芸能人の薬物犯罪の判決がでると、
よく「芸能人だから判決が重かった」という記事が見られます。
 
 
またそうではなくても、ちょっと違うんじゃないか、という記事も見られます。
 
たいてい、法律の専門家でない方が書いているようです。
もちろん様々な意見はあるのは承知しておりますが。
 
今回、スノーボード選手の国母被告の判決につき、こんな記事がありました。
 
 
この記事によると

「懲役3年(執行猶予4年)の判決は、懲役1~2年が通例の初犯の薬物事案としては重い量刑となったとは言える。」
 
これは、正直「ん!?」という感じでした。覚せい剤自己使用罪の量刑と大麻輸入罪の量刑を比較して重いと言っているのかなあと。
(ちなみに反省していないことが影響しているという記事でした)
でも、所持と輸入は、比較が難しいといえましょう。
 
今回は、薬物事犯の量刑について解説していきたいと思います。
覚せい剤と大麻を比較していきます。
 
1、覚せい剤取締法の法定刑と量刑
覚せい剤取締法の条文を見てみましょう
 
第四十一条 覚せい剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第四十一条の五第一項第二号に該当する者を除く。)は、一年以上の有期懲役に処する。
 
→覚せい剤の輸入は1年以上の懲役となります。
なお、有期懲役の上限は20年ですので、「1年以上20年以下の懲役」ということです。それなりに重い刑罰です。
下限が懲役の1年というのはそれなりの重罪です。
 
第四十一条の二 覚せい剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は、十年以下の懲役に処する。
 
→覚せい剤の所持は「10年以下の懲役」です。なお、有期懲役の下限は1月ですので、「懲役1月以上10年以下」となります。
 
第四十一条の三 次の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。
一 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者

→覚せい剤の自己使用罪も、所持と同様に「10年以下の懲役」(つまり「懲役1月以上10年以下」)となります。
 自己使用や単純所持(営利目的でない所持という意味)の罪より、輸入の罪の方が圧倒的に重いです。
 
たいてい自己使用と単純所持(両方犯す場合が多いです)の場合は、初犯なら、懲役1年6月、執行猶予3年となる場合が多いです。
(執行猶予とは、執行猶予期間中に何も罪を犯さなければ、刑の言い渡しは効力を失い、刑務所に行かなくてよいということです)
 
ただ、輸入の場合は、初犯でも、実刑も十分にあり得るものになってきます。
 
2、大麻取締法の法定刑と量刑
 
では、大麻取締法の条文を見てみましょう。

第二十四条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
→大麻輸入罪は7年以下の懲役です。つまり、「1月以上7年以下の懲役」ということです。
 これは、覚せい剤の輸入に比べて圧倒的に軽いです。下限が1月だからです。
 
第二十四条の二 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
→大麻の所持罪は5年以下の懲役。つまり、「1月以上5年以下の懲役」です。
 覚せい剤の所持罪より上限が軽くなっています。
 
ちなみに大麻の単純所持の量刑相場は、初犯なら、懲役6月~1年 執行猶予2~3年といったとことでしょうか。
 
ちなみに、大麻の自己使用罪というのはありません。
(使用だけなら処罰されない)
これは、大麻農家の方が(もちろん合法的に栽培しているのが前提です)、大麻を吸ってしまって罪に問われる可能性があるのはおかしいという配慮によるようです。
大麻の自己使用罪がないというと、「じゃあ日本で使っても合法なんですね」という人がたまにいますが、例えば大麻を吸うために大麻入りのパイプを持った時点で、所持罪に問われる可能性があるので、その考え方は捨てたほうがよいでしょう。
 
3、まとめ
 つまり、覚せい剤の罪より大麻の罪の方が軽い。
(特に輸入の場合は大麻の方が圧倒的に軽い)
 
覚せい剤でも大麻でも、単純所持より輸入の方が罪が重い。
 
ということになります。
 
法律上は、大麻の輸入(「7年以下の懲役」)より、覚せい剤の所持(「10年以下の懲役」)の方が刑の上限が軽いのですが、
実際は、「単純所持」より「輸入」の方が情状が悪いので、「輸入」の方が重くなることが多いです。
(普通に考えて、自分で使うより、たくさんの人に拡散させる輸入の方が罪が重いということです)
 
大麻の「輸入」であるということを見ると、懲役3年(執行猶予4年)はまあまあ妥当な相場ではないか、反省していないとか、芸能人だから罪が重くなったとは言えないのではないかと思いました。
 
ちなみに、反省の有無が量刑に大きく影響することはあまりありません。
量刑は、まず行為責任(つまりやったことの重さ)で決まり、反省は量刑を微調整する要素にすぎないからです。
 
また、本件では「ポツダム宣言違反」の主張もあったようですが、調べきれてないので、わかったら別の記事でご紹介しようかと思います。
 

新橋虎ノ門法律事務所 共同代表弁護士 武山茂樹

 

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