かなり前から公開を心待ちにしていた作品でした。
ようやく公開されたと思ったら、あの話題作「君たちはどう生きるか」と同じ公開日とは!
前日に「君どう」、翌日に「マッド・ハイジ」を観ました。
本当に気持ちの良い、清々しい爽やかさに満ちた作品でした。
前日の、悪夢の様な「君どう」の後ですから、余計にそう思えたのかもしれません。
そう言えば、「アルプスの少女ハイジ」は宮崎駿監督がかつて製作に係わったテレビアニメでした。
そんな因縁もあって、監督のヨハネス・ハートマンは公開前夜祭において宮崎駿へメッセージを求められました(ウィキペディア情報)。
どう考えても嫌がらせとしか思えませんが、彼は「宮崎監督がスイスのハイジというキャラクターを日本から“逆紹介”してくださったことをうれしく思うと同時に、ありがとうと伝えたい。新作が成功しますように」と、爽やかなコメントをしたそうです。
宮崎駿が「マッド・ハイジ」を観る事は永遠に無いと思いますが、これだけは言わせてください。
「マッド・ハイジ」の方が10倍面白かったし、どう生きるかと問うならば、俺はこんな風に生きたい!
お前のかつて手掛けたハイジが地獄から蘇り、お前の問いかけに全力で応えた、それがマッド・ハイジだと!
ふざけていると思われると心外です。
かなり真面目な意見なのです。
少なくとも、「君どう」のレビューよりは真剣です。
この映画は冒頭でも紹介されるとおり、クラウドファンディングで資金調達して作られました。
国や企業からの出資は一切無し。
だからこそ、やりたい放題でありながら、誠実に面白くしようという意気込みが充満しています。
実際、シンプルに面白いし、驚くほどちゃんとしている。
基本はコメディですが、バイオレンス、アクション、ホラーという映画に必要なものが全部備わっています。
クラウドファンディングで資金調達と言えば「アイアン・スカイ」ですが、実は同作のプロデューサーが本作も製作しています。
あの映画も本当に最高でした。
全員馬鹿にすれば、フェアだ。
あのスピリットが本作でも貫かれています。
ノー・リスペクトの精神です。
「マッド・ハイジ」は、ディストピア化したスイスが舞台です。
ファシスト政権に恋人ペーターを惨殺されたハイジが、自身も施設で地獄の様なイジメに耐え、ついに立ち上がるという復讐もの。
基本は定番の復讐アクションながら、徹底的に独裁者や独裁政治をおちょくった、志の高いユーモアが満載です。
ディストピアと言えば、我が「美しい国ニッポン」です。
他国のカルト宗教に支配された売国政権が、高笑いしながら自国の国民を痛めつけ嘲笑し、すべての希望を踏みにじる。
こんな日常に生きるまともな庶民であれば、政権に対する怒り、不満、殺意を日々スパーくさせていると思います。
この映画は、そんな思いをほんのちょっとだけ解消してくれるかもしれません。
誰であろうと構わず笑い飛ばすのは、かつてはテレビでもドリフなんかがやっていましたが、今のテレビは政権と企業の洗脳装置と化し、そんな思いには応えてくれません。
そんなクソテレビは2階から投げ落とし、家族みんなで「マッド・ハイジ」を観ませんか。
引き籠りのお子様(18歳以上)も元気になって、ヤギのユキちゃんみたくジャンプしながら、ヨーデルを歌いだすでしょう。
ペーターが黒人になったのも、ポリコレを逆手に取ったギャグでしょう。
違法チーズの売人で、素敵な衣装で町を闊歩し、白人に撃ち殺される!
似顔絵も含め、全然配慮していません!
このキャラは最高なので、冒頭で殺すのはもったいなかったですね。
あと、特筆すべきなのが吹替えです。
当初は予告だけ吹替えだったのが、好評だったため急遽本編も吹替え版を作成したとのこと。
まあこれは実際どうだったか分かりませんが、しかし見事に映画にマッチした素晴らしい吹替えでした。
完全に悪ノリしていますが、外国映画のギャグってなかなか日本人には理解出来なかったりするので、このぐらいの方がむしろオリジナルに忠実なのではないでしょうか。
選べるなら絶対吹替えでご覧ください。
宮崎作品の声優には余裕勝ちと断言できます(まだこだわる)。
宮崎監督も、他人の生き方なんか気にせず、今からでも遅くないので、友達の鈴木敏夫とその愛人とタイにでも行って、面白おかしく暮らせばいいじゃない。
まだ人生は続くのだから。