総工費10兆円 “日韓トンネル”と旧統一教会の関係
九州で40年前に着工も行く末は
九州には壮大な構想がありました。
佐賀県唐津市内の山中にそびえる日韓トンネル。
調査用に掘られたという穴の長さは540メートルに及びます。
佐賀県から長崎県の対馬などを通って韓国まで約230キロを
結ぶという壮大な構想です。
旧統一教会とつながりのある「国際ハイウェイ財団」が
建設しているとされる”日韓トンネル”。
佐賀県唐津市の山間部を進んでいくとー。
発見したのは「日韓トンネル唐津調査斜坑」の文字。
看板の下には大きな穴も確認できます。
日韓トンネルは、九州と韓国の間を約230キロの
海底トンネルで結ぶというものです。
国際ハイウェイ財団という団体が40年近く前に
工事を始めました。
この国際ハイウェイ財団は、旧統一教会の関連団体です。
2016年には世界平和統一家庭連合の韓鶴子(ハン・ハクチャ)
総裁が唐津市内のトンネルを視察に訪れています。
国際ハイウェイ財団によると、地質調査を目的に掘られた
トンネルの長さは540メートル。
トンネルの先端部分が所有する敷地の境界線に達していることから、
2007年からは掘削工事は行われていないといいます。
日韓トンネルの工事現場は、佐賀県唐津市だけではありません。
もうひとつの現場、長崎県対馬市。
空港から車で西に約20分。
◆タクシー乗務員
「ここはツシマジカの保護区だったんですよ、昔は。
保護区は解除されましたが対馬にはシカがいますから」
途中、現場とわかる表示も特にないため、地元の人に
聞いてみると-。
◆地元の男性
「トンネルの工事現場言うたら、そっちやない?」
Qいや、日韓トンネルです
「日韓トンネルはわからん。そんなことは聞いたことない」
Q工事をしている?
「日韓トンネルが掘げるって?そりゃ聞いたことがない」
最近の大雨の影響で多くの落石がある山あいの道を何回も往復。
ルートが分からず困っていたところ、農作業中の女性から
現場へ行くことができる道順を教えてもらいました。
日韓トンネルの現場へ繋がると見られる道路は、舗装が
途切れた所で厳重にチェーンで施錠されていてこれ以上、
近づくことはできませんでした。
しかし、ヘリコプターで飛んでみると、上空からその場所を
見つけることが出来ました。
その場所にあったのはアーチ状の構造物。
トンネルの入り口と見られ、財団によると、2014年に
調査用として建設されたもので、現場整備や調査工事を
少しずつ行っていると言います。
当初の計画では、この場所に1300メートルのトンネルを
掘る予定だったと言います。
2013年3月、対馬市議会で採択された“日韓トンネル”の
早期建設を求める意見書があります。
これは当時、長崎市の任意団体「日韓トンネル推進長崎県民会議」
から請願を受け、全会一致で可決されました。
質疑や異議はありませんでした。
この翌年には調査用トンネル着工の式典が行われました。
早期建設の意見書を採択した時の対馬市議会議長で、
現職の作元義文市議が、TNCの取材に応じてくれました。
◆対馬市議会 作元義文市議
Q.大きなプロジェクトが対馬であれば地域活性化の
起爆剤になると?
「そりゃもちろん。みんな思っていたでしょう」
Q作元市議は?
「私もそう思ってたよ。(対馬市の)議員のところに
国際ハイウェイ財団のプロジェクトの人たちが回ったり
説明をしたりしてたよ。私のところにも何回も来たけどね」
国際ハイウエイ財団の関係者と面会したと明言する作元市議。
当時、財団と旧統一教会とのつながりについてはー。
◆対馬市議会 作元義文市議
Q.旧統一教会とつながりがある財団と知っていたか?
「おそらく知っていない」
Q.作元市議自身は?
「全然、そういうことは知らんもん。いま話が出てきた
旧統一教会、財団、あれはつながっとると?
へぇ。そう。そりゃ(採択を)せにゃ良かったね」
総工費10兆円ともされる日韓トンネル構想。
実現に懐疑的な声もある中、2015年には
「日韓トンネル実現九州連絡協議会」が設立されました。
TNCの取材では、2020年に福岡県内で開かれた5回目の
総会に、当時の国会議員や福岡県の県議会議員、財界関係者、
九州大学など大学関係者らが出席していたことが分かっています。
出席者の1人、福岡5区の前衆院議員・原田義昭氏を直撃しました。
旧統一教会が関連していることは把握していたのでしょうか。
◆前衆院議員(福岡5区)原田義昭氏
「私も子どもではないから、そういうところが一生懸命
やっているのは分かっているけれど、入信して文鮮明
(旧統一教会教祖)にこだわっているわけではない」
その上で原田氏は、“日韓トンネルが優れた構想だと思ったので
支持した”と説明しました。
さらに佐賀・唐津の現場も視察したと言います。
◆前衆院議員(福岡5区)原田義昭氏
「人をかどわかしてそんな生やさしいものではないことは
見に行くとみんな分かる」
Q.実現の可能性はどう感じる?
