本年産のコメの値段は過去最低水準だ。しかし、米価を上げるために政府がコメを買い上げれば、大きな批判が出ることは必至だ。
例えば、
市場の機能を歪めるな。
日本は社会主義ではない。
特定の産業だけ保護するな。
こうした批判が容易に予想できる。
しかし今、株式と国債については、国家ぐるみの価格引き上げ工作が堂々と行われている。
先週、政府は、GPIF改革と銘打って、年金の保険料を、これまで以上に日本株式に投資する方針を決定した。
(注)GPIF:年金積立金管理運用独立行政法人
同日、これに呼応するように、日本銀行の黒田総裁は追加緩和を発表し、年間の国債買い入れ額を約30兆円程度増やすと同時に、ETF(上場投資信託)やREIT(上場不動産信託)の購入額もこれまでの3倍に拡大することを発表した。
効果はてきめんで、週明けの株式市場は7年ぶりに17000円を超え、活況を呈している。
一方、国債の金利は低く抑えられている。
政府・日銀の描いたとおりのシナリオだ。
なぜこんなマジックのようなことが可能なのか。
実は理屈は簡単だ。つまり、政府・日銀が一緒になって、株式、不動産、国債を買い上げることを宣言したので、買い入れ対象物の値段が上がっているだけのことである。
しかし不思議なのは、政府がコメを買い上げると批判が出るのに、政府・日銀が株や国債を買っても批判が出ない。
なぜコメはダメで、株式や債券なら許されるのか。
私は、理解できない。
最も“市場”原理が働かなくてはならない株式市場や債券市場で、市場の機能を壊すような政府・日銀による“国家の介入”が行われ、一方、市場原理に任せ切るべきではないと思われる農業分野で、逆に徹底した市場原理を貫ぬけという。
このバランスの悪さに違和感を禁じ得ない。
資本市場が本来持つ価格形成機能を壊してはならない。
特に、人為的に引き下げられた金利は、政府や政治家に、財政規律を維持しようとするインセンティブを失わせてしまう。
金利低下で生じた利払い費の減額分を使って補正予算を組むことが定着しているが、もってのほかだ。事実上の財政ファイナンスの最たるものだ。
安倍政権は、日本経済をどこに連れていこうとしているのか。
私たちは、“異次元”という空疎な言葉に振り回されるのではなく、もっと常識的な判断に立ち戻るべきだ。
株価も金利も賃金も全て国家がコントロールする・・・
まるでスターリン時代の計画経済のように感じる。
資本主義経済における経済活動は、もっと国家の関与の少ない自由なものであるべきだ。
市場を無視して何でもかんでも国家が差配する・・・
こんな“左翼的な”政策はやめるべきだ。