍火(やなぎかげさわのほたるび)』の大詰です。
歌舞伎、芝居というものが、ナレーションのようなものも少なく、
直接的な心理描写も(義太夫狂言などを除くと)多くないですから、
目の前起こっていないことや、ある幕とある幕との間などを
補って見る姿勢が、われわれ観客も慣れていますよね。
このシステムの隙をついて書かれたストーリー。
柳澤吉保の出世街道のライバル、護持院隆光さんの一言。
この一言で、あれ?
ここまで見てきた芝居は何だったの?
そして、これまでに散りばめられていた様々な伏線も回収されていきます。
先日観たシネマ歌舞伎『怪談牡丹灯籠』は、
下手にお金を手に入れて、出世したばかりに悲劇を招いてしまって、
最後には最愛の妻お峰(坂東玉三郎さん)を手にかけるしかなかった
伴蔵さん(片岡仁左衛門さん)。
状況は似ているかも知れませんが、
柳澤さん、おさめさんの心のうちは対照的だったかもしれません。
状況は似ているかも知れませんが、
柳澤さん、おさめさんの心のうちは対照的だったかもしれません。
私の出会った落語家たち 昭和名人奇人伝 河出文庫 / 宇野信夫 【文庫】
九月の新橋演舞場の『不知火検校』も宇野信夫さん作なんですね。

不知火檢校 [DVD]
