■「AI革命」の抵抗勢力として日本が輝く日 | タマちゃんの暇つぶし

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マネーボイス: 「AI革命」の抵抗勢力として日本が輝く日。変化を恐れる国民性に世界が羨望の眼差し=高島康司氏2023年4月9日より転載します。
 
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前回記事では、2023年を起点に始まっている人工知能の劇的な進化がもたらす影響を包括的な視点から解説した。今回は、AI革命が日本に及ぼす影響について解説する。おそらく、多くの日本人はAIの導入に抵抗するだろう。そうした抵抗がもたらす変化を概観する。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

【関連】今ここが人工知能「人間超え」の出発点。米国覇権の失墜、金融危機、大量辞職…2025年には劇変した世界が待っている=高島康司

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「シンギュラリティ」後にも残る日本的な世界

「シンギュラリティ(人工知能が人間を超える転換点)」のAI革命がもたらす日本への影響について解説したい。日本はユニークな方法で生き残りそうだ。

前回の記事にも書いたように、2023年の今年は人工知能の発展に向けた「シンギュラリティ」の原点になる年だ。アメリカや中国の最先端IT企業が激烈な競争を展開し、凄まじいスピードでAIが発展することだろう。ネットにはAIを活用したサービスが溢れ、我々も朝起きたときから夜寝るまでAIにどっぷり使った状態になるはずだ。

いま我々はスマホがない生活など考えられないが、あと半年もするとスマホと同じようにAIに依存するようになる。日々の食事の献立、個人的な悩みの相談。あらゆる形態のリサーチ、あらゆる文書の執筆、SNSの投稿、プログラミング、デザイン、通訳と翻訳など私達のあらゆる活動が人工知能が提供するサービスが担うようになる。

この結果、2025年くらいには、多くのホワイトカラーが担う頭脳労働が必要なくなる可能性が高い。デザイナー、プログラマー、弁護士、通訳、税理士など多くの専門職が人工知能に置き換わる。そのため、いままで安定していた専門職とホワイトカラーの賃金は大きく減少し、少ない仕事を巡って競争が激化する。

1990年代の半ばから2010年くらいにかけて、グローバリゼーションとIT化の影響で一般の労働力に起こった変化が、今度は専門職のホワイトカラーを襲う。これは、中産階層のさらなる分解に結果するだろう。

この波は全世界を襲う。だが、日本だけが少し違った状況になるかもしれない。

90年代の半ば頃から本格化したグローバリゼーションの流れには、日本人は強く抵抗した。変化することを拒んだのだ。これと同じように、いま始まりつつあるAIの「シンギュラリティ」に多くに日本人も、また日本企業も抵抗し、その結果思いもよらない結果になるかもしれなのだ。

グローバリゼーションに抵抗した日本

これがどういうことなのか理解するためには、かつてのグローバリゼーションにどのように日本人や日本企業が抵抗し、変化することを拒んだのか見る必要がある。おそらくAI革命でも同じことが起こり、類似した結果になることがはっきと見えてくるはずだ。

グローバリゼーションには様々な定義はあるだろうが、基本的に生産拠点の海外展開のことである。これまで国内に集中していた生産拠点を、労働力の安い海外に移転して、インターネットを活用したネットワークでそれらの拠点を結び、効率的に生産を組織する方法をグローバリゼーションという。

このグローバルな生産システムが、先進国の主導的な産業であり、雇用数がもっとも大きい製造業に導入されると、それは大きな社会変化をもたらした。生産拠点の海外移転によって国内産業は空洞化し、大規模なリストラが行われた。その結果、中間層の中核であった産業労働者が没落し、それとともに中間層全体が分解したのである。

この変化は、欧米では極めて急速に起こった。1990年代の半ばから始まり、5年後の21世紀初頭には産業の空洞化と中間層の没落は深刻な問題となった。アメリカやイギリスの主導的な産業は、製造業から、雇用効果の低い金融産業へと移り現代に至っている。

しかし、日本の対応はかなり異なっていた。多くの企業が生産拠点を、労働力の安い海外に全面的に移転しなかったのだ。その理由は複数あるが、やはりもっとも大きいのは大規模なリストラの実施に対して、多くの日本企業が消極的であったことだ。日本企業は、従業員や地域社会とのつながりを重視することが多い。大規模なリストラを行い企業の共同体を解体し、長年の関係を築いてきた国内のサプライヤーを放棄することはできなかった。その結果、国内で生産を継続することを選択した。

