◇味覚に関するもの

   ①味覚が敏感過ぎる

   ②味覚が鈍感過ぎる

◇①「味覚が敏感過ぎる」ことについて

 発達の課題がある子供たちには、偏食になる子も少なくありません。実際にどんなものを食しているのかと言いますと、チョコレート、アイスクリーム、スナック菓子、辛いものなど‥が良く見受けられます。味覚でいうと「甘いもの」・「辛いもの」。寒熱で分けると「体を冷やすもの」を好んで口にします。

 東洋医学の視点で、これら「食品の味や温度を好む理由」と、「子供さんの身体の病理」とを考察すると行動原理が繋がっています。

 

なぜ甘味や辛味を欲するのか?

 

 漢方薬の基本に出てくる話で、人が口にできる食材は、5つの味によって分類されており、それら5つの味の組み合わせによって健康を維持したり、病気を生んだりするとされます。

いわゆる医食同源(日常で口にする食べ物は、医術と同様に身体の健康を維持する役目がある)と同じことです。

 

 5つの味の「五味」とは、

 酸味

 苦味

 甘味

 辛味

 鹹(塩)味

になります。

それら「五味」の働きは、

酸味・・・(収斂)

苦味・・・(清熱、乾かす)

甘味・・・(緩める、気血津液を増やす)

辛味・・・(発散)

鹹(塩)味・・・(軟らげる)

です。

 

五味の話を全てお話しすると大変長くなるので、甘味と辛味にだけ焦点を当てます。

 

甘味

 甘味というのは、「緩める」作用があります。皆さん緊張して疲れた時に甘いものが欲しくなるといった経験はありませんか?これは、甘味によって緊張を緩めようとする体の欲求なんですね。日本の茶道のお茶菓子も「甘味」のものが出され、凛とした空間の中に緩みを感じることができるわけです。

 それと甘味には、気血津液という身体を動かすエネルギーの材料となる働きがあるので、活動源のエネルギーを補充する作用があります。漢方で言えば、十全大補湯や六君子湯など含まれている「人参」や「甘草」といった甘味の生薬の働きと同じように、少なくなった気血津液を増やし身体を滋養してくれるんですね。

 そういった観点から、発達の課題がある子供が甘味のものを欲しがるというのは、甘味の「緩める」という作用によって自身の心身の緊張を緩めようとするからだと考えることができます。子供の癇癪に使われる漢方である”甘麦大棗湯”が良い代表例です。これは、生薬の甘味の働きを上手に使って心身の緊張を緩める効果があります。

 

 では、チョコレートやアイスクリーム、ケーキの様に甘いものを与えれば良いのではないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。過ぎたるは、及ばざるがごとしという言葉がある通り、必要以上に「緩める」、「気血津液を増やす」という働きを上げ過ぎても身体にとって良くない働きをもたらすことがあります。

 漢方では、甘味のものは「胃腸」に強く影響を与えます。甘味のものを必要以上に与え続けると、胃腸がその分働かないといけなくなり反って弱ってしまうことがあるんですね。

 胃腸は、副交感神経(リラックスさせる作用がある)が有利になることで消化や吸収が穏やかに働くのですが、胃腸が弱り働くなると、反対に交感神経(緊張させる作用がある)が有利になってしまい消化や吸収に負担がかかるしくみがあります。

 必要以上に胃腸を働かせてしまうことで交感神経が高ぶることに繋がってしまうという事です。なのでチョコレートやアイスクリーム、ケーキの様な甘いものを必要以上に摂取してしまうと、子供の心身を高ぶらせる要因なってしまいます。

 

 情緒が高ぶりやすい子で食の乱れがある子の食のメカニズムは、心身の高ぶりを鎮めるために、あえて甘味(緩める作用)のもの選んだり、晩御飯をお腹いっぱい食べる傾向があるように思えます。これによって一時的に甘味の作用と満腹感で、胃腸の副交感性(リラックスする作用)が上がるのですが、消化と吸収の過程で胃腸に負担をかけてしまい負のスパイラルに入ってしまいます。そして朝食・昼食の食事量が少なくなり、お菓子なら食べられるというパターンを繰り返していることが起きてしまいます。

 

 漢方で取り扱う甘味のものとは、「お米」のように優しくほのかに感じる甘さを指します。人工的に添加され、自然界には存在しない甘さは身体を養うものではなく、嗜好品(気分を味わうもの)であるという事です。保護者の方はそのことをまず知っていただいて日頃の療育として取り入れて頂ければ幸いです。

 

 発達の課題があって偏食があり且つ情緒が落ち着かない子は、その負のスパイラルに入っていることが多いように感じます。

 

辛味

 辛味というのは、「発散」作用があります。皆さんは辛い料理を食べた時に汗をかいたことがあると思いますが、辛味のものは、そのように発汗作用があります。これは、汗をかくと共に身体の中の熱を外に逃がしているんですね。汗をかいた後、火照った身体がスッキリするというのは、辛味にはそういった働きがあるからなんです。漢方では、体内に停滞している熱を外側に追いやる時によく使います。

 

 皆さんが辛味を求めて食べたい時は、夏場でジメジメして熱が身体に閉じこもっている時が多いのではないかと思います。熱が体内で鬱滞して何か気分がスッキリしない状態の時ですね。いわゆる気分が鬱滞している時のことです。

 

 情緒が上手く発散できずに気分が鬱滞してイライラしやすい子供もそういった面で辛味のものを好む傾向があります。

イライラして癇癪を起している子供の頭や上半身に触れていると強い熱を帯びていることが分かります。

実は、この熱こそがイライラや癇癪を起している原因なんですね。

 

 そういった情緒のコントロールが難しい子供は、緩めるというよりも発散することで自分の情緒をコントロールしようと頑張っているタイプです。なので辛味のものを求める傾向があります。

 

 この辛味のものを求めるタイプの人は、血虚といって「血液が不足」したり、「血液によって栄養されていない」といった身体の状態になっていることが多いです。その状態により症状が現れてきます。

 

 この辛味のものを常食しすぎると、血虚(血液の不足)が進みやすくなります。なので血液が不足してイライラするタイプの子にとって、辛いものを摂りすぎるということは、より症状が加速しやすくなるという事です。

 この血液の不足の状態を改善するには、漢方では苦味・酸味の生薬を組み合わせたものを使います。抑肝散加陳皮半夏、柴胡加竜骨牡蛎湯、大柴胡湯などが相当します。

 

 東洋医学で「味覚が敏感」というのは、気持ちの高ぶりによって感覚が鋭敏になっていると捉えます。情緒が高ぶり過ぎたり、鬱滞に行き過ぎないように「中庸(ほど良いレベル)」に持っていくことが大切なことだと思います。

 

次回に続きます。