『ちょっと下りてきて・・・』
会社は、3階だが・・・残念ながらエレベーターはない。
脳幹腫瘍の摘出手術をして、さあ~5,6年か?
一時は生死をさまよう状態で、言語障害、半身不随と大変な状態だった。
ここ1~2年で急回復しているが・・・とても・・・来ること自体が無茶だろう?
「すぐ下りるわ・・・ちょっと待っててや・・・」
威勢の良いのと、動きが早いのが売り物のスクラップ屋さんだ!
下りてみると、白いセダンの中から顔を出して・・・
『ちょっと、近所まで用事があってな、おまはんに会わずに帰るわけにいかんやろ・・・』
とのことだ。
車は、彼の得意先の社員が運転している。
『この近くに、喫茶店は無いんかいな~ミスドつぶれてるがな~』
ミスドは、先月で閉店・・・向かいにイオンができ、一階に喫茶店があると教える。
じゃ~そこに行こうと云うことになる。
駐車場・・・やはり歩くのは困難なよう・・・
イオン障害用駐車場から・・・手押し車を指差し・・・
『あれ持ってきて・・・』
何とか喫茶店に・・・
世間話他事いろいろのあと・・・
『いや~おまはんのおかげで、おう助かりや・・・』
と、云う事だ・・・
「え・・・・?」
と聞き返すと・・・
『忘れたんかいな~・・・ほら・・・』
病魔に倒れる前に・・・
株で大損をしているとの話だった。
何の気なしに・・・
「今の株は、昔の投資と違う・・・マネーゲームや・・・
ええ会社の株を買うて、じっとまっとたら儲かる時代と違う
やるならゆっくりリズムの、資信託のほうが心臓に良いのと違う・・」
と、云ったそうだ・・・
多分調子をこいて色々としゃべる癖があり、きっと云ったのだろう?
特にリートが面白いといったらしい。
かれは、これをすぐ実行・・・
その後病魔の見舞われ入院手術・・・
回復退院してみると・・・
なんと・・・
前もっていた株の価格は暴落しており・・・
買ったリート(レアル)投信は、そこそこ運用益があったそうだ!
これが瓢箪から駒というのか?
呆気に取られていると・・・
『ほんまありがとうな・・・おまはんのおかげや』
と念を押して、お礼を言われる。
悪い気はしないが・・・彼の行動力と勇気に・・・乾杯(完敗)だ!
じゃ~またな・・・赤いダウンみ身を包んで帰っていった。
彼は・・・そんなやつだ!