だからといって、日本企業が終身雇用と年功序列を主軸にした伝統的な雇用慣行と、正社員をメインにした組織を温存したわけではない。世界的なグローバリゼーションがもたらしたコスト削減の圧力はことのほか大きかった。国際的な競争力を維持する必要からコストの大幅な削減の必要性に迫られた日本企業は、賃金の低い派遣労働者に切り替えることで、なんとか国内の生産拠点を維持した。

もちろん、正社員から派遣労働の切り替えは大きな社会問題を発生させた。格差の拡大と中間層の分解である。これが引き起こした社会問題の拡大は、2009年の民主党政権を成立させた。だが、日本の問題の規模は、主要な生産拠点が一斉に海外に移転し、国内産業が徹底して空洞化した欧米よりも、ずっと緩やかだった。問題の発生のペースも、欧米が数年単位で社会が激変したのに対し、日本では変化は相対的にゆっくりと起き、10年単位で問題が顕在化した。

Next: 世界の変化から取り残された「水たまり」?日本が脚光を浴びる

慢性的な停滞構造

しかし、このようなグローバリゼーションの抵抗と変化の先送りは、日本を慢性的に停滞させた。


派遣労働を導入しても生産拠点が国内にある以上、コスト高にならざるを得ない。その結果、日本企業は国際競争力を失い、売り上げが減少した。このじり貧状態が原因で、イノベーションと開発投資ができなくなった。すると、売上は一層減少した。日本企業はこの状況に対処するため、賃金を低く抑え、さらに大企業は中小企業に値下げを強要した。

そして、このように出した利益の大半は、内部留保金にして、大企業は積極的な投資を控えた。リスクを恐れての処置だ。すると、イノベーションの投資が行われないので国際競争力はさらに低下した。

一方、さらなる賃下げと中小企業への値下げ強要で経常利益は膨らみ、それに対応して内部留保金も増えるという悪循環に陥った。また、増大した利益で大企業の役員報酬は増えるが、賃金は低下したままだ。

こうした循環が日本の停滞を構造化させた。

グローバリゼーションの先送りの逆説

このように日本企業は、生産拠点の海外移転に抵抗してグローバリゼーションを先送りし、慢性的に停滞した。しかしながら、こうした状況で逆説的だが、残ったものがある。日本企業が築き上げてきた伝統的な企業組織、また社員や顧客、地域社会との強いつながりがそのまま残ったのだ。その結果、古い技術や手法が根本から変革されることなく維持された。ファックスや固定電話など、他の古い技術が依然として使用され環境が温存されたのだ。

さらに、企業だけではなく多くの日本人がIT化とグローバリゼーションに消極的だったため、80年代から90年代までのテクノロジーや町並み、そして懐かしい雰囲気を持つ文化が残った。また、電子決済が十分に普及しておらず、昔ながらの現金決済の商店街が多く存在する。日本では、グローバリゼーション以前にあったローカルな世界の匂いが残っている。

しかし、これは逆説的な作用をもたらした。残った古き良き世界を満喫するために、外国から観光客が押し寄せたのだ。他の先進国では消滅しかかっている人の手触りと温もり、そしてなんとなく懐かしい光景が日本にはある。世界の変化から取り残された水たまりとしての輝きのようなものだ。

ロシアのウクライナ進攻でさらに強化

こうした、いわば世界の安定した水たまりとしての日本の輝きは、ロシアのウクライナ進攻でさらに強化された。ウクライナ戦争後、エネルギーと食料を中心にインフレは過去40年間で最大水準に達しつつある。長年、デフレに苦しんでいる日本でも、すでに3%から4%のインフレが常態化している。

しかし、欧米ではこんな水準のインフレではない。イギリスのインフレ率は常時10%を越えているし、EU諸国でも10%前後で推移している。アメリカは速いペースで金利を引き上げた結果、なんとか6%台のインフレに落ち着いているが、それでも2020年と比較すると、3倍以上高い水準だ。

このような高インフレは、いま欧米諸国を直撃している。極端なエネルギーと食料の高騰で、生活の維持ができなくなる人々が急速に増えている。筆者が先日仕事で知り合ったイギリス人の経営者は、無料食料配給所のフードバンクに若い医師と弁護士、そして看護師が列に並んでいるのを見たという。彼らの会話から、そうした専門職の人々だと分かったそうだ。

