オルガンをバックにGが弾き倒すカンタベリー・テイスト溢れるハードロックがこれ /カーン | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

KHANはVo兼Gのスティーヴ・ヒレッジとVo兼Bsのニック・グリーンウッドを中心として、Dsにエリック・ピーチー、そしてゲスト・プレイヤーとしてKbにデイヴ・スチュアートを迎えて結成されたイギリスのバンド。Kb奏者デイヴはエッグを結成し既に活動中にあった事から正式メンバーとはなっていないものの、バンドにあってはサウンドを決定付けるほど重要な役割を担った一人で、その技量もさることながら知名度は他のメンバーより遥かに高いミュージシャン。もちろんスティーヴはデイヴと共に既にアルザケルでバンド活動をしており、Bs奏者ニックもソロアルバムをリリースしている事から、この時点で既にスーパーロック・バンドと言えるのかもしれないが、これから紹介するアルバムは彼らが唯一残した72年デビュー作で、アナログ盤もCDも現在に至るまで何度も再発を繰り返している、日本も含めて世界相手に世代を超えて人気の高いアルバム。プログレ系のアルバムの中にあっても、ブリティッシュ・プログレは特に日本での人気が高い様に映るが、このアルバムは間違いなく内容を伴ったもので、この手のアルバムとしては全てにおいて高い完成度を誇る一枚。

全体的にそのサウンドはGレスのエッグに近くも感じられるが、弾き倒し感の強いGワークのせいか、Gを基軸としたカンタベリー・テイスト溢れるプログレ・ハードといった処。自ずとGの放つフレーズやGソロが聴きどころとなるが、アルザケルで聴けたブルースをベースにしたGプレイは、ここではジャズ・テイスト溢れるプレイに大きく変化を遂げている。当然曲によってはブルージーなソロも連発させているが、概ね滑らかなフレージングによるジャジーなGソロが展開されており、デイヴもゲストながらGと張り合うほど重要なパートを任されている。もちろんエッグでのプレイと同様、ここでも直ぐデイヴと判るオルガン音でGとユニゾンでリフを奏でたり、バッキングやソロ・プレイとして存在感を放っているが、曲の背後で常にオルガンが鳴り響く様は、もはやバンドの一員としてではなく主役に等しい活躍振り。もちろん全ての楽曲をスティーヴと共に書き下ろしたVo兼Bs/ニックの存在も忘れてはならないが、地味ではあるがよく歌う心地良いBsラインは、メロディアスな歌メロと共によく練られており、熱唱スタイルのVoにおける声質もこの手のサウンドにはピッタリとマッチしたもので、これぞ正にプログレッシッヴ・ロックと呼ぶに相応しいもの。

当時のアナログ盤にしては最大収録分数(全6曲約45分)は少し長くも感じられるが、捨て曲もなく飽きを来させず最後まで通して聴けるのが最大の魅力で値打ち。もちろんそれは練られたアレンジの賜物とも言えようが。

         72年アルバム

 

このアルバムは先に触れた様に、現在に至るまで何度も再発を繰り返している事から、アナログ盤もCDも新中古を問わず容易く入手出来ると思えますが、日本では今一人気が無いように眼に映りました。自身はこの手(カンタベリー調)のハードロックとしては名盤と位置付けており、自ずとアルバム評価としては文句なくお薦め出来る一枚と言った事になると思いますが、ここで初めてバンド名を耳にされた方は、ハードロックの中でもこんなに心地よいハードロックもある事を、是非このアルバムを聴いた上で再認識して頂きたいと思っています。