山吹はその名を色で呼ばれるほどの鮮やかさ。華やかな色です。
そういえば源氏物語に山吹重ねという色目がありました。
「玉鬘」の巻に源氏が愛する女性のために正月に着る装束を取り揃えて贈る場面。
くもりなく赤きに山吹の花の細長(鮮明な赤の表着の上に山吹色の細長)
真っ赤な表着には山吹の花を散らし、その上に着る細長は裏山吹重ね(表地が山吹、裏 地が紅)とし、
紋様は『源氏物語絵巻』小葵の紋様であったそうな・・。
さぞ華やかで美しいものだったのでしょうね・・。
夜麻夫伎乃 花能左香利尓 可久乃其等 伎美乎見麻久波 知登世尓母我母
山吹の花の盛りにかくのごと 君を見まくは千年(ちとせ)にもがも 【万葉集・巻20家持】
花咲而 實者不成登裳 長氣 所念鴨 山振之花
花咲きて、実はならねども、長き日(け)に、思ほゆるかも、山吹の花
花咲きて、実はならねども、長き日(け)に、思ほゆるかも、山吹の花
山吹を読んだうたは数多あります。これもそう。
ななへやへ 花は咲けども山吹の みのひとつだになきぞ悲しき 【後拾遺和歌集】
太田道灌の逸話で有名なこのおうたは兼明親王。
もともと八重山吹は一重山吹からつくられた品種。
ゆえに雄蕊と雌蕊を花びらに変化させたものなので実ることはないのだそうです。
一重と八重・・どちらかといえばわたしは一重が好き
とはいっても一叢、群れて咲く八重山吹の美しさも格別です・・
人も来ず 春行く庭の水の上に こぼれてたまる山吹の花 【正岡子規】

