$ユン先生のタマビヤキ解説


$ユン先生のタマビヤキ解説

佐々木さんは、陶製のリターナブル保冷剤容器を作った。

この保冷材は、ケーキ屋さんでケーキを買った人が持ち帰る時に、一個あたり100円のデポジットを払って、ケーキの箱に入れてもらうものだ。そして、後日ケーキ屋さんにもって行けば、100円を帰してくれるというリターナブルシステムまで含めて考案した。

陶製の保冷剤容器は、楕円形の粘土板を餃子の皮ように折り畳んで、中を空洞にしたまま釉薬を掛けて高温で焼成したもので、焼成後、中空部分に保冷液を入れて栓をしたものだ。

ケーキと箱の間にいれても邪魔にならないように、またいくつか入れても収まりが良いように、断面を三角形にしている。また、ケーキを傷つけないように、全体に丸みのある仕上げをしている。

ケーキのための保冷材だから安くなければいけないと考えて、ひとつ100円という価格設定をした。そして100円に見合う陶の作り込みを意識し過ぎて、あまり手数を掛けないように釉薬を掛けただけの仕上げを選んだ。結果、やや地味な表面仕上げとなった。

しかし、100円だから気軽に持って帰られるものであるうよりも、どうせなら、1000円2000円を払っても、持ち帰って飾っておきたくなるような、ものとしての力と魅力をまとった保冷剤容器が見てみたい。
仮想の現実に縛られるより、現実を切り開く力を獲得してもらいたい。

いずれにしても、作り手の生活実感からでてくる着想もおもしろく、また、リターナブルシステムの組み立ても現実的だった。また、発表の場で、本物のケーキと陶製保冷剤箱に入れての説明にとても説得力があり、「本当にあってもいいな。」と思わせるものがあった。