こちらは
上間公民館(村屋:ムラヤー)の真下にあり、
昔から集落唯一の村井(ムラガー:共同井戸)です。
そのため、こちらの水は、
初水や産水にも使われた産井(ウブガー)でもあり、
用途に応じて、飲料、洗濯、防火用水や馬、
野菜を洗うのに利用した村小堀(ムラグムイ)
などと細かく分けて造られています。
現在は、もっぱら工業用や農業用水として
使われているようですが、
この大がかりな様子は、そのまま残っています。
王府当時、上間では、
ほぼ全世帯が馬を飼っていたので、
夕方になると、仕事を終えた人と馬で
ごった返していたそうです。
特に村小堀(ムラグムイ)は、
名護のうんさ大湧(ウフワク)と似ています。
ところで、こちらには
次のような伝承が残っているようです。
【この井戸の北側に外間家という大元屋の一つがあり、
そこに聡明で容姿も人一倍すぐれ、
見るからに上品な若い娘が暮らしていた。
彼女は霊感が強く、地下水の存在を感じとり、
見事、こちらの水脈を当てることができた。
ある日、彼女がこの井戸へ水汲みに来ていた時、
ちょうど王様が彼女を見かけ、一目で気に入り、
城中に呼び寄せ、妾にして可愛がった。
その後、彼女は王様から「真嘉戸樽按司」(マカトタルアジ)
という称号までいただいたので、
この井戸は「真嘉戸川」(マカトガ-)とも呼ばれるようになり、
さらに略して、「真川」(マガー)とも呼ばれたという。】
さて、上間井は水質も水量もよく、
かつては上間集落のほぼ全世帯を
この井戸一つでまかなっていたそうです。
生活用水を供給するだけでなく、一種の社交場でもあり、
村人の心のよりどころでもあったようです。
木陰で風にあたりながら座っているだけで、
なんだか癒されます。
とても居心地のいいところですね。