大川真郎『豊島 産業廃棄物不法投棄事件』 | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

大川真郎『豊島 産業廃棄物不法投棄事件』

後期の仕事のための資料として、重苦しい本をひさびさに引っ張り出してきました。
本書で取り上げられている香川県の豊島産廃不法投棄事件は、戦後最悪と言われる産廃の不法投棄事件として記憶に残りますが、今、豊島はアートの島(瀬戸内国際芸術祭の展示会場)として非常に人気があり、観光客の中には事件を知らない人も多いようです。

いわゆるガラの悪い経営者が強引に県の手続きを進めさせ、ミミズ養殖などという明らかに虚偽の事業として始めた産廃不法投棄。

県職員の見て見ぬふり、県議会の無関心などを背景に膨大な産廃が埋め立てられ、野焼きされ、しかも香川県庁はそれを放置。最終的にこの事件を挙げたのは兵庫県警でした。その後、島民は法廷を主要な舞台に長期の苦闘を続けました。
最終的に、裁判は住民側の勝訴に終わりましたが、700億円もの税金が投入された大量の産廃の撤去作業が終わった今でも、汚染水の処理などが続いており、まだまだ事件は終結していません。
しかも、この島にメガソーラーを計画する事業者がいてトラブルになっていて島の方々の心の休まるときがないことに心が痛みます。
そもそも、瀬戸内海は日本の地中海ともいわれる景勝地であり、高度成長期の環境破壊から回復しつつある今、国際的な観光の地として国内外から注目されている中で、今更のメガソーラーというセンスは非常に残念としか言いようがないわけです。
話がそれましたが、裁判を担当した弁護士によるこの作品は、法的な観点だけでなく、市民運動の観点からも大変貴重な資料となっています。
とにかく、行政に見捨てられた島民の苦闘に次ぐ苦闘の記録ですから、読んでいてストレスフルではありますが、一方で、最後は救いもあり、作品としての質も見事でした。