「なかなか時間はかかる。ただ必ず実現する。
100年かかるかもしれないけど」
既に100億円以上投じているという空前のプロジェクト。
その行く末は見えないままです。
今回、TNCでは新たに長崎県壱岐市にあるトンネルの
工事現場を取材しました。
唐津と対馬のほぼ中間に位置する壱岐。
トンネルの計画では島の東側に位置する「馬の瀬」地区に
作業用のトンネルなどを建設するとしています。
財団のHPによると、2021年7月、現場事務所が
設置されたとありますが…
◆タクシー運転手
「ちょうどこの先、左側が馬の瀬地区です」
見えてきたのは現場事務所とみられる1棟のプレハブ小屋。
海岸からすぐ近くの場所にあり、道路の入り口にはチェーンが
かけられていました。
この現場では、壱岐と対馬の間で湧き出る水を回収するため
作業用トンネルを海底の下、約330メートルまで掘り進める
と言います。
日韓トンネルの工事ついて
壱岐の現場。
土地の元所有者の親族が取材に応じました。
◆元土地所有者の親族
Q.(土地の一部は)元々はお父さんが所有?
「親父の土地。ホテル作るけん言うて、売ったちゃもんね』
親族によると、父親が所有していた土地は、バブル期に
浮上したホテル進出計画にともないA社に売却され、
その後、1999年に父親が死去。
経緯は不明ですが、売却先のA社に土地の名義が変更されず、
父親名義のまま長い年月が経過していたと言います。
A社は、日韓トンネルに関係しているとされる会社。
5年ほど前に話が急展開しました。
◆元土地所有者の親族
「(土地の)名義変更をさせてくれと言うて来たけん、
何で今頃言うて来るとかって。固定資産税は払わないかん
やったけんね。ビール持って来たり、何やかんや、
いっぱい持ってきたよ」
交渉には、売却したA社ではなく国際ハイウェイ財団の
関係者が訪れて、すぐに名義を変更するよう促されたと
言います。
◆元土地所有者の親族
「俺んとこ来たのはハイウェイなんとか。何をするの?
と言うたら、そこにトンネル掘るけんて。関連団体って
分かるわけないもん、その頃は。旧統一教会とは最初は
関係なかったとやけん』
ホテル進出を理由に売却された土地。
いまは、国際ハイウェイ財団へと所有権が移っていました。
2021年、事務所が建てられ、その後、目立った動きは
ないと言います。
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2015年、福岡で設立された
「日韓トンネル実現九州連絡協議会」。
この会には政治家や大学の研究者経済界の関係者などが
参加しています。
トンネルの工事自体は進んでいないように見えますが、
日韓トンネル実現九州連絡協議会の冊子を見ると、
2022年6月にも総会が開かれていて、そこでは
トンネル実現に向けた意見交換や実現後の経済効果が話し
合われ、原田義昭前衆院議員もこの総会に参加していました。
さらに総会以外にも年に数回、会合が開かれていると言います。
協議会は日韓トンネルと旧統一教会の関係を把握しているのか。
協議会の会長で九州大学の元総長梶山氏が番組のインタビューに
応じました。
◆日韓トンネル実現九州連絡協議会 梶山千里会長
Q.この事業に統一教会が関わっているのは?
「知っていた。やっぱり技術屋は技術屋として何か物が
できる証を知りたい。経済界は金になるという、そういう
各々が実現したいという気持ちがあって、そういう中で
いつの間にか統一教会という話があって、話が複雑に」
Q.統一教会の狙いは?
「やっぱり寄付。
『日韓トンネルを実現するから寄付をしてくれ』と。
彼らは金を集めればいい。旧統一教会が本気になって
掘るわけではない。特に掘ったからと言って、釜山だったら
船の方が早い。(日韓トンネルは)ほとんど意味がない
という人もいるし、だけど僕ら技術屋としてはそれが
できるのは一つのシンボル」
梶山氏は前代未聞の海底トンネルを実現したいという言葉を
何度も繰り返しました。
◆日韓トンネル実現九州連絡協議会 梶山千里会長
「我々が言う日韓トンネルと、旧統一教会が言う日韓トンネルは
意味が全然違う。統一教会は金を集めたいだけ、僕らは技術で
(韓国と)仲良くしたいだけ」
Q.この会としては旧統一教会からの支援は受けていない?
「そこは知らない。僕ら自身は1円も支援は受けていない。
会があっても交通費も出ない。自分で出していく」
Q.(九大元総長の)肩書きが旧統一教会に利用されて
いるのではないか?
「それはあるかもしれない」
Q.それはどう思うか?
「いやですよ、そんなことは。嫌だけどあり得ると思う。
皆無ではない」
旧統一教会の思惑とはー。
長いトンネルを抜けた先には一体、何があるのでしょうか。