以前ある企業で仕事をした時、お昼休みに

向かい側の席で「うちは4人姉妹なんだけど

妹だけ鬼っ子で一人だけ美人なのよ」

と話す声が聞こえてきた。


う言った人はかなり体格が良くて、森三中の

大島さん似の感じのいい顔の人だったので

同じ血を引く妹さんはいくら鬼っ子でも、

黒沢さん位かなと思っていた。

ところが妹さんはモデルに誘われた事もあり、

学校でも有名な綺麗な女の子だったらしい。


大島さん似の彼女に言わせると、妹さんは

小さい頃から可愛らしくちやほやされる事が

日常茶飯事なので、悪気は無くとも褒め言葉に

対してのリアクションが謙虚でなく、傍から

見ているとムカついていたのだそうだ。

身内としてそれを注意すると

「妹はね!お姉ちゃんは言われた事が無いから

わからないかも知れないけど(身内は残酷!)

毎回言われていると余り嬉しくも無いのよなんて

言うのよ!!」

身内にしか言わない妹さんの本音だ。


その言葉に食い付いたのがそこそこいいお年の

美人のマネージャー。

「分かるわー(分かるんだ)私も小さい頃から

可愛いね。綺麗だね。透き通るほど肌がきれいね

って言われていたから、その言葉を聞くたびに、

ああ又かって思ってたもの。」

はあ。。。


美人は褒め言葉に対しては日常の挨拶くらいに

しか感じていないらしいし、いちいち愛想笑い

するのが面倒くさいとさえ思っているみたいだ。

ほめている人の言葉はさしずめ時候の挨拶位の

感覚か。


これが芸能界にでも入れば、自分より美人は

掃いて捨てるほどいるし、綺麗なだけでは

やっていけない世界だが、素人のままでずっと

褒められていれば、麻痺して当たり前になって

しまうかも知れない。


プロなら毎回聞き飽きて内心うんざりしていても

有り難うございます」。

なんてニコニコ笑って言えるだろうが。


美人は薄幸になって欲しいのが、数々の場面で

ないがしろにされて来た人間の願いだが、地道に

普通の人生を選んだ堅実で賢い美人は、かなりの

確率でいい男と結婚して、大島さんの妹さんも、

美人のマネージャーも、ちょっと羨ましいなと思って

しまう生活をつつがなく送っているのだった。




ふ・こ・う・へ・い