2014-07-06 00:23:07

第243回_言葉は時空を超えて生き残る

テーマ:ブログ
賢人、偉人、達人たちが遺した名言や語録や格言は、時代を超えて人の心に宿り、励まし、英知の源泉となり続ける。どんな英雄も必ず死ぬが、その人が遺した言葉は時空を超えて生き続ける。最近、そのことを思わずにはいられない。

1920年、第一次世界大戦の好況で飛躍的に伊藤忠合名(現・伊藤忠商事)は事業を拡大するが、一転、取引先の相次ぐ倒産により経営危機に陥る。当主の2代目伊藤忠兵衛が34歳の時である。この時に発生した損失は現在に換算すると数千億円にもなり、日本一の借金王と呼ばれた。

忠兵衛は突然の不運にただ呆然とするのみ。対策を見出せぬまま考えあぐねる日々が続いた。そんなある日のことであった。忠兵衛が若い日に知合い、その後人生の師と仰いでいた、井上準之助(当時、日銀総裁)から一通の手紙が届いた。中から出てきたのは一編の書で、次のように記されていた。

「名を成すは常に窮苦の日にあり、事の敗るるは多くは得意の時による」進退きわまる窮苦の今こそ、名を成す時である。死力を尽くして戦え━という激励の書であった。忠兵衛にとって目頭が熱くなる書であった。

忠兵衛は、ここが生涯の勝負どころと、奮い立った。彼は全財産を投げ出して会社再建に取り組む。それは自宅の庭の灯籠や庭石までも売却したほどの徹底したものであった。その甲斐があり忠兵衛は会社を再建し危機を乗り越えることが出来た。

ちなみに井上準之助が忠兵衛に送った
「名を成すは常に窮苦の日にあり、事の敗るるは多くは得意の時による」

この言葉は、中国・明代末期に編さんされた「酔古堂剣掃(すいこどうけんすい)」に出てくる言葉である。恐らく井上はこの言葉を引用したのだろう。明代末期といえば300年以上前である。この言葉は300年の時空を超えて伊藤忠兵衛の心を打った。

中国といえば孔子の言葉を記した『論語』がある。日本でも資本主義の父と呼ばれた渋沢栄一をはじめ、今でも多くの経営者や指導者がこの『論語』を道徳的規範としている。

孔子は2500年前の人物であるが、この『論語』に『温故知新(おんこちしん)』という言葉がある。前に学んだことや昔の事柄をもう一度調べたり考えたりして、新たな道理や知識を見い出し自分のものとする、という意味だ。つまり、2500年前に生きた孔子もそれより前の先人達から学んだものを、弟子たちに語っていたのだ。ということは『論語』は2500年より遥かに昔の人達の言葉が詰まった書といえる。

良い言葉はこれからも生き続け、将来生まれてくる人も励まし勇気づけるだろう。

しかし、歴史は繰り返すというが、人間は何故か同じ過ちを何度も繰り返してきた。人間が歴史から学ばなければならないのは、何も学んでこなかったことではなかろうか。

先人達が遺してくれた英知の詰まった言葉を無駄にしてはいけない。

関連サイト
伊藤忠兵衛語録http://bit.ly/wErETR
渋沢栄一語録http://bit.ly/xl7q0f
孔子語録http://bit.ly/K2tiGD

後藤健二(ジャーナリスト)http://nihonnokakeizu.net/blog-entry-1257.html
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