こちらは、もしかしたらご存じの方も多いかもしれませんが、過去に医療事故を経験された方のブログで、だいぶ前から拝読させていただいていました。

 

ブログの最初の方に実際に起こったことが色々と書かれており、同業者としてとても胸が詰まる思いであり、私自身教訓となる部分が多くありました。

 

 

さて、今回はこちらの記事に記載されている内容について、私自身とても気になる内容がありましので、リブログさせていただきました。

 

それは、「今は、いいクスリがあるんだけどねぇ〜」という風に外来医が言いながら、過去に重大な副作用が起こった薬を勧めてきたという場面。

 

そこで、外来医が患者さんが過去に重大な副作用が起こったことを把握せずに勧めてきたことに対して不快感を覚えたというものです。

 

それに対して、「患者一人一人の内容を覚えてられないと思うから その電子カルテのトップ画面に、簡単に時系列にしたもの 病歴や治療内容が出るようにすればいいのに」と書かれています。

 

このことについてですが、結論から言えば、これは個々の医者の意識の問題だと私は思っています。

 

実は仰るように病歴や治療内容、そして重大な副作用情報などについては、電子カルテに毎回表示することは、ほとんどの電子カルテで可能です。

 

電子カルテは通常カルテのコピペが可能です。

 

なので、毎回カルテに簡単な病歴や副作用情報を記載し、その内容とともにコピペして診察毎に加筆していけば、過去の病歴や副作用情報を毎回把握することは可能です。

 

おそらく、若い先生方はこのやり方をやっている先生が大多数で、年配の先生でもかなりの先生方はこうしています。

 

しかし、その一方で頑なに過去のこういう情報をコピペせずに、その場のことだけをカルテに記載するだけの医者は、とても多いです。

 

なぜでしょうか?

 

その理由は、紙カルテがそうじゃなかったからです。

 

もちろん、紙カルテはコピペは出来ません。

 

紙カルテに毎回病歴や副作用情報を記載することは、あまりにも非現実的なので、通常カルテに記載するのは、その日のことだけです。

 

もし重大な副作用が患者さんに生じた場合は、通常はカルテの表紙に赤字で書くのが一般的で、そこで把握することが出来ていましたが、ほとんどがアレルギー関連であり、過去に起こった副作用の詳細が記載されていることは稀です。

 

私もたまに紙カルテの病院で診療することはありますが、正直非常に分かりにくいですし、ほとんどのケースで患者さんについては病名と直近の情報しか分かりません。

 

私が思うのは、紙カルテの時代は患者さんの副作用が起こったかどうかを把握する配慮が欠けていても、もし重大な副作用が起こったのであれば、患者さんが言うはずだからそれでいいと考えていた節があったのではないかと思います。

 

多分、こういう所で医者に対して不信感を持っていた患者さんが多かったと思いますが、医者からしてみるとそんなこと言われてもどうしようもないと開き直っていたのではないかと思います。

 

 

しかし、今は電子カルテにより逆にこの問題は解決出来ます。

 

それでもしないのは、こういうことをちゃんと把握して診療に挑むべきという意識が欠如している証拠です。

 

私でさえも、そういう上の先生を見ると、昔の先生はこんなに上から目線でいい時代だったんだなあと思います。

 

やはり患者さんとしてみれば、患者さんの情報を毎回しっかりと把握していることを望むことが当然であり、そういう所で信頼関係が得られるのだと思います。

 

私としては、病歴や副作用情報は常に頭に入れるべき、個々の医者がこういうことの重要性に気づくべきだと思います。

 

 

ちなみについでに言いますと、「薬物治療も手術もしないなら、 もう来ないで欲しい」という下りの所。

 

私は大学病院勤務医なのですが、(うちの科ではなくよその科ですが)残念ながらこういう考えの人はいます。

 

薬物治療も手術もしない場合、なんのために病院に来るかという理解に乏しい医者がいるのは事実です。

 

ただ、確かに大学病院などの専門医療機関の場合は、医療の機能分担は重要なので、高度な医療が必要なくなった場合には地域の医療を利用していただく方向に向けるのは、必要なことだと思います。

 

要は言い方なのだと思います。

 

まだまだ患者さんの本心を理解せずに診療を行っている医者は多いと思います。

 

私自身もそういう医者を見ると不愉快に感じますし、何とかしなければと思っています。

 

微力ながら、少しでもいい医療が提供出来るよう、普及活動にも力を入れていきたいと思います。