ウクライナ戦争後、欧米では生活の厳しさがかつてないほど増している。イギリス、フランス、ドイツのような国々では、連日のように抗議運動が起こっている。「カーネギー・メロン財団」は開設した「世界抗議運動トラッカー」を見ても、抗議運動の多くがヨーロッパの先進国に集中しているのが分かる。

・世界抗議運動トラッカー
https://carnegieendowment.org/publications/interactive/protest-tracker

こうした矛盾を背景に、欧米では国民の間の分断が進みつつある。先程のイギリス人経営者は、社会が今後維持できるのかどうか不安でしなかたがないという。貧困化の加速、国民間の対立の激化、犯罪の増加、そして抗議運動の激化という状態だ。筆者のアメリカ人の友人は。「この国にはもう住みたくない」とまで言っている。

こうした人々がこぞって行きたがる国が日本なのだ。

Next: 日本はいつでも安心できる安定した避難所…AI革命の到来でどうなる?

日本はいつでも安心できる安定した避難所

彼らに直接聞いて見ると、日本はインフレ率がまだ3%と低く、物価も非常に安い。またサービスの質が高く、さらに安全で基本的なインフラが整っているという。そして、多くの外国人が指摘するのが、日本人の穏やかな態度と人との接し方だという。アメリカやイギリスの大都市圏では社会の基本的な安定性が崩れつつあるので、公共の場で知らない他人と接するのは怖い場合があるという。ウクライナ戦争後、欧米は人との関係がとにかくぎすぎすしているらしい。

そうした状況から見ると、まさに日本は格好の避難場所なのだ。すでに欧米ではなくなった80年代と90年代の光景と人の手触り感が残る輝ける取り残された「水たまり」なのだ。

これは、日本に数多くやってくる中国の人々にも言えることだ。筆者の多くの中国人の友人たちがこぞって言うのは、現在の習近平政権に対する恐怖である。彼らの多くは、習近平政権はこれまでの集団指導体制の共産党の政権とは決定的に異なる政権だと見ている。従来の中国共産党とは質的に異なる単独の独裁政権だ。

中国の人々の間には、そうした習近平が、かつて毛沢東が実行した文化大革命のような社会改革を突然と始めやしないかと怖がっている。このような感情を持つ中国人にとっても、日本はいつでも安心できる安定した避難所なのである。中国の富裕層が日本の不動産を購入するのは、投資のためだけではない。「避難所」の確保のためなのだ。

AI革命の到来と日本の抵抗

こうした内部から不安定化しつつある社会状況で、「シンギュラリティ」の始まりを告げるAI革命が起ころうとしているのである。このインパクトには、凄まじいものがあるだろう。

AI革命がもたらす変化は、グローバリゼーションの変化よりもはるかに激しいものになるはずだ。先に書いたように、AIによる高度なサービスの提供で、デザイナー、イラストレーター、プログラマー、コピーライター、ライター、税理士、会計士など、あらゆるタイプの専門職が、格安で提供されるAIのサービスに置き換わるだろう。AI搭載の配膳ロボットが使われる無人のレストランがファーストフードを中心に出てくるかもしれない。それに伴い、専門職の間の競争は激化し、結果として、中間層の再度の分解が始まる。こうした変化は、ウクライナ戦争のインフレと混乱で、一層激しいものにならざるを得ない。

ところが、日本人の多くと日本企業は、この導入に頑強に抵抗するのではないだろうか?

グローバリゼーションで起こったと同じような抵抗が起こるのだ。その結果、日本だけが変化の波から取り残され、さらに停滞する可能性がある。かつてグローバリゼーションに抵抗し、先送りし続けた日本企業と同じ対応である。

しかしながら、また、この抵抗のゆえに、AIが導入される前の世界がそのまま日本に残ることになる。結果的に日本には、80年代から90年代の懐かしい世界の有り様がAIがもたらす変化の後でも、残ることになるかもしれない。そして、これが変化に取り残されながらも、古き良き洗練さを維持した水たまりとしての日本の輝きを増すことになるだろう。停滞した「水たまり」の輝きだ。

むろん、これは筆者の仮説に過ぎない。いまのところ、このような展開になる保証はない。しかし、十分にあり得るシナリオだと思う。AI革命は速い。振り落とされないようにしなければならない。

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