@朝日新聞(R2.4.11)
今朝の朝日新聞4面に、「緊急時こそ審議の充実を」との見出しで、現在の新型コロナウイルス対応での議会の在り方を大学教授が提言しています。この方は、只の憲法学者。危機管理を知らない方のミスリードを朝日新聞が全国面で披露していることに、疑義を感じます。
議会制民主主主義の社会の中で、議員の持つ代議制や行政監視、政策立案はとても重要なことです。
しかし、これは平時での原則であります。緊急事態や危機管理体制時は、この原則を適用していたら事態や危機が拡大してしまいます。緊急事態や危機管理体制時は、議会の権能を減らし行政(執行部)に権限を大きく与えなければなりません。
例えば、火事の現場で、市議会議員が住民の意向を聞いて、消防職員に指示を出すことはありません。これは、消防法(法律)等により事前に制度設計を行い、専門的な職員教育を行い、現場判断が正しいことを前提にしているからであります。ここで、重要なのは「事前に制度設計」がなされていることであり、ここに議員の役割があるのです。また、事前の制度設計に不備がある時は、事後に制度変更を提案していくのが議員の務めであります。現場で議員が指示を出すと混乱を引き起こすことが予想できるからです。但し、危機管理状況下で議員が果たすべき役割があります。行政より住民に近い議員が、正確な情報提供を行政に行うことであります。
現在、新型コロナウイルスにより、我が国も戦後初の緊急事態宣言が出されました。今は緊急事態なのです。ここで、大切なのは、先にも触れた事前の制度設計で行政(政府)に最大限の努力をして頂くことであります。「緊急時こそ審議の充実」は、危機管理対応として最悪なのです。事前の制度設計に不備があり、危機管理対応が迫られている時は、行政(政府)に対応をお任せし、事後に検証に努めるべきだと思います。だから、緊急事態条項を定める憲法が必要なのです。
最近、お聞きするのは、厚生労働省が国会や政党対応で大変な状況になっていると伺ってます。国会議員による新型コロナウイルスに対する質問や問い合わせ等に対応することで、職務が激増しているとのことです。平時と緊急事態を区別できない、危機管理の理解不足が生んでいる所作であると感じます。
一方、埼玉県議会でも、一部議員が市役所でコロナ対策の指示を出しているとの報告を受けたり、県執行部への個別要望や各会派が緊急要望を知事に出している状況が見受けられました。そこで、各会派代表者会議にて、危機管理状況下での議員の行動について共通認識を持つことで合意致しました。
これは、「埼玉県新型コロナウイルス対策本部」が設置されている間の各会派の要望活動は、執行部の新型コロナウイルス対応に支障を生じさせないように、以下4点を申し合わせたものです。①各会派からの施行部への要望は、新型コロナウイルス対策本部に議会部が設けられていることから、議会として一元化し、議会事務局長が知事に提出する。②議会部で受ける要望は、執行部に対応を求める案件とする。③提出された要望について、正副議長と調整の上、知事に提出する。④各々議員の要望活動については、執行部の負担とならないよう良識の範囲で極力自粛する。また、執行部への情報収集活動は従来通り行うことが出来る。
つまり、住民に一番近い議員として頂いた要望について、各々要望していくのではなく、議会として一元化して要望することとしたのです。危機管理状況下での的確な情報提供はとても重要でありることから、このような形をとらさせて頂きました。
この他にも、今後補正予算等の対応が迫られます。個人的な意見としては、危機管理状況下なので専決処分で補正予算等を実施し、速やかな対応を求めたいところです。しかし、我が国の制度下では、議会を開いて対応しなくてはなりません。制度設計に不備があるのです。よって、今後様々な事態に議会としても早急に対応できるように努めて行きたいと